頼れるのはプレイヤースキルのみ、 高難度ターン制ストラテジー『Auro』

第20回は、QTEだけのシネマティックアクション『Tempo』、運ではなくプレイヤースキルのみが頼りのストラテジー『Auro』を紹介する。

Mobile of the Weekは、ここ数日の間に発売されたモバイルゲームのなかから光る何かを・際立つ要素を・特筆すべきものを(・場合によっては目に余るデキを)持つタイトルを紹介する週刊連載。第20回は、QTEだけのシネマティックアクション『Tempo』、運ではなくプレイヤースキルのみが頼りのストラテジー『Auro』を紹介する。

 


QTEの連続『Tempo』

 

 

2015年期待のモバイルゲーム10選」でピックアップした『Tempo』がiOS向けにリリースされた。価格は500円。開発を手がけたのは、パルクールアクションを取り入れたFPS『BRINK』を生み出したSplash Damage

『Tempo』は、イギリスを舞台に繰り広げられる善と悪の戦いを描いたシネマティックなアクションゲーム。といっても、バーチャルパッドを操作して移動や射撃をおこなうのではなく、画面に表示される指示に従ってタップするタイミング重視のゲームである。『シェンムー』から始まり、今となってはさまざまな作品で見られるようになった「クイックタイムイベント」の塊のようなものである。

私は「クイックタイムイベント」を、寿司の付け合わせである「ガリ」のようなものだと思っている。それはゲームのアクセントでもあり、気分がリフレッシュされて次に続くシーンを新鮮に感じられる。だが、『Tempo』は終始「クイックタイムイベント」だけで構成されている。物語が進んでも、装備を強化しても、出てくるのは「ガリ」ばかりである。

『Tempo』は、つまらないゲームではない。Londonの街を悪から救うストーリーは興味深く、派手な演出はプレイヤーをハラハラさせる。テキストのみならず音声まで日本語化されており、力作であることは間違いない。今後のアップデートで、同じことの繰り返しだと思わせないための何かが追加されれば、より良い作品になるだろう。

最近のAppleは、App Store上に掲載されている暴力的な画像などを規制する動きを見せている。そのためか、スクリーンショットやプレビュームービー(iOS 8以降で閲覧可能)にはモザイクがかけられている。

 


理不尽ではない難しさ『Auro』

 

 

『Auro』は、戦術性の高いターン制ストラテジーゲーム。2014年9月に発売されたAndroid版は355円、先週から配信がスタートしたiOS版は300円。デベロッパーは『100 Rogues』を手がけたDinofarm Games

『Auro』は、とにかく難しいゲームである。合計31レッスンもあるチュートリアルすら簡単にクリアできない。ゲームの目的はポイントを稼いでプレイヤーランクを上げること。ダンジョンを探索して装備を集め、ボスを退治するというものではない。いわゆるスコアアタック系のゲームといったところ。1ターンでできることは、スペルの使用と1タイルの移動のみ。攻撃手段は体当たりが中心であり、攻撃イコール移動である。モンスターを弾き飛ばし、フィールドを囲む池に落下させればいいのだ。言葉に表すと簡単そうに思えるかもしれないが、ダンジョンは毎回ランダムに生成されるため、必勝パターンというものが存在しない。

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『Auro』にはさまざまなモンスターが登場するのだが、種類を大きく分けると「Normal」「Heavy」「Flier」の3タイプになる。「Normal」は体当たりで弾き飛ばせるが、体が大きい「Heavy」はビクともしない。さらに「Flier」は空を飛んでいるため、そのままでは池に落下してくれない。それぞれのモンスターは、このような身体的な特徴にくわえ、特殊な攻撃能力を持っている。たとえば緑のスライムは隣接した主人公を弾き飛ばし、キツネのお姉さんFOXYは1タイル先から攻撃を仕掛けてくる。これらモンスターの能力がプレイヤーを苦しめるのだが、逆に短所があるということも忘れてはならない。FOXYは隣接タイルに攻撃できないことを利用すればいいのだ。モンスターを知ることが『Auro』攻略の第一歩であることは間違いない。

プレイヤーは最大5つのスペルを習得できる。最初のステージでは2つだが、ワープゾーンに入って先に進むことで1つずつ増えていき、画面下部に並んでいく。また、使用回数は1回限りだが、拾って使える特殊なものもある。スペルを使うと、アイコンの色が薄暗くなりカウントが表示される。紋章が描かれたタイルを踏むことで数字は減っていき、ゼロになれば再度使用できるようになる。どのスペルも使いこなすのは難しいのだが、通常では倒せないモンスターを仕留めるために必要なものが多い。たとえば「Flier」タイプのモンスターを池に落としたいのであれば、「Snowball」などのスペルで凍らせなければならない。主人公の能力を知ることも、『Auro』を攻略するうえで重要なポイントである。

『Auro』に似た作品をあげるとすれば『Hoplite』(iOS/Android)だろう。モンスターの特徴を知り、つねに一手先を読みながらターンを進めていく点は同じである。だが、戦術の幅の広さに関しては、豊富なスペルを使い分ける『Auro』に軍配が上がる。

私はチュートリアルをスキップしてしまう性格である。おそらく同じタイプの方もいるだろう。しかし、『Auro』だけは真面目にAからZまで学んでから遊んでほしい。そうでないと、ただ難しいだけの“クソゲー”だと感じてしまう可能性があるからだ。もしチュートリアルで挫折してしまったのであれば、開発者が公開している動画を参考にするといいだろう。「こんな戦術があるのか」と気づく点があるはずだ。

 

第20回Mobile of the Weekの最優秀作品には『Auro』を選ぶ。とても難しいゲームだが、プレイヤースキルの上達がゲーム展開にストレートに影響し、高い達成感を味わえるからだ。運だけでハイスコアをたたき出すことはできず、目標の達成と失敗の理由がはっきりとわかる。チュートリアルをすべてクリアすることは困難かもしれないが、千尋の谷に落とされた獅子の子の気分になり、試練を乗り越えスタート地点に立ってほしい。本作から学べる戦術は、ほかのゲームでも役立つはずだ。

 

Shinji Sawa
Shinji Sawa

ゲームはジャンルを問わず遊びますが、1回のプレイ時間が短いものが好きです。FPSやRTSは対戦モノを積極的にプレイします。しかし緊張するとマウスを持つ手が震えるタイプでもあります。

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