イスラム諸国からの渡米を禁止した大統領令を受けて、Devolver DigitalがGDCで展示代行を実施へ


『Shadow Warrior』や『Genital Jousting』を手がけるアメリカのインディーレーベルDevolver Digitalは2日、トランプ大統領がイスラム教徒の多い中東・アフリカ7か国からの入国を一時的に禁止したことを受けて、今月27日からサンフランシスコで開催される「GDC 2017」に出席できないゲーム開発者のためにデモ展示を代行すると発表した。今回の大統領令に対する懸念はゲーム業界全体で高まっており、「GDC 2017」の参加者にも少なからず影響を与えることが想定される。同社は世界中の有能なデベロッパーのために、ささやかながらも架け橋として手を差し伸べていきたいと声明を出している。

 

ささやかながらも手を差し伸べたい

先月27日、アメリカ合衆国のドナルド・トランプ大統領は、テロ対策の強化を理由に難民の受け入れや外国人の入国を制限する大統領令(米大統領が議会の承認を得ることなく連邦政府や軍に対して行政権を直接行使できる行政命令のこと)に署名。シリア難民の受け入れを無期限停止、その他の難民受け入れを120日間停止したほか、イスラム教徒が多いイラク・イラン・シリア・スーダン・リビア・ソマリア・イエメンの7か国を“懸念地域”と定めた上で、該当国の出身者がアメリカへ入国することを90日間禁止した。国内外で批判や懸念が高まる中、世界中から技術者やクリエイターを起用しているゲーム業界の大手各社からも米政府に抗議する声が相次いだ。

その影響は、今年もいよいよ2月27日から3月3日(現地時間)にサンフランシスコで開催されるゲームクリエイターの祭典「Game Developers Conference 2017」にもおよんでいる。イベントの主催側はTwitterの公式アカウントで、大統領令の影響でイベントに参加できなくなった人々に対して、政府の決定に批判的な立場であることを表明した上で返金に応じると発表した。また、ゲーム開発者の中には、政府が方針を明確にしない限り今年のGDCには参加しないと意思表明する者もいる。こうした事態を受けて、大手インディーゲームパブリッシャーDevolver Digitalは、入国禁止の影響を被ったデベロッパーから出展作品の提出を受け付けると名乗りを上げた。自社のスペースでデモ展示を代行する救済処置に乗り出した形だ。

展示代行の期間は、27日から翌1日の午前10時から午後5時まで。「GDC 2017」の会場である複合展示施設モスコーニ・センターの近隣に位置する通称「Devolver Underground」で、プレスおよび参加者向けにゲーム作品が代理展示される。当日ブースにはデモ用のゲーミングPCのほか、必要に応じてVRヘッドマウントディスプレイのHTC Viveを設置するとのこと。Devolver Digitalは現在、希望者の出願をメールにて受け付けている。また、スペースに限りがあるため、入国禁止令に直接影響を受けて参加を断念せざるを得なくなったデベロッパーを優先すると説明している。

業界メディアPC Gamerによると、Devolver Digitalの共同創業者Mike Wilson氏は、声明の中で次のようにコメントしている。「私がゲームで気に入っている点の一つは、他のアートと比べて国境や文化の壁をよりシームレスに越える真にグローバルな性質です。これまでDevolverが成し遂げた成功と個人的に味わえた喜びの大部分は、千差万別のバックグラウンドを持つ世界中の人々と共に働けたおかげと言えるでしょう。不幸にも今年のGDCへ参加できなくなった有能なデベロッパーのために、ささやかながらも架け橋として手を差し伸べられる機会を設けられて嬉しく思います」。