『The Elder Scrolls V: Skyrim』(以下、TES V: Skyrim)のPC版をクリアするまでのタイムを競うスピードランにおいて、新たな世界記録となる29分56秒が樹立された。先日、ゲーム内を超高速で移動できるようになるグリッチが新たに発見されて以来、同作のスピードラン技術は劇的に躍進している。数日前にも、前トップランカーが自己記録を更新したばかりだった。今後もキー入力や移動経路の最適化でさらなる記録短縮が予想される。
グリットというアートの世界
『TES V: Skyrim』は、2011年にBethesda SoftworksからPlayStation 3/Xbox 360/Microsoft Windows向けに発売されたロールプレイングゲーム。近年の『Fallout』シリーズと並んでオープンワールドRPGの金字塔といえる。特にPC版では、コミュニティサイトNexusやSteam Workshopを通してModサポートに対応しており、今もなお根強いユーザー層に支持されている。昨年、主人公をとんでもないスピードで移動させるグリッチ“Horse Tilting”が発見されたことで、スピードラン記録が大幅に短縮された。その名のとおり地面からの馬の傾きを利用したテクニックで、馬と斜面があれば理論上はゲーム内のどこでも発動できるという性質上、「無限スプリント」や「バケツワープ」と並んで最速クリアには欠かせない。
ゲームクリアまでの最速タイムを管理しているSpeedrun.comに新たな世界記録を刻んだのは、北アイルランド出身のWaz氏。ゲーム内時間で29分56秒、ゲーム操作やロードにかかる時間を含めたRTA(Real Time Attackの略)で36分41秒という新記録を樹立した。数日前に更新されたばかりの次点記録から2分以上の短縮に成功している。これまでの世界記録はカナダ人のFivexual氏による31分59秒(RTAでは38分55秒)。同氏は昨年、“Horse Tilting”を使ったテクニックを解説していたユーザーで、その際にも当時のワールドレコード33分6秒を樹立している。なお、Waz氏の新記録でもバケツワープ時のキー入力や、ピックポケット時の失敗で若干のタイムロスが見られるとおり、今後の最適化でさらなる短縮が期待できる。
広義でのスピードランとは、主にPCや家庭用ゲーム機で最短クリアを目指すタイムアタック全般を指す。中でもアクション要素の強い作品が競技対象として盛んにプレイされることが多く、オープンワールドRPGにおいても、『Fallout 3』や『TES V: Skyrim』に“Any%”(やりこみ度は考慮しないという意味)クリアで挑戦するスピードランナーが、海外を中心に切磋琢磨している。また、オープンワールドのスピードランではグリッチの利用が不可欠で、『TES V: Skyrim』では前述した“Horse Tilting”のほかに、「無限スプリント」(スプリントした状態でクイックセーブとクイックロードを瞬時に入力することで、ダッシュ状態を半永久的に維持できるテクニック)や、「バケツワープ」(インベントリからMiscアイテムのバケツをドロップした瞬間にアクティベーションキーの長押しにより空中でキャッチし、その状態で壁に突っ込むことでコリジョン判定を無視するグリッチ)が多用されている。