『Rapture – World Conquest』 3000年が5分で過ぎるハイスピードRTS
Mobile of the Weekは、ここ数日の間に発売されたモバイルゲームのなかから光る何かを・際立つ要素を・特筆すべきものを(・場合によっては目に余るデキを)持つタイトルを紹介する週刊連載。第2回は、モバイルにもヤギ参上『Goat Simulator』、人気アニメがスネークゲームに『Treasure Fetch – Adventure Time』、高速ストラテジーゲーム『Rapture – World Conquest』を紹介する。
モバイルにもヤギ参上『Goat Simulator』
2014年9月17日、iOS/Android版の『Goat Simulator』が発売された。価格はどちらも500円。ご存知の方も多いかもしれないが、開発は『Sanctum』シリーズを手がけたCoffee Stain Studiosだ。
Coffee Stain Studiosのデビュー作はiOS向けパズルアクション『I Love Strawberries』(2014年再発売)だ。『Super Sanctum TD』をiPadで配信したときも大きく取りあげられなかったように、モバイルゲーマーの間ではほとんど知られていないデベロッパーかもしれない。
シビアな操作が求められるわけではないので、タッチデバイスとの相性は良くも悪くもないといった感じだ。現在販売されているPC版とまったく同じものではないが、トロフィー集めや"仕様"も移植されており、勢いのある雰囲気はモバイルデバイスでもじゅうぶん味わえる。「ゲームとしてどうなのか」と問われると返答に困るのだが、一発ギャグだと思って深く考えずにプレイすればきっと楽しい。
人気アニメがスネークゲームに『Treasure Fetch – Adventure Time』
日本のストアでのタイトルは『宝さがし』である。ファンであればアイコンのジェイクから判断できるかもしれないが、知らない人からすれば何のゲームなのかさっぱりわからないだろう。販売はCartoon Network、開発はアルゼンチンのデベロッパーHeavyBoatだ。iOS版の価格は300円。Androidは325円。
本作は日本でもじわりと有名になりつつあるアニメ「アドベンチャー・タイム」を題材にしたスネークゲームである。『かこむん蛇』を想像したあなたとは気が合いそうだが、本作はそれとは違う。ヘビのような姿になってしまったジェイクを操り、ステージ上の宝箱をすべて手に入れることが目的である。リンゴを食べればスコアが伸びるが、同時に胴体も長くなってしまう。壁などの障害物や自身の体に接触すればやり直しになるため、ハイスコアを目指すほどクリアは難しくなる。
驚くようなアイデアが詰め込まれた作品ではないが、キャラクターゲームとしては満足できるはずだ。あなたが「アドベンチャー・タイム」の熱心なファンであるならば、たとえ操作ミスで壁に衝突してしまっても、彼らの愛くるしい表情を見ればフラストレーションを感じることはないだろう。
高速ストラテジーゲーム『Rapture – World Conquest』
光陰矢のごとし、至言である。『Rapture – World Conquest』は3000年が5分で過ぎる高速ストラテジーゲーム。イギリスのインディースタジオTundra Gamesのデビュー作にあたる。価格は300円。Android版は未発売。
コンセプトは『Civilization』と『Populous』をミックスした「ハイスピードRTS」といえる。ゲーム自体は『Galcon』に近い。自国の軍隊の何パーセントを他国に送り込むかを決め、シンプルなタップ操作で陣取り合戦をおこなう。紀元前から未来まで3000年(5分)の間にほかのすべての文明を根絶することが目的である。
基本操作はチュートリアルで学べるが、他国の繁栄に大打撃を与える「神の力」の効果などについては説明が足りない。ゲーム開始時にランダムに表示されるヒントから学ばなければならず、毎回スクリーンショットを撮ってあとから読むはめになるのはさすがに不満だ。また、攻撃指示のつもりでタップするとマップが回転してしまうことも多く、操作についてはもう少し改善が必要だと感じられる。
今回紹介した作品のなかからピックアップするならばこれ、『Rapture – World Conquest』である。不満点はいくつかあるが、5分で決着がつくためスマートフォンでプレイしやすい。2人のプログラマーと1人のアーティストによって生み出された本作は、モバイル向けのミニマルなストラテジーとしてはじゅうぶんな出来栄えである。もし今後マルチプレイに対応すれば、よりいっそう強くおすすめできるようになるかもしれない。
雑報
iOS 8の配信と同時にApp Storeにはアプリのバンドルが登場した。「METAL SLUG Pack」や「Infinity Blade Trilogy」などがそれにあたる。
今回のバンドルの登場はiPhone 6/iPhone 6 Plusから入信された方にピッタリだ。有料アプリの売上を伸ばすためのアイデアのひとつだとも考えられる。発売日の翌日には無料で配信されるなど、ほかのプラットフォームでは考えられないセールが当たり前のようにおこなわれているiOS界隈のマーケットに変化をもたらすことになるかもしれない。
ちなみに、App Storeで「Goat Simulator」と検索して2014年9月21日時点でトップに表示される『Crazy Goat FREE』はクローン作である。携帯端末の性能が据え置き機のそれと近づきつつあり、(直接的な因果関係があるわけではないが)それにともない”偽造”はよりいっそう容易になるものと推測される。AppleやGoogleをはじめとする各プラットフォーマーらが何を容認し、あるいは何を拒絶するのか。コンセンサスはなくとも、スタンダードはほしいところだ。