スウェーデン生まれのパズルゲーム『Odd Bot Out』 捨てられたロボットの運命やいかに
Mobile of the Weekは、ここ数日の間に発売されたモバイルゲームのなかから光る何かを・際立つ要素を・特筆すべきものを(・場合によっては目に余るデキを)持つタイトルを紹介する週刊連載。第19回は、パズルありの映像作品『Plug & Play』、暗闇に響く靴の音『Dark Echo』、一つ目ロボットのパズルゲーム『Odd Bot Out』を紹介する。
触れることができるショートフィルム『Plug & Play』
2013年にiOS向けに発売された『Drei』をご存知だろうか。マルチプレイに対応し、言葉の通じない海外のプレイヤーたちと協力してブロックを積み上げる物理パズルである。スイスらしい幾何学的なデザインに一目惚れしたという方もいるだろう。その『Drei』を手がけたEtter Studioは、映像作家Michael Frei氏とコラボレーションし、またもや芸術的なゲーム『Plug & Play』を生み出した。App Storeでの価格は300円。Android版は近日リリース予定。
『Plug & Play』は、ゲームではなく映像作品と呼ぶべきだろう。プレイヤーにできることは、物語をスムースに進めるためのわずかな操作だけである。次のシーンに進むボタンをタップするだけといった単純なものではなく、合間に登場する簡単なパズルを解くというものだが、「ゲームを遊んでいる」という気分にはなりにくい。
それもそのはず。『Plug & Play』は、2013年のInternational Short Film Festivalで公開されたショートフィルムのゲーム版なのだ。App Storeの説明にも書かれているとおり、ゲームプレイに要する時間は10分程度である。しかし、その短い間に、愛やユーモアが詰め込まれている。アニメーション・アーティスト・イン・レジデンス東京2014に招かれた経歴を持つMichael Frei氏の作品を購入すると考えれば、300円はけっして高くないだろう。
Ludum DareからiOSへ『Dark Echo』
2013年4月に開催されたLudum Dare 26(テーマに沿ったゲームを創るイベント)で誕生したサウンドゲーム『You Must Escape』に、より磨きをかけたのが『Dark Echo』である。開発を手がけたのはRAC7 Games。iOS版のみ販売されており、価格は200円。オリジナル版はPCブラウザから無料でプレイできる。
スマートフォン向けのサウンドゲームでは『Papa Sangre』シリーズが人気である。見えない世界で音を頼りに冒険する点は同じだが、『Dark Echo』は音を色で表しており、音の出せない電車内などでも遊びやすくなっている。プレイヤーが歩けば暗闇には靴の音が鳴り響き、複数の白い線が周囲に広がっていく。音が壁に反射すれば白線も跳ね返り、部屋の広さや形状をイメージできる仕組みだ。
暗闇には危険が潜んでいる。得体の知れないモンスターが、プレイヤーの命を狙っているのだ。靴の音がモンスターの耳に入れば白線は赤く染まり、命の危険を察知できるだろう。歩けば音が鳴り響き、モンスターに居場所を知られてしまう。しかし、歩かなければ音が鳴らず、モンスターの存在を知ることもできない。あなたは無意識のうちに忍び足になり、限られた色彩の世界から感じる恐怖におびえるのだ。
Ludum Dare 26のテーマが「Minimalism」であったため、かなりシンプルな作品に仕上がっている。しかし、面白さも最小限というわけではない。どこか芸術的で風変わりなゲームを探しているのであれば、『Dark Echo』をウィッシュリストに入れてみてはいかがだろう。
一つ目ロボットのパズルゲーム『Odd Bot Out』
『Odd Bot Out』は、一つ目のロボットをゴールへ導くパズルゲームである。iOS/Androidどちらも200円で販売中。開発を手がけたMartin Magni氏はスウェーデン育ちであり、北欧らしいデザインが表れているからなのか、中間色が多く使われている。
主人公は一つ目ロボットのOdd。通常よりもサイズが小さかったためか、ゴミ処理場へ捨てられてしまうシーンから物語は始まる。Oddは赤いブロックを積み上げて階段を作ったり、ときには体にくっ付けたりと、物体に触れずに移動させる特別な能力を持っている。しかし身体能力は低く、上れる段差はわずか1ブロック。この短所を特別な能力で補いつつ、パズルを解いて工場からの脱出を目指すのだ。
工場内では同じ境遇のロボットと遭遇する。ムカデのような長い体を持つものもいれば、下半身しか残っていないものもいる。Oddは彼らの協力を得て、困難を乗り越えていく。ほかのキャラクターの助けを借りるパズルゲームといえば『Thomas Was Alone』を思い浮かべるかもしれないが、『Odd Bot Out』は助け合うのではなく、協力者を見捨てていく。少し寂しい気もするのだが、感情のないロボットを表現しているのかもしれない。
Oddには表情がない。しかし、大きな黒目と2本の足の動きはかわいらしく、まるで動物の子供のようである。そのしぐさを見ていると、親心をくすぐられるからなのか、なんとか助けてあげたいという気持ちになってしまう。また、ブロックを着脱したときの乾いた音や、移動時の足音もとても良い。
第19回の最優秀作品には『Odd Bot Out』を選ぶ。ここ数日、偶然にもアーティスティックな作品が連続して発売されたのだが、そのなかで『Odd Bot Out』はもっともゲームらしかった。ブロックの組み合わせや、ほかのキャラクターの助けを借りる仕掛けは斬新ではないものの、Oddのかわいらしさは十分な魅力である。操作性に問題はないのだが、できれば画面が大きいiPadやAndroidタブレットで、ゆっくり時間をかけて遊んでほしい。