遊べる芸術作品、 グラフィックノベル風パズル『Heartbeats』

第25回は、指1本で戦うシューティング『Magenta Arcade』、ハッキングパズル『TouchTone』、グラフィックノベル風パズル『Heartbeats』を紹介する。

Mobile of the Weekは、ここ数日の間に発売されたモバイルゲームのなかから光る何かを・際立つ要素を・特筆すべきものを(・場合によっては目に余るデキを)持つタイトルを紹介する週刊連載。第25回は、指1本で戦うシューティング『Magenta Arcade』、ハッキングパズル『TouchTone』、グラフィックノベル風パズル『Heartbeats』を紹介する。

 


指1本で戦うシューティング『Magenta Arcade』

 

 

スマートフォンでシューティングゲームを遊ぶと、自分の指が邪魔に感じることがあるだろう。『Magenta Arcade』は、その不満点を解消したシューティングゲームである。iOS版のみ販売されており、価格は200円。開発を手がけたのはブラジルのデベロッパーLong Hat House

『Magenta Arcade』は自機が表示されない。画面に触れるプレイヤーの指が自機である。画面をホールドすれば指先から弾が発射され、軽くタップすればスペシャルウェポンを使用する。自分の指が自機を覆ってしまい、敵の攻撃をうまく避けられずに撃墜されるという事故は起きないのだ。

画面に触れたまま指を動かせば、一般的なシューティングゲームと同じような遊び方ができる。もしも弾幕をくぐり抜けることが難しいのであれば、指を画面から離してしまえばよい。だからといって、画面に一切触れなければ無敵状態が続くというわけではない。敵は通常の弾だけでなく、画面から離れたプレイヤーの指を狙った攻撃もしかけてくる。敵機にカウントが表示された場合、ゼロになるまでに対処しなければ、iPhoneの画面が割れたような演出とともにダメージを受けてしまう。

どのステージも短く、敵の攻撃もそれほど激しくない。弾幕系シューティングをよく遊ぶという方にとっては物足りないかもしれないが、スマートフォンで遊ぶことを考えると、これぐらいがベストだろう。iPhoneなら片手でプレイでき、空いた時間の暇つぶしにも最適である。

 


ハッキングパズル『TouchTone』

 

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TouchTone』は、国民の安全を守るため、不審なメッセージを解読していくハッキングパズルゲームである。開発を手がけたのはMikengreg。現時点ではiOSのみに対応しており、価格は300円。同デベロッパーの過去作はGoogle Playで販売されているので、いずれAndroid版が登場する可能性はゼロではない。

遊び方については、掲載しているGIFアニメを見ていただきたい。ハッキングツールだと思われる反射板のようなものをスライドさせ、すべての信号をつないでいく。簡単そうに見えるかもしれないが、スライドすると同じ列、あるいは同じ行にある、ほかのハッキングツールも一緒に動いてしまうため、答えがイメージできていても、そのとおりにすることは難しいのだ。

ハッキングに成功すると通信を傍受できる。電子メールのときもあれば、チャットのときもある。国家に悪影響を及ぼすとされているターゲットを中心に物語が進んでいくので、チュートリアルにあるような「ハッキングしたら一般市民のメールを盗み見してしまった」というような事態はほとんど起こらない。パズルのパターンはそれほど多くなく、どうしても単調になってしまう。ストーリーを進める手段として高難度のパズルをやらされているという感じが強くなっていき、中盤以降はフラストレーションとの戦いになる。

ストーリー重視であることは理解できるのだが、もう少しパズルも工夫してほしかったというのが正直なところ。配色やデザインのセンスは素晴らしいので、アート寄りのゲームが大好きな方であれば、ウィッシュリストに入れておいてほしい。

 


グラフィックノベル風パズル『Heartbeats』

 

 

タイトル画面でもあり、ステージ1でもある。
タイトル画面でもあり、ステージ1でもある。

『Heartbeats』はグラフィックノベルのようなパズルゲームである。特徴的なアートスタイルが、芸術作品で遊んでいるかのような気分にさせてくれる。App Storeから無料でダウンロードでき、ステージ4以降は100円のアドオンを購入するとアンロックされる。開発を手がけたのはデンマークに拠点を構えるKong Orange

『Heartbeats』は、ほかのパズルと同じ感覚で遊ぶと、ゲームを開始することすらできないほど難しい。逆に、最初さえクリアできれば、あとはパズルの解き方が見えてくるはずだ。各ステージには、絵だけでなく文章も書かれているので、そこからヒントを得ることもできる。気になる箇所をタップしたりドラッグしたり、思いつくことを片っ端からやってみるとよいだろう。

気をつけてほしいのは、とあるゲームの知識がないとクリアできない可能性が高いステージが登場することである。おそらく多くのプレイヤーが、そのステージの難しさに頭を悩ませていると思われるのだが、開発者はあえて容赦のないパズルにしたという。また、一度クリアしたステージを再度遊ぶ場合は、進行状態を全てリセットしなければならない仕組みになっている。そこまで厳しくする必要があったのかどうか疑問だが、良く言えば「挑戦しがいがある」といったところだろうか。

『Heartbeats』にはゲーム内サウンドや音楽が一切ない。無音である。ビデオゲームというよりも、読書感覚で遊んでほしいということなのだろう。タイトル画面の下部にある「MUSIC」をタップすると、北欧のアーティストたちの紹介と共に、音楽ストリーミングサービスへのリンクが設置されているのだが、Spotify上のプレイリストのため、残念ながら日本からは利用できない。

 

第25回Mobile of the Weekの最優秀作品には『Heartbeats』を選ぶ。全部で10ステージというのは少ないかもしれないが、最終ステージにたどりつけないという方がほとんどだろう。それでも物語の続きが気になり、クリアできるまで挑戦しようという気持ちになるはずだ。無料で遊べる3ステージはチュートリアルのようなものである。そこから先に進む勇気があれば、100円でアドオンを購入してみてほしい。

 

Shinji Sawa
Shinji Sawa

ゲームはジャンルを問わず遊びますが、1回のプレイ時間が短いものが好きです。FPSやRTSは対戦モノを積極的にプレイします。しかし緊張するとマウスを持つ手が震えるタイプでもあります。

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