『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』をきっかけに、一部の海外ユーザーから「縄文文化」に注目が集まる

『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』は過去の世界観の構築にも力が入れられている。もっとも象徴的なのが「古代文明」だ。その古代文明が古代日本の「縄文文化」をモチーフにしているということで、縄文文化が一部の海外ユーザーから熱い視線を集めている。

『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド(以下、ブレス オブ ザ ワイルド)』はゲーム内での「過去」が物語に大きく関係してくる作品だ。長き眠りから覚めた「リンク」は、広大な世界を探索し、さまざまな問題を解決しながら、頭の奥底に眠る記憶を追想していく。こういった経緯もあり、過去の世界観の構築にも力が入れられている。もっとも象徴的なのが「古代文明」だろう。世界に点在する古代文明の遺物は、自然の多い『ブレス オブ ザ ワイルド』の世界観のなかでは際立っている。独特のデザインで描かれる鉄の塊は、木と草と野生生物が美しい世界におけるアクセントとなっており、はるか昔に機械文明が存在していたことを感じ取れる。

YouTubeにて先日公開された開発スタッフのインタビュー映像のなかでアートディレクター滝澤智氏は、「古代日本の縄文文化」を参考に古代文明をデザインしたことを明かしている。この「縄文文化」が、一部の海外ユーザーから熱い視線を集めている。

もっとも縄文文化を感じさせるのは「ガーディアン」だ。レーザーをかざしてリンクを追い回すガーディアンは、縄文土器の「火焔土器」を逆さまにしたようなデザインとなっている。またプレイヤーの発想の柔軟性を試す、ミニダンジョンともいえる存在の「祠」の外観は、同様に火焔土器を逆さまにしたものだという声もあれば、火焔の形をしていない「深鉢形土器」をモチーフにしているのではないかという指摘もある。詳しく述べるとネタバレになるが、とある場所にてプレイヤーの訪問を待つオブジェクトは、神様として崇められていたという「アラハバキ」にそっくりだ。ほかにもシーカータワーなど、古代文明に関するオブジェクトや建築物には紋様が入っていることも多く、縄文文化の影響を感じさせる。滝澤氏は縄文文化を採用した理由について「世界の人たちに使われていないもので、ミステリアスなものを使いたかった」と語っている。

火焔土器 Image Credit: Wikipedia

redditやNeoGAFといったインターネットコミュニティにおいて、一部のユーザーがこうした縄文文化に興味を示している。特にredditでは「かっこいいね。両親はゼルダの知識なんか実生活で役立たないと言ったのに。」「美しい。デザインの中に歴史を混ぜ込む考えは素晴らしいよ。」と感銘を受けるコメントや「古代文明は一万年前のものだと思えなかったけど、実際に一万年前のものがベースになっているなら、理解できる。」と納得を見せるコメントもある。インタビューの映像公開直後、Google Trendsにて「jomon period」という単語の人気度が急上昇した事実も興味深い。

さらにディープなゼルダファンたちは、こうした縄文文化の影響は『トワイライトプリンセス』の時代にすでに現れ始めていることを指摘する。確かにメインヒロインの「ミドナ」を代表とした影の民も装飾物に紋様をつけており、『ブレス オブ ザ ワイルド』の古代文明のデザインに似ているといえる。ともにシーカー族と結びつきがあるので、もしかするとただ縄文文化を意識しただけでなく、作品間のつながりがあるのかもしれない。滝澤氏が直接コメントしたことによって、シリーズ間のつながりを探る考察もまたヒートアップしている。実はゲームが発売される三か月前の12月の時点で古代文明と縄文文化のつながりを指摘しているユーザーもいたようで、こうした考察を見ても『ゼルダ』ファンの熱烈さが見て取れる。

『ゼルダ無双』でのミドナ
Image Credit: コーエーテクモゲームス

このように縄文文化は、文化としても、『ゼルダ』の世界を解釈する資料としても、ユーザーから関心が寄せられている。縄文文化は具体的に言及されたことで注目を集めたが、『ブレス オブ ザ ワイルド』はおそらくさまざまな文化を参考にして開発されたいことが予想される。詳しく述べることは避けるが、ゲーム内の集落や地域ごとにそれぞれの特色があり、そうした場所はファンタジーでありながらどこか現実との共通性があり、親しみやすくもある。縄文文化を採用したという決断も含めて、『ブレス オブ ザ ワイルド』の完成された世界は、さまざまなエッセンスの取り入れと、融合が重ねられた結果なのだろう。

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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