Mobile of the Weekは、ここ数日の間に発売されたモバイルゲームのなかから光る何かを・際立つ要素を・特筆すべきものを(・場合によっては目に余るデキを)持つタイトルを紹介する週刊連載。第23回は、エンドレス・スノーボードゲーム『RAD Boarding』、ゴブリンを投げ飛ばす物理ゲーム『Warhammer: Snotling Fling』、レトロスタイルのダンジョン探索型RPG『Pixel Heroes: Byte & Magic』を紹介する。
終わりのないスノーボードゲーム『RAD Boarding』
『RAD Boarding』は、モバイルで人気の"エンドレスランナー"である。自動進行であり、ゴールが用意されていないタイプのアクションゲームだ。現時点ではApp Storeでのみ配信されているのだが、iOS作品のAndroid移植も手がけるNoodle Cakeがパブリッシャーなので、近い将来にはGoogle Playにも登場するだろう。価格は基本プレイ無料のアイテム課金制。
先月紹介したスノーボードゲーム『Alto's Adventure』とは違い、『RAD Boarding』はスピードの制御がしやすい。どこでもいいので画面を指で押さえると、重心を低くして加速できるのだ。ただし、これは空中からの落下時や、坂を滑り降りるときのみに有効であり、キャラクターが上に向かうときは速度が落ちてしまう。ただ滑り続けるだけでなく、スワイプ入力で体を回転させてトリックを繰り出すこともできる。
グラフィックや演出面には力が入っているのだが、同じような作品がApp StoreやGoogle Playにあふれかえっており、いまいち盛り上がらないというのが正直なところである。あと2つか3つほど工夫があれば、新鮮な気持ちで遊べるかもしれない。
Waaagh!『Warhammer: Snotling Fling』
『Warhammer: Snotling Fling』は、ミニチュアゲームの「Warhammer」を題材にした物理ゲーム。といってもボードゲームなどではなく、「Squig」や「Goblin」たちをカタパルトで飛ばし、建物を崩壊させて人間たちを全滅させるゲームである。iOS版は400円、Android版は478円で販売中。デベロッパーはWicked Witch。同スタジオの過去作『Catapult King』の世界観を「Warhammer」にしたものといったところ。
何かを投げて建物を破壊する物理ゲームの代表作『引越し奉行』や『Crush the Castle』と、基本的な部分は同じである。ただ、グラフィックが3Dということで、人間が物陰に隠れてしまうと、どこを狙って発射すればいいのかわかりにくいという難点もある。もちろんカメラの移動はできるのだが、発射時は視点が固定されているので、奥が見えにくく距離感をつかめないのだ。
ゲーム内テキストは日本語化されており、「なんで毛皮がこんだけしかないんダ!ハナが凍って落ちそうジャネーカ!」といった、いかにもゴブリンらしいセリフが多く、雰囲気はよく出ている。強制縦画面なので、タブレットよりも、iPhoneやスマートフォンを片手で持って遊ぶほうが快適だと感じた。とにかくゴブリンのことが大好きで、それ以外は何も求めないという方であれば、『Warhammer: Snotling Fling』は良き相棒になるかもしれない。
レトロスタイルRPG『Pixel Heroes: Byte & Magic』
過酷な試練を乗り越えたときの達成感というものは素晴らしい。それはゲームでも同じであろう。2015年2月にSteamで配信がスタートしたダンジョン探索型RPG『Pixel Heroes: Byte & Magic』が、iOS(700円)とAndroid(699円)にも登場した。開発を手がけたのはThe Bitfather。パブリッシャーはHeadup Games 。
プレイヤーは酒場で3人のヒーローを雇い、小さな町の住人が抱える悩みを解決するために、さまざまなダンジョンを探索していく。いわゆるクエストが基本となっており、自由な冒険はできない。また、同時に複数のクエストを受けることはできず、1つずつこなしていかなければならない。
フィールドの移動は自動進行である。といっても、3人のヒーローの行進を眺めているだけというわけではなく、ダンジョンに到着するまでに複数のランダムイベントが発生する。イベントは会話選択方式であり、プレイヤーが何を選ぶかによって結果が変わる。たとえば「しゃべるニンジン」と遭遇した場合、食べるか食べないかという判断を下す。その結果、モンスターの群れが出現するかもしれないし、何かを手に入れるかもしれない。イベントによっては「無視する」という選択もできる。安全第一を心がけるなら、見て見ぬふりもアリだ。
ダンジョンは8つの部屋に分かれている。部屋の中には、3体のモンスターが待ち構えているか、アイテムが詰まった宝箱が置かれている。どの宝箱にもトラップが仕掛けてあり、解除の成功率はヒーローによって違う。失敗するとダメージを負うため、ライフが少ない状態であれば素通りするという選択も間違いではない。部屋のモンスターを全滅させるか、宝箱のイベントを終了させるか、どちらかを達成することで次の部屋へと移動できるようになる。
次の部屋に切り替わる前に、画面にはバッグの中身やキャラクターのステータスが表示される。ここで傷を癒すためにポーションを飲んだり、アイテムの整理をおこなう。戦闘から逃げる唯一の手段、「メイン武器を投げ捨てる」を実行した場合は、別の武器を装備することを忘れてはいけない。ちなみに、戦闘中の回復手段は魔法だけであり、ポーションは飲めない。
『Pixel Heroes: Byte & Magic』はとても難しいゲームである。ダンジョンに到着するまでに誰かが死んでしまうこともあるし、最初に遭遇したモンスターが即死級の攻撃をしかけてくることもある。また、ダンジョンのボスを倒したからといって安心はできない。今度は町に帰らなければならないのだ。先のことを考えずにポーションを飲み干していたら、帰り道はダンジョンよりも怖くなるだろう。
『Pixel Heroes: Byte & Magic』を攻略するのであれば、初心に帰って「メモをとる」が重要なポイントとなる。ダンジョンには、「Phoenix」「Griffon」「Wyrm」「Leviathan」の4つのうちどれかの属性、または無属性のモンスターが出現する。ダンジョンによってメインの属性が決まっているため、それを頭にたたきこめば有利に戦うことができる。たとえば、ダンジョンの名前が「Devil's Reef」だった場合、"Reef"という単語から「Leviathan(水属性)」のモンスターが多いと予測できる。であれば、それに対して強い効果を発揮する「Wyrm(森属性)」のついた武器をそろえていけばいいのだ。といっても、なかには「Goblin Outpost」といった、属性を予測できないダンジョンもあるのだが、それは実際に探索して覚えていくしかない。
横スクロールや難度の高さから、どこか『Darkest Dungeon』に似たものを感じるのだが、『Pixel Heroes: Byte & Magic』における死は恒久的ではない。教会でゴールドを払えば復活させることができる。ただし、パーティが全滅すれば全てを失ってしまう。厳しいペナルティに絶望を感じることも多いだろう。そんなときは、ジョークたっぷりのNPCとの会話に癒されるといい。
『Pixel Heroes: Byte & Magic』には3つのキャンペーンが用意されている。ボリュームたっぷりというわけではないのだが、そう簡単にクリアできるような難度ではないため、気に入れば長時間遊べるはずだ。実績を解除すれば新たなクラスのヒーローが登場するなど、やりこみ要素もある。操作面ではスマートフォンやタブレットとの相性は良いのだが、攻略情報を調べながらプレイしたいのであればPC版をおすすめする。
第23回Mobile of the Weekの最優秀作品は『Pixel Heroes: Byte & Magic』である。どうすればダンジョンをクリアできるのかを、少ない情報をもとに考えなければならない点は、昔遊んだゲームを思い出させる。酒場で雇えるヒーロー、受けられるクエストや目的地はランダムであり、攻略方法がないように感じるかもしれないが、「運」だけでゲーム展開が大きく変わることはない。もし死んでしまったとしても、絶望に打ちひしがれるのではなく、戦闘ログからモンスターの特徴を知ることで次の冒険が有利に進められるはずだ。もしこれから探索するのであれば、ダンジョンの特徴についてのメモを取ることをお忘れなく。