ターン制ストラテジー『Frozen Synapse』がiPhoneへ 高度な戦術をスマートフォンで


Mobile of the Weekは、ここ数日の間に発売されたモバイルゲームのなかから光る何かを・際立つ要素を・特筆すべきものを(・場合によっては目に余るデキを)持つタイトルを紹介する週刊連載。第15回は、ゴルフRPG『Wizard Golf RPG』、戦術アクション『Space Marshals』、課金なしパズルRPG『Hero Emblems』、SFボイスコマンドゲーム『Mayday! Deep Space』、特殊なターン制ストラテジー『Frozen Synapse』を紹介する。


ダンジョン探索型ゴルフ『Wizard Golf RPG』

 

 

よくあるダンジョン探索型RPGに見せかけて、中身はゴルフ。『Wizard Golf RPG』の開発を手がけたのは、インディースタジオFloor 27 Industries。App Storeにて無料でダウンロードできる。Android版は未リリース。

モバイル向けのゴルフゲームは、奇妙なものが多い。奇想天外なホールばかりの『Super Stickman Golf 2』、砂漠を舞台に孤独な時間を過ごす『Desert Golfing』、脱力感あふれる『Pixel Disc Golf』、スポーツなのに死と隣り合わせの『Death Golf』などたくさん存在する。そして新たに仲間に加わったのが本作、ダンジョン探索型ゴルフ『Wizard Golf RPG』である。

主人公はメイジということで、杖から放たれた魔法が、下の階へと続くハシゴに入ればクリアとなる。各フロアには障害物だけでなく、さまざまなモンスターも登場する。また、クリスタルを集めればショップで杖の購入や能力のアップグレードが可能になり、ゴルフとしての面白さは薄めではあるものの、ダンジョン探索型RPGとスポーツはうまく混ざり合っている。

ユニークな作品であることは間違いない。iPhone/iPadユーザーであれば、この奇妙なゴルフゲームを一度体験してみてほしい。

 


見下ろし型シューター『Space Marshals』

 

 

『Space Marshals』は、Pixelbiteが開発を手がけた見下ろし型のアクションゲーム。世界観はSFと西部開拓時代をミックスしたもので、立派なヒゲとテンガロンハットが似合うキャラクターが、レーザーガンやプラズマキャノンを装備して戦う。iOS版のみ発売されており、価格は500円。

Pixelbiteは『Space Marshals』を"タクティカルシューター"だと説明する。やみくもに弾を撃つトリガーハッピーではなく、敵の行動を読みながら戦術を練って戦うゲームだという。しかし残念なことに、障害物に身を隠したり、敵を背後から攻撃するといったアクションはほとんど意味をなしておらず、どんなに慎重にプレイしても最終的には撃ちあいに発展してしまう。"タクティカル"という言葉を鵜呑みにしてしまうと、首をかしげることになるかもしれない。

バーチャルスティックを使った移動や攻撃は難しい。タッチ操作で遊ぶFPSほどではないのだが、なるべく短時間で敵を仕留めなければならない本作において、操作のしにくさは足かせとなっている。最終的にはチャプター3まで発売されるようなので、可能であればほかのプラットフォームでコントローラーを握って遊んでみたい。

 


パズルRPG『Hero Emblems』

 

 

パズルとRPGの組み合わせといってもソーシャルゲームではなく、アプリ内課金なしの買い切りである。また、世界観を無視したお色気キャラクターは登場せず、射幸心を煽る要素もない。モバイルにしては珍しい健全なパズルRPGである。開発を手がけたのは台湾のデベロッパーHeatPotiOS版のみ発売されており、価格は300円。日本語にも対応している。

プレイヤーは、さらわれたお姫様を助けるため悪に立ち向かう4人の英雄である。パズルは『Bejeweled Blitz』タイプのマッチ3。隣接するブロックを入れ替え、3つ以上を1列にそろえて消してゆく。英雄はそれぞれ特別な能力を持っている。たとえば、パラディンには「盾」の紋章が割り当てられており、緑のブロックを消せば攻撃やスキルが繰り出される。

攻撃のバリエーションが少ないため、どうしても同じことの繰り返し感が強くなってしまう。新しいスキルを覚えることもできるのだが、戦い方はそれほど変化しない。頭脳プレイで敵を倒すというよりも、英雄のレベルが勝敗を左右しているようにも感じられる。

パズルでありながら、それほど頭脳プレイが求められないというのは物足りないのだが、逆にゲームはテンポよく進む。次の一手を深く考える必要がないため、気軽に遊べる点が魅力なのだろう。この部分は少しソーシャルゲームに似ているかもしれない。「ガチャ」などのアプリ内課金はないので、お子様でも安心して遊べるのではないだろうか。

 


SF無線ゲーム『Mayday! Deep Space』

 

 

とある宇宙船で感染者が増加し、生き残っているのは1人のみ。プレイヤーは無線機を使い、生存者の脱出を手伝う。アメリカのドラマならシーズン1で打ち切りになりそうな設定かもしれないが、iPhoneに向かって指令を出すのはなかなか楽しい。『Mayday! Deep Space』は、現時点ではiOS版のみ発売中。価格は300円。近日中にAndroid版もリリースされるようだ。開発を手がけたのはIron Cloud Entertainment。

以前紹介した『Audio Defence: Zombie Arena』は、音を聞いて状況を判断し、ゾンビと戦うゲームであった。『Mayday! Deep Space』は、耳ではなく口がメインのゲームである。生き残ったキャラクターが目標地点まで安全にたどり着けるように、「Go Left」「Run」「Stop」といった約10種類のボイスコマンドで操作する。英語が苦手だとしても、何を言えばいいのかは画面に表示されているので、それほど困ることはないと思われる。声を出せない状況でプレイするのであれば、無線機のカバーをスライドさせてボタンを使った操作も可能である。

無線機にはレーダーがついており、青が生存者、赤が感染者を示している。単純に、青と赤が接触しなように気をつければいいのだ。難度は低めで、数分でクリアできてしまうだろう。どちらかといえばストーリー重視のゲームであり、4つのエンディングが用意されている「遊べるSF小説」といったところ。

『Mayday! Deep Space』はスマートフォンならではのゲームといえる。SFが好きならば、物語の登場人物になった気分で遊べるだろう。1人暮らしの方は、隣の部屋に迷惑をかけないよう声の大きさに注意してほしい。

 


高度な戦術をiPhoneで『Frozen Synapse』

 

 

「面白いのにプレイヤーが少ないんですよね」弊紙岡野はそう嘆いた。昨年末におこなわれたAUTOMATON忘年会の帰り道のことである。『Frozen Synapse』は2011年にPC向けに発売された、ターン制のストラテジーゲームである。2013年にはiPadにも移植された。高度な戦術を求められる作品で、読者のなかには「セールで買ったけど遊び方がわからなくて積んでしまった」という方もいるのではないだろうか。私も何度か挫折を味わっている、まるで初心者お断りかのようなストラテジーゲームがiPhoneに移植された。価格は300円。iPad版がユニバーサルアプリにアップデートされたのではなく、別売りである。ちなみに、クロスプラットフォームのマルチプレイにも対応している。

一般的なターン制ストラテジーゲームの戦闘では、1ターンの行動が2回までに制限されているものが多いだろう。『Frozen Synapse』にはアクションポイントなどはなく、「作戦計画」タイムの間に前もって複数の行動を予約する。「作戦計画」では、5秒以内に行動できる範囲であれば好きなだけユニットに命令を下せる。目標地点に向かい敵を撃つだけではなく、身を低くする、銃口を向けたまま歩く、途中で1秒停止し再度歩き出すなど、とても細かなプランを立てられるのだ。

数時間ほどで遊び方は理解できるとして、問題は「つねに相手の裏をかく」である。言葉にすると簡単ではあるが、実際にプレイするとそうはうまくいかない。初めてのオンライン対戦では、わずかに歩いただけで窓越しに射殺されるのがオチだろう。ルールはシンプルでも勝てないのだ。これが初心者にとっては難しく、とっつきにくいのである。

 

第15回Mobile of the Weekの最優秀作品は、移植作品ではあるが『Frozen Synapse』を選ぶ。高度な戦術を外出先でも楽しめるのだから、ファンにとっては嬉しい限りだろう。非同期のオンライン対戦は、持ち運べるスマートフォンとの相性は抜群といえる。おそらくプレイヤー数も増えるのではないだろうか。これから遊び始める人は、ひとまずルールを理解する前にマルチプレイに挑んでほしい。私も対戦で楽して勝ちたいのだ。