北朝鮮の金正恩とアメリカ軍が戦う16bitゲーム『Glorious Leader!』がKickstarterに登場
まさかの形で再登場だ。今年5月にトレイラーが公開され100万回以上の再生数を記録、その過激なテーマが注目を集めていた『Glorious Leader!』が、Kickstarterにて5万5000ドルの開発資金を獲得するクラウドファンディングを開始した。同作は、朝鮮民主主義人民共和国、通称北朝鮮の総書記である金正恩氏が主人公のアクションシューティングゲーム。大統領バラク・オバマ氏率いるアメリカ軍に対し、単身で戦いを挑むというブラックユーモアあふれる作品だ。
無慈悲なブラックユーモア
プレイヤーは、朝鮮人民軍の最高司令官であり朝鮮労働党の第一書記、かつ国防委員会の委員長である金正恩氏を操作する。詳細なストーリーは語られていないが、暴言を吐きながらなにかを操作するアメリカ合衆国大統領バラク・オバマ氏や、「ターミネーター」風の素顔を見せる自由の女神像などが登場し、敵国アメリカとの死闘が繰り広げられるようだ。第1ミッションは戦場と化した首都平壌が舞台となり、錦繍山太陽宮殿から綾羅島メーデー・スタジアムへと向かわなければならない。"北朝鮮の神秘的なクリーチャー"であるというユニコーンに騎乗するステージや、平壌上空に展開した戦闘機やヘリを撃ち落とすためミサイルに乗るステージも登場するという。
20年以上の歳月をかけたにもかかわらず完成しなかった「柳京ホテル」のステージも登場する。同所を世界七不思議の1つとして紹介しているあたり、開発スタジオMoneyhorseの小気味よいジョークセンスがうかがえる。さらにボーナスステージに登場するのは、先月末から情報の流出騒動に見舞われているソニー・ピクチャーズ・エンターテイメントだ。同社のハッキング事件について、ウォール・ストリート・ジャーナルは「北朝鮮が関与しているかもしれない」とも報じていた。
『Glorious Leader!』に登場する金正恩氏と北朝鮮は、同国がアピールする偉大な将軍様と祖国のイメージを、無慈悲な皮肉で描いている。ブラックジョークは取り扱いを誤ると悲惨なことになるが、北朝鮮を面白おかしく表現することには成功しているのかもしれない。
ゲーム中に登場する武器はマシンガン、火炎放射器、ショットガン、バズーカ、大量破壊兵器など。「Divine Powers(聖なる力)」と呼ばれるシステムが存在し、パッシブあるいはアクティブでプレイヤーに様々な恩恵を与える。天国にいる金正日がマップ上に現れ、回転しながら敵を破壊していくシーンを見れば、笑わずにはいられないだろう。ただ、残念ながらトレイラーを見るかぎり、2Dアクションとしてのゲームプレイはややぎこちなく感じる。シネマシーン以外のドットアニメーションはところどころ粗く、アクションは『魂斗羅』をつまらなくしたものにも見える。資金調達に成功した際には、新たなプログラマーやアーティストを雇う予定となっており、チームの増強でゲームプレイにも厚みが増すことに期待したい。
中国人ユーザーが製作したコラージュ動画を削除するよう、北朝鮮が中国共産党に依頼したニュースが記憶に新しい。今日の朝には、北朝鮮の金正恩氏を殺害するブラックユーモア映画『The Interview』の公開をソニー・ピクチャーズ・エンターテイメントが自粛したばかりだ。はたして北朝鮮は、『Glorious Leader!』とKickstarterプロジェクトに物言いをつけるのだろうか。Moneyhorseであれば、それすらジョークとしてゲームに取り入れてしまいそうだが。