Blizzard Entertainment(以下、Blizzard)は5日、チーム対戦型FPS『Overwatch』(オーバーウォッチ)で多くのプレイヤーから悪用例が報告されていた「メイ」の「アイス・ウォール」に関するバグ技を、チート行為とみなし処罰の対象とする姿勢を明らかにした。特定のゲームモードにおいて通常では到達できないマップの裏側に侵入するグリッチで、数週間前から報告が相次いでいたが原因の究明と修正に時間がかかっている。なお、パブリックテスト環境(以下、PTR=Public Test Region)の最新パッチが同日から配信されたが、現在のところ該当グリッチは修正されていない。
バグ技はチート行為と公式が認定
『Overwatch』は、おもに6人ずつのチームに分かれて計12人でオンライン対戦が楽しめる一人称視点のMOBA系アクション・シューティング。BlizzardがWindows/PlayStation 4/Xbox One向けにリリースした十数年ぶりの完全新規タイトルである。多種多様な武器や装備、特殊能力を操るヒーローが特徴で、キャラクターによって得意分野や役割分担が大きく異なる。先日には、長らくプレイヤーから強力過ぎるとの不満が相次いでいた「ロードホッグ」の「チェイン・フック」を弱体化することが明らかになり、予告どおり1月5日のPTRアップデートで修正が施された。
「メイ」の「アイス・ウォール」は、巨大な氷の壁を出現させて視界や移動、攻撃を遮るという固有アビリティの一つ。氷の結晶を撃ち出した後に着弾点から壁が飛び出す2段階アクションのため、出現した壁を足場にすることも可能である。今回、Blizzardが問題視したバグ技とは、アーケードモードの3対3マップ「Ecopoint: Antarctica」の特定ポイントで足元に「アイス・ウォール」を設置した際、キャラクターが天井を突き抜けてマップの裏側に移動できるという現象のこと。このグリッチを利用すれば敵からの攻撃を一切受けることなく、こちらからは一方的に相手を攻撃できる。特に3人全員を排除したチームの勝利という同マップのルール上、悪用されればゲームが完全に崩壊してしまうというわけだ。
このバグ技は最初に報告されてからしばらく経過しても修正されることはなく、一部ではむやみに悪用するプレイヤーを一網打尽にする攻略方法が編み出されていたほど。ちなみに、今月はじめに正式リリースを迎えた新規マップ「Oasis」でも実行できることが報告されている。こうした事態に公式フォーラムやRedditの専用スレッドには、早期解決を求めるプレイヤーからの声が数多く寄せられていた。これを受けて『Overwatch』のゲームディレクターJeff Kaplan氏は、バグ報告スレッドにて運営側の対応状況を説明。すでに原因を突きとめており、修正作業に着手していることを明らかにした。
くわえて、「メイ」の「アイス・ウォール」を使った今回のバグ技は、明らかにゲームデザインの穴を悪用したチート行為であると明言。全てのユーザーへ故意に実行しないよう警告すると共に、乱用しているプレイヤーを発見した場合は運営へ通報するよう求めた。「このバグ技を乱用するユーザーに対しては、確実な処置を講じていく予定です。Overwatchは対人戦がメインのゲーム体験であり、今回のようなゲームデザインの抜け穴を利用する行為は、競技を楽しむ対戦相手の体験を台無しにしてしまいます。ゲームメカニクスやハック、チートを乱用するプレイヤーは厳罰の対象であり、それは本件も同様です」とコメントしている。また、運営側が対応に長期間を要したことについて謝意を表した。
このほか、PTRの最新パッチが同日から配信されている。Kaplan氏は当初、「アイス・ウォール」を使ったバグ技を早くて今回のアップデートで修正したいとしていたが、対応が間に合わなかったらしく現在のところグリッチは消えていない。最新のPTRパッチでは、以前「Developer Update」にて解説していたとおり、最大4つまでのエモートやスプレー、ボイスラインを設定できるホイール型のチャットツール「Emote Wheel」が実装されたほか、前述した「ロードホッグ」に加えて「アナ」「D.Va」「ソンブラ」にバランス調整が施された。
まず、「アナ」の「バイオティック・グレネード」による回復効果のブースト率が半減。次に、「D.Va」のライフとアーマー値はそれぞれ400と200に入れ替えられたほか、「フュージョン・キャノン」の単発における威力が3から2へ弱体化。それと引き換えにショット毎に撃ち出される弾丸数が8から11に増えた。さらに「ソンブラ」に関しては、敵のアビリティ使用を一定時間阻止する「ハック」が若干強化され、発動するまでの時間が1秒から0.8秒に短縮された。現状では「ハック」が有効になるまで時間がかかり過ぎるために、敵の不意を突いたプレイでも失敗することが少なくない。固有アビリティが有効活用できるよう使い勝手を改善した形だ。