今月3日に発売された任天堂の新ハードNintendo Switch(ニンテンドースイッチ)。同ハードにはJoy-Conと呼ばれるコントローラーがふたつ付属している。Joy-Conにはモーションコントロールに加えて、振動機能をさらに拡張したHD振動、モーションIRカメラなどさまざまな機能が搭載されている。このJoy-Conをフルに用いるロンチタイトル『1-2-Switch』は、視覚障害を持つユーザーでも楽しめるようだ。視覚障害者の夫を持つユーザーthemanje氏がredditにてプレイの様子を報告している。
themanje氏は、夫婦で楽しい時間を過ごすためにNintendo Switchと『1-2-Switch』を購入した。午後7時に帰宅した夫に、どうせ15分も経たずにやめるだろうと思いながらゲームを遊ぶよう誘ったところ、プレイを始めてから約2時間遊び続けるほど没頭したという。
themanje氏は、視覚障害者にとってもHD振動は非常に効果的な機能になっていると述べる。氏の夫が気に入っているのは「金庫破り」と「ガンマン」。金庫破りはリモコンを傾けながら、正しい角度を見つけるというミニゲーム。ガンマンは合図の声を聞いてから早撃ちを競うというルールだ。どちらとも視覚情報は必要なく、音をしっかりと聞くことができ、振動を感じられるならば、どんなユーザーにでも楽しめる。これらのタイトルにかぎらず、『1-2-Switch』はどのミニゲームもいたってシンプルだ。「コピーダンス」を代表としたダンスを使った遊びや「トレジャーボックス」など一部視覚情報が求められるゲームもあるが、ほとんどのミニゲームが画面を見ずに楽しめる。
興味深いのは、『1-2-Switch』においては目が見えるthemanje氏より目が見えない夫の方が強いということだろう。28個あるゲームの大部分をプレイしたなかで、視覚情報が必要ないゲームは、ほとんどが夫の勝利に終わったという。特に「ピンポン」においては、氏の夫は無類の強さを発揮するようで、themanje氏はあえて目を閉じてプレイすることでやっと夫に勝利したと語っている。themanje氏はNintendo Switchと『1-2-Switch』への購入は価値あるものだったと断言し、HD振動を用いれば、視覚障害者でも楽しめるさまざまな体験が生まれるだろうと述べている。
こうした障害を持つユーザー向けの配慮を「アクセシビリティ」と呼び、近年では業界全体で取り組む姿勢が目立ってきている。たとえばソニー・インタラクティブエンタテインメントとNaughty Dogは『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』にて連打の代替措置や、左スティックでエイミングできるようにするなどカスタマイズを充実させ、両手で遊べないユーザーへの配慮をおこなっている。Blizzardも同様に『Overwatch』にて操作の多様性を提供している。こうした作品以外にも色覚に異常がある人向けのオプションを完備しているタイトルも多い。
そういった背景を考慮しても、画面を見ずに遊べるゲームを提供するというのは非常にユニークであり、任天堂らしいアプローチといえるだろう。『1-2-Switch』はそもそも「目と目を合わせて遊ぶ」というテーマを持っており、画面を見ることを前提としていない。メニュー画面やゲーム選択の際には画面を見る必要があるものの、基本的にはプレイ中は音声でガイドしてくれる場面も多いので、視覚障害者とは非常に相性のよいタイトルであるといえるだろう。
Joy-Conを代表に、任天堂のデバイスの技術を結集させたNintendo Switch にはさまざまな可能性が眠っている。Nintendo Switchは、これまで以上に多くのユーザーがビデオゲームを楽しめるようになる、アクセシビリティの新たな扉を開くかもしれない。