『Triangular』楽しい時間を共有する、“Face to Face”の対戦型ボードゲーム


Mobile Pickは、ここ数日の間に発売されたモバイルゲームのなかから光る何かを・際立つ要素を・特筆すべきものを(・場合によっては目に余るデキを)持つタイトルを紹介する不定期連載。7月11日から7月12日にかけて、京都ではインディーゲームの祭典「BitSummit 2015」が開催された。Indie Pickと同じくMobile Pickも「BitSummi 2015特集」とし、第4回は対戦型ボードゲーム『Triangular』を紹介する。

 

Triangular

ネオンカラーやタイトルロゴのフォントから「TRON」をイメージする方もあるだろう。
ネオンカラーやタイトルロゴのフォントから「TRON」をイメージする方もあるだろう。

『Triangular』は、iOS/Androidデバイスで遊べるターン制の対戦型ボードゲームである。といってもダイスを振るタイプのゲームではなく、「おはじき」に近い。開発を手がけたThunderbolt Interactiveは、名古屋に拠点を置くエンターテインメント企画・開発会社。塾の講師や芸能人のマネージャーなど多数の業種を経験し、そして多くを学んだ安田武史氏がCEOを務める。塾の講師時代、生徒に教えていた空間図形や平面図形が、本作のアイデアに一役買っているという。なお、本作は6月25日にリリースされており、App Storeでは120円、Google Playでは100円で購入できる。

私が『Triangular』のブースをたずねたのは初日だったが、あまりの大盛況っぷりだったため実際にプレイできたのは2日目のこと。予想以上に多くの人がおとずれたということで、ブースのメンバーも増員したという。離れた場所から見ていた限りでは、その魅力というものが何なのかわからなかったのだが、実際にプレイしてみると、「なるほど」と感じた。

 

いかにして勝利するか

左下と右上にある数字は両者の現在の攻撃力。1から7までの数字は「Life Egg」のライフであり、すべてなくなると破壊されてしまう。
左下と右上にある数字は両者の現在の攻撃力。1から7までの数字は「Life Egg」のライフであり、すべてなくなると破壊されてしまう。

ゲーム内容は特殊な「おはじき」といったところ。操作方法は「引っ張って離す」であり、これは『Angry Birds』などの物理ゲームをイメージしてもらうとわかりやすいかもしれない。ターン制であるため、両プレイヤーは交互に自陣のアイコンを飛ばし、相手の「Life Egg」を破壊することを目指す。スクリーンショットを見ていただくとわかるように、画面には複数のアイコンが存在している。このなかで、オーブのように輝いているのが「Life Egg」であり、これは引っ張って動かすことはできず、その場に固定されている。逆に動かせるのは、シンボルが描かれたアイコンのみ。

操作できるアイコンは2種類。トランプと同じシンボルが描かれた三つの「Player Icon」、十字キーらしきシンボルが描かれた一つの「Keeper」である。「Player Icon」は相手の「Life Egg」にダメージを与えることができる唯一のアイコンであり、攻撃だけでなく、空間を漂う中立の「Attack Level Icon」を味方にする能力も持っている。「Attack Level Icon」に衝突すれば自陣の色に変化し、「Player Icon」の攻撃力が増していく仕組みである。「Keeper」は防衛専用であり、相手のアイコンに当てて強く弾き飛ばすことができる。たとえば次のターンで自身の「Life Egg」が狙われるかもしれないという状況であれば、「Keeper」を使って相手の「Player Icon」を弾き飛ばすのだ。

さきほど「Life Egg」は移動できないと書いたのだが、できないかわりに特殊な能力を持っている。どうにもならない状態になったとき、「Life Egg」をダブルタップすると画面の半分ほどの大きな衝撃波を放ち、相手チームのアイコンを弾き飛ばすことができるのだ。ただし、この能力を使うと自身のライフが1ポイント削られてしまう。

 

『Triangular』のキモ

サークルの中にすべての「Icon」があれば、トライアングルが成立する。このトライアングルの中を通らなければ、相手の「Life Egg」にダメージを与えることはできない。
サークルの中にすべての「Icon」があれば、トライアングルが成立する。このトライアングルの中を通らなければ、相手の「Life Egg」にダメージを与えることはできない。

再度スクリーンショットを確認していただきたいのだが、ピンク色の三角形が見えるだろうか。このトライアングルが本作のキモなのだ。「Player Icon」を操作して相手の「Attack Level Icon」を狙う場合、トライアングルを通らなければダメージを与えられないというルールがある。また、三つの「Player Icon」の距離が遠すぎるとトライアングルが表示されずダメージを与えられない。1ターンに時間制限はないので、じっくり考えてプレイすればそれほど難しいことではないように感じるかもしれないが、本作にはもうひとつキモがある。

『Triangular』はターン制だが、リアルタイムで動き続けるアイコンが存在する。それが中立の「Attack Level Icon」である。八角星の形をしたこのアイコンに、「Player Icon」を衝突させると自陣営の色に変化し、攻撃力を1ポイント上昇してくれる。ここで掲載しているスクリーンショットを例にすると、一つの「Attack Level Icon」がピンク色になっているため、画面左下の攻撃力は基本能力の1に1をプラスした2になっている。そしてこの八角星は、一度動き出すと止まることはない。自分のターンでじっくり戦術を練っていると、自身の「Player Icon」に衝突してトライアングルが無効化されてしまうこともある。制限時間のないターン制だが、リアルタイムで戦況を変化させる「Attack Level Icon」の存在が、本作の戦術的な面白さを引き出している。

 

コンセプトは“Face to Face”

『Triangular』を手がけるThunderbolt InteractiveのCEO安田武史氏は、「子供のころ、ファミコン、トランプやオセロ、なんだっていい、ゲーム自体の面白さもあるけれど、仲間と一緒に遊ぶこと自体が楽しかった」と語る。そして「大の大人がビリヤードやダーツを仲間と遊び、負けたほうが罰ゲームでテキーラを飲む。それは子供のころの遊びと同じで、その時間が楽しいんだ」と続けた。デジタルゲームが主流になり、ここ数年はモバイルデバイスが普及している。それならば、場所を選ぶものではなく、いつでもどこでも遊べるゲーム、そして人と人との時間を楽しめる“Face to Face”なゲームを作ろうと思い、『Triangular』が誕生したという。

ニンテンドー3DSを持った数人の子供たちが、対戦しているわけでもないのに、一箇所に集まって遊ぶ姿を見かけることがある。私も子供のころは同じようにゲームボーイで遊んだ。しかし、当時遊んだゲームのタイトルははっきりと覚えていても、何がどう面白かったのか思い出せないことが多い。それはきっと、友達と一緒に遊ぶ時間が楽しかったからだろう。

時代が変われば遊びも変わる。しかし本質は変わらない。安田氏は「普段ゲームを遊ばない人も『Triangular』に触れてみてほしい」と笑顔で語った。奥が深く戦術的なゲームであるが、「負けたほうが食事代を払う」「負けたほうが女の子に声をかける」そういう遊びにも気軽に使えるはずだ。たとえ勝てなくても、そこには笑顔があればいい。

なお、シングルプレイのみのお試し版(iOS/Android)は無料でダウンロードできる。