Mobile of the Weekは、ここ数日の間に発売されたモバイルゲームのなかから光る何かを・際立つ要素を・特筆すべきものを(・場合によっては目に余るデキを)持つタイトルを紹介する週刊連載。第27回は、高難度玉転がし『Tiltagon』、変形フレンチビリヤード『Magic Shot』を紹介する。
高難度玉転がし『Tiltagon』
『Tiltagon』は、デバイスを傾ける「ティルト」操作で遊ぶシンプルなゲームである。開発を手がけたのはフィンランドのデベロッパーJyri & Piia Kilpelainen。iOSとAndroidどちらも無料でダウンロードできる。
『Tiltagon』は、スマートフォン向けのゲームでよくある加速度センサーを使った玉転がしに、『Super Hexagon』を混ぜ合わせたような作品である。ノリの良いEDMや、目の錯覚を引き起こす色使いなど、『Super Hexagon』に近いと感じる部分がいくつかある。ゲームの目的は、ボールを落下させずに小さなキューブを集めていくことなのだが、困ったことに安全地帯である六角形の足場は一定時間が経過すると消えてしまう。足場がなくなれば落下してしまい、ゲームオーバーとなる。
ティルト操作は不安定であり、慣れるまでフラストレーションがたまるだろう。コツをつかめば、ある程度は思いどおりにボールを転がせるようになるが、ゲームが簡単になるわけではない。スコアが伸びるにつれ、穴が開いていたり、斜面があったり、さまざまな形状の足場が登場するようになる。とにかく高難度のゲームを探しているのであれば、『Tiltagon』は良きパートナーになるかもしれない。
変形フレンチビリヤード『Magic Shot』
『Magic Shot』は、一風変わったフレンチビリヤード(キャロム)ゲームである。現時点ではiOS版のみ販売されており、価格は360円。開発を手がけたのは、Arnaud De Bock氏(『OutoftheBit』)、Francois Alliot氏(『Devouring Stars』)、Renaud Bedard氏(Capybara Games)の3名。
『Magic Shot』はフレンチビリヤードからアイデアを得ているため、テーブルにはポケットがなく、球も3つだけである。ルールは正式なものに近く、白色の手球を突き、ワンショットで黄色と赤色の球に当てる、いわゆる「キャノンショット」を成功させるとスコアが加算される仕組みだ。
何よりも特徴的なのは、ビリヤードテーブルが変形する点だろう。ゲームモードによってタイミングに違いはあるのだが、プレイ中にテーブルは長方形からいびつな形へと変わっていくのだ。そうなれば、当然ながら球の反射を計算することが難しくなる。とくにゲームモード「インセイン」では、1秒ごとに変形していくので、もたもたしていると球を突くチャンスを逃してしまう。非常にシンプルなゲームでありながら、リプレイ性を少しでも高めようというアイデアは、なかなか面白いものである。
スコアを気にせずリラックスして遊べるゲームモード「メディテーション」をプレイすると、本作が多少なりとも『Desert Golfing』に影響を受けていることがわかる。何も考えずに、ただひたすら球を突き続けていると、まるで瞑想しているような気分になる……かもしれない。
「ノーマル」は、ミスショットが許されるのは4回までという制限があり、獲得できるポイントも少ない。テーブルが変形するタイミングはキャノンショットが成功したときのみ。ターン制ストラテジーのように、ワンショットに時間をかけてハイスコアを目指すとよいだろう。
おそらく本作のメインは「インセイン」である。1秒ごとにテーブルが変形し、プレイヤーは常に焦りを感じながらプレイすることになる。キャノンショットが成功すると、現在のスコアの2倍を獲得できる。失敗回数に制限はないものの、タイムリミットが設定されており、ゼロになるまでにどれほど多くのスコアを稼げるかを目指す。
不満点もいくつかある。そもそも手球を2つの球に当てるキャノンショット自体が難しく、現実世界のビリヤードでもそう簡単にできる技ではない。慣れている方であれば問題ないかもしれないが、誰でもできるというわけではないだろう。そのため、どうしても適当に球を突くようになってしまい、純粋にハイスコアを狙うという遊び方が難しい。たとえ過去最高のスコアをたたき出したとしても、自分のテクニックを駆使した結果ではないため得られる達成感は小さい。
第27回Mobile of the Weekの最優秀作品には『Magic Shot』を選ぶ。App Storeでは、たくさんのビリヤードゲームが配信されている。そのなかで、『Magic Shot』が最もアーティスティックであることは間違いない。だからといって雰囲気だけが魅力というわけではない。不満点はいくつかあるが、テーブルが変形する仕組みや、Renaud Bedard氏によるBGMは、同ジャンルのほかの作品よりも際立っている。『Desert Golfing』のような、1人で黙々と遊ぶゲームが好きならば、ウィッシュリストに入れてみてはいかがだろう。