Razerは1月9日、「Project Linda」を発表し、アメリカ・ラスベガスで開催されている国際家電見本市「CES 2018」に製品コンセプトとして出展した。Project Lindaは、昨年発売された同社初のAndroidスマートフォン「Razer Phone」と組み合わせることで、ノートPCのように使うことができる製品だという。
Project Lindaは、RazerのノートPC「Razer Blade」シリーズに通じるデザインを採用し、一見すると普通のノートPCのようであるが、CPUやメモリなどを積んでおらず、いわばノートPCの“ガワ”だけである。キーボード手前部分にくぼみがあり、ここにRazer Phoneをはめ込んでUSB接続して使用する。つまりPCとしての心臓部はRazer Phoneが担い、同時にRazer Phoneのタッチスクリーンをトラックパッド代わりに使用し、さらにセカンドディスプレイとしても利用できる仕組みだ。ディスプレイやキーボードなどを装備した、Razer Phoneのドックのような製品といえるだろう。
AndroidスマートフォンをPCのように利用することは目新しい技術ではない。現行機種でいうと、サムスンのGalaxy S8シリーズやHUAWEIのMate 10 ProなどもPCモード機能を持つ。Windows 10 MobileでもContinuumと呼ばれる同様の機能があり、また昨年にはAppleがiPhoneを利用した、まさにProject Lindaのような仕組みの特許を出願していたことでも話題となった。実はサムスンの専用周辺機器(DeX Station)を利用すると、Razer Phoneもすでに非公式ながらPCライクに使用可能だという報告もあるが、今回Razerとしてはデスクトップではなくモバイルを前提にした提案をした形だ。動作するのはAndroid OSであるため、完全にPCに取って代わるかどうかはユーザーの使い方次第だろうが、ウェブブラウズや動画視聴、またMicrosoft OfficeやAdobe Photoshopなど基本的な作業をこなせるだけのアプリは揃っている。
Razer Phoneをセカンドディスプレイとして利用するにはゲームやアプリ側の対応が必要になってくるだろう。Razerは『Vainglory』のゲームプレイ画面をProject Lindaのディスプレイに映し、Razer Phoneにはメニューやマップなどを常時表示させるニンテンドー3DSのような利用例を紹介している。またキーボードだけでなくマウスも利用できるため、ゲームによってはPCと同じ感覚でプレイできそうだ。もちろん、ゲーム以外の用途でもさまざまな可能性が考えられ、Adobe Lightroomの編集画面をProject Lindaのディスプレイに、画像フォルダのプレビューをRazer Phoneに表示させる利用法も紹介されている。
Project Lindaのディスプレイは13.3インチのタッチスクリーンで、上部に720pのウェブカメラを装備。キーボードは、キーピッチなど詳細は不明だがフルサイズであるとしており、Android用の専用ショートカットキーが最上段に並んでいる。また、Razer Chromaに対応するバックライトを内蔵している。本体内部にはRazer Phoneを3回以上フル充電できる容量のバッテリーと、200GBのストレージが搭載されており、モバイル用途に耐える仕様となっている。入出力にはUSB Type-AとUSB Type-Cが1つずつ用意され、Razer Phoneでは排除された3.5mmヘッドフォンジャックも備える。筐体はアルミ製のユニボディで、厚みは15mm、重さは1.25kgとのこと。
組み合わせて使用するRazer Phoneは、Qualcomm Snapdragon 835と8GB RAMを搭載するハイエンド端末だ。120Hz駆動の5.7インチディスプレイや、Dolby Atmosに対応するステレオスピーカーを採用。またゲーミングデバイスを販売するRazerらしく、ゲームの動作を最適化するチューニングが可能なことなどで話題となった。なお、Project Lindaにはスピーカーが搭載されておらず、音声出力はRazer Phoneのスピーカーを利用する。Razer Phoneのスピーカーはかなりの大音量でも余裕を持って鳴らせることが特徴で、前面にステレオ配置されていることもあり、こうした仕様になったのだろう。
冒頭で述べた通り、Project Lindaはまだコンセプト段階であるため、製品として発売されるかどうかは未知数だ。Razerはこれまでにも数々のコンセプトを発表しているが、すべてが製品化されている訳ではない。Project LindaはRazer Phoneの使用が前提であり、どれだけの需要があるのか判断するのは難しいところだが、もし製品化が実現した暁には、Razer Phone共々国内での展開にも期待したいところである。