シンプル&リラックス、ミニマルパズルゲーム『HOOK』

第17回は、朝の目覚めは冒険の始まり『dreeps』、高難度アクション『Potatoman Seeks The Troof』、ミニマルパズル『HOOK』を紹介する。

Mobile of the Weekは、ここ数日の間に発売されたモバイルゲームのなかから光る何かを・際立つ要素を・特筆すべきものを(・場合によっては目に余るデキを)持つタイトルを紹介する週刊連載。第17回は、朝の目覚めは冒険の始まり『dreeps』、高難度アクション『Potatoman Seeks The Troof』、ミニマルパズル『HOOK』を紹介する。

 


朝の目覚めは冒険の始まり『dreeps』

 

 

iPhoneを目覚ましに起床しているのであれば、『dreeps』は朝の目覚めに楽しみをプラスしてくれるかもしれない。アラームが鳴る時間を設定するだけでRPGの冒険気分を味わえる本作は、iOS版のみ配信されており、App Storeでの価格は300円。開発を手がけたのはYAKAN HIKO。日本生まれの作品である。

ゲーム内キャラクターの行動は、すべて自動でおこなわれる。攻撃や魔法の詠唱、アイテムの購入や装備の変更といった遊び方はできない。主人公(少年ロボット)のライフがゼロになれば冒険は中断される。アラームをセットすると少年は眠りにつき、傷ついた体を癒す。『dreeps』を私生活のサイクルに加えれば、朝の目覚めとともに冒険を再開し、あなたが仕事や遊びに精を出している間、少年はゲームの世界で生きるのだ。

朝と夜だけではなく、昼間に主人公の姿を確認するのもいいだろう。少年は見知らぬ誰かと遭遇すれば言葉を交わし、敵と対面すれば勇敢に戦う。こまめに『dreeps』の世界を確認すれば、息子の成長を見守る親の気分になれるかもしれない。

これはゲームなのかと問われると返答に困る。どちらかといえば、目覚ましアプリである。「遊ぶ」というよりも、「見る」が適切だろう。なぜなら、プレイヤーにできることは目覚ましの時間設定と、主人公が敵に倒されたときにタップで立ち上がらせる2つの操作が基本であり、大半は画面を眺めることになるからだ。だからこそ"RPGの冒険気分"なのだ。

iPhone向けの目覚ましアプリを探しているのであれば、候補に加えてみてはいかがだろう。大嫌いな月曜日の朝も、待ち遠しくなるかもしれない。

 


高難度アクションがiOSへ移植『Potatoman Seeks The Troof』

 

 

2013年にPC向けに発売された高難度アクション『Potatoman Seeks The Troof』がiOSへ移植された。価格は200円。iPhone/iPadどちらでも遊べるユニバーサルアプリ。デベロッパーは『Dino Run SE』や『Glorkian Warrior: The Trials of Glork』などを手がけるPixeljam

主人公は、敵に対して攻撃するといった能力は持っておらず、左右への移動とジャンプのみというシンプルなアクションゲームである。とにかく難度の高い作品ではあるが、この難しさが「うまい」と感じるのだ。プレイヤーが取る行動を知り尽くしているかのように、いやらしい場所に設置されたトラップや、避けにくいタイミングで転がり続ける岩、ジャンプに合わせて伸びるサボテンなど、思わず「うまい」とつぶやいてしまう。Steamの評価を見ても肯定的なコメントが目立っており、この憎めない難しさの虜になってしまった方も多いのだろう。

大方の予想どおり操作性は良くない。移動ボタンの押し間違えが起こりやすく、本来なら右へ移動するつもりが左へ進んで死に至るなんてことは珍しくない。それでも、10回というコンティニュー制限のなかで、どこまで進めるか挑戦しようという気持ちになる。次はいかにして殺してくれるのか、どのような仕掛けが待ち受けているのか、先を見てみたくなるのだ。タッチデバイスでの操作に不安があるならば、Steamのウィッシュリストに入れておくといいかもしれない。

 


リラクシングパズル『HOOK』

 

 

やわらかいサウンドとモノクロカラーの組み合わせは、リラックスという言葉がよく似合う。『HOOK』のストア説明文には「Relaxing, minimal, puzzle game.」とだけ書かれており、とてもミニマルなパズルゲームである。iOSWindows Phone版の価格は100円、Android版は99円。開発を手がけたのはMaciej Targoni氏。

回路図のような見た目は、音を組み立てるパズルゲーム『Circuits』に似ているかもしれない。しかし、パズルの仕組みは別物である。『HOOK』の目的は、黒い丸から伸びた線を縮めること。線の形状は直線のものもあれば、時計の音を嫌う船長の右手のようなフック型などさまざまである。黒い丸をタップして線を縮めようとしても、その形状によって"ひっかかり"が生じてしまうのだ。トレイラーの25秒あたりを見ていただくほうが伝わりやすいかもしれない。

ボタンを押す順番が正しいかそうでないかがすべてであり、正解が一目でわかってしまう序盤は簡単すぎて退屈に感じるだろう。だからといって心配は無用。ステージ15あたりから難度は徐々に上昇し、今までどおりのやり方ではクリアできなくなる。シンプルだからこそ見落としてしまう小さな仕掛けが、プレイヤーを苦しめるのだ。ただし、中盤以降は手順が増えていくだけで、目新しさは薄く感じるかもしれない。

 

『Potatoman Seeks The Troof』の憎めない難しさには惚れたのだが、操作性を考えるとモバイルに最適なゲームとはいえなかった。ここ数日、朝の目覚めは『dreeps』にまかせており、ロボット少年はレベル11まで育った。しかし、ゲームとして評価すべきか悩ましい。というわけで、第17回Mobile of the Weekの最優秀作品には『HOOK』を選ぶ。とてもシンプルなパズルゲームであり、目を見張るような仕掛けは多くないのだが、プレイヤーを選ばないほどよい難度に仕上がっている。しかめっ面で四苦八苦するだけがパズルではないだろう。誰だって、ときには心を落ち着かせる『HOOK』のような作品をプレイしたくなるはずだ。

 

Shinji Sawa
Shinji Sawa

ゲームはジャンルを問わず遊びますが、1回のプレイ時間が短いものが好きです。FPSやRTSは対戦モノを積極的にプレイします。しかし緊張するとマウスを持つ手が震えるタイプでもあります。

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