2015年期待のモバイルゲーム10選
Mobile of the Weekは、ここ数日の間に発売されたモバイルゲームのなかから光る何かを・際立つ要素を・特筆すべきものを(・場合によっては目に余るデキを)持つタイトルを紹介する週刊連載。第14回は、2015年に発売が予定されているiOS/Android向け作品を紹介する。AUTOMATONライター陣が選ぶ「2015年 期待の新作ビデオゲーム」で取り上げた『Chroma Squad』もモバイルに対応するのだが、本稿ではあえて除外する。
『Death Road to Canada』
『Death Road to Canada』は、アメリカのFloridaからカナダのOntarioを目指すサバイバルゲーム。2013年にはKickstarterで約4万ドルの資金調達に成功した。当初は同年11月に発売される予定だったが、数回の延期を経て現在は2015年の1月から3月を目標に開発が進められている。『聖剣伝説』の影響を受けた『Mage Gauntlet』や、『DARK SOULS』のエッセンスを取り入れた『Wayward Souls』を生み出したRocketCat Gamesと、『GlitchMachine』『Chillaxian』といった尖った作品をリリースしているmadgardenとのコラボレーション。この2人のデベロッパーが協力して作品を創るのは今回が初めてではなく、過去には自動進行型のアクションゲーム『Punch Quest』を共同開発している。
気がかりなのは、アルファテストに参加していないとゲームの内容がわかりづらい点だ。今までに何度か動画やスクリーンショットが一般公開されたものの、そこからは「大量のゾンビに襲われるゲーム」ということしか伝わってこないだろう。
どのようなゲームに仕上がるのか不安なのは事実。だが、『Punch Quest』が高評価を獲得しているように、この2人のデベロッパーのコラボレーションはとても魅力的な作品を生み出すのだ。最終的には「かわいらしいキャラクター」「大量のゾンビとの戦い」以外にも、際立つ何かを持つタイトルになるはずだ。
『Crashlands』
『Crashlands』は、とある惑星を舞台に過酷な日々を生き抜くサバイバルアドベンチャー。デベロッパーは、『Towelfight 2: The Monocle of Destiny』などを手がけるButterscotch Shenanigans。『Don't Starve』風の作品にも見えるが、トレイラーから判断するに、モンスターとの戦闘が頻繁に発生するアクション色の濃いサバイバルゲームといったところ。おそらく餓死よりも戦死のほうが多くなるだろう。
生き延びるために必要なものは、素材を集めれば生産できる。家具をそろえて家を建て、恐ろしいエイリアンが出現する夜に備えたり、強力な武具を作ればモンスターハントも楽しめる。サバイバル生活だけに重点を置いているのではなく、戦闘や育成といったRPGならではの要素も強めだ。また、モンスターを手なずけてペットにし、一緒に冒険に出かけることも可能。
モバイルデバイスで遊べるサバイバルゲームはそれほど多くない。『Minecraft – Pocket Edition』や『Terraria』といった人気タイトルや、それらの影響を強く受けたサンドボックス型のアドベンチャーはいくつかあるものの、それでも数は少ない。『Crashlands』を皮切りに、同ジャンルの作品が今後増えていくかもしれない。
『Super Meat Boy Forever』
PCや家庭用ゲーム機で人気を博した高難度アクションが、ついにモバイルに登場する。といっても移植ではない。2012年からスタートしたモバイル版『Super Meat Boy』プロジェクトは、タッチデバイスでの操作に限界があるという結論に至り、一から作ることになったという。そして、iOS/Android向けの『Rayman』シリーズがそうであるように、自動進行型に生まれ変わった。さらに、難度とリプレイ性を高くするために、ステージはランダムに生成されるのだ。
6つの章があり、『Super Meat Boy』のボスも登場するという。ストーリー以外にもエンドレスモードや、世界中のプレイヤーとスコアを競うDaily Runも楽しめる。また、ほかのインディーゲームのキャラクターも使用可能とのこと。
モバイルには『Super Meat Boy』を意識した作品がよく登場する。しかし、どれもゲーム自体の難しさに操作のしにくさがプラスされており、楽しいと感じるまでにフラストレーションが限界に達し、序盤で投げ出してしまうものが多い。『Super Meat Boy Forever』は自動進行型ということで、多少の不安はあるものの、タッチデバイスに最適なコントロールになるだろう。
『Heroes and Castles 2』
一見すると『Chivalry: Medieval Warfare』のような中世ヨーロッパを題材にしたアクションゲームに見えるかもしれないが、じつはタワーディフェンス寄りのストラテジーゲームである。プレイヤーはクラス別のヒーローのなかから1人を選び、押し寄せるモンスターの大群から城を守るのだ。デベロッパーFoursaken Mediaの作品は、どれも個性が強くとっつきにくいといったイメージがあるのだが、1作目の『Heroes and Castles』は日本でもヒットしたように思う。
プレイヤーはヒーローを操作し、戦況に応じてさまざまな兵士を召喚して城を守るというコンセプトはそのまま引き継がれている。前作との大きな違いはグラフィックだろうか。武器や鎧のデザインもスタイリッシュになっており、Foursaken Mediaの成長が垣間見える。天候も変化するようで、それが戦闘にどのように影響するのか興味深い。装備品の変更も可能になるようで、キャラクターの育成もよりいっそう楽しめそうだ。
前作と同じくCo-opに対応すれば、しばらくヒット作に恵まれていなかったFoursaken Mediaにとって重要なタイトルになるだろう。
『Raging Justice』
『ファイナルファイト』や『ベアナックル』、『ダブルドラゴン』などといったベルトスクロールアクションゲームに影響された作品である。良い意味で古臭いグラフィック、少し“マヌケ”な敵キャラクターなど、当時ゲームセンターに足しげく通っていた方ならば、興味をそそられるのではないだろうか。開発を手がけるMakinGamesを設立したNic Makin氏は元Rareのプログラマーであり、『Perfect Dark Zero』や『Kameo: Elements of Power』などの開発に携わった経歴を持っている。
殴る蹴るはもちろんのこと、ボトルやハンマーといった武器での攻撃や、トラクターを運転して敵の群れに突撃するなど、相手を血祭りに上げる手段はさまざまだ。オンラインマルチプレイにも対応しており、最大2人での協力プレイが可能である。最終的には4人同時プレイを目指したいとのことだが、ぜひとも実現してほしい。
少年時代にカツアゲに怯えながら『ファイナルファイト』をプレイした私としては、自宅で安全にベルトスクロールアクションをプレイできることに喜びを感じている。積み上げた50円玉の山が崩されるかもしれないという心配は不要だ。
『Curious Expedition』
『Curious Expedition』は、Charles Darwin氏やMaria Curie女史といった歴史上の人物として、未開の地を探検し名声を高めるシミュレーションゲーム。ランダムに生成されるマップや、食糧問題といったローグライクの特徴も持っている。「19世紀を舞台とした『FTL: Faster Than Light』」とたとえられることが多いのだが、アルファ版をプレイした限りではもう少しサバイバルゲーム寄りといったところ。開発を手がけるのは、ドイツに拠点を構えるデベロッパーMaschinen-Mensch。
マップは六角形のタイルで区切られており、移動するたびに「Sanity」を消耗していく。さまざまな地形があり、草原や森林、沼地や山脈など、移動しやすいかどうかによって「Sanity」の減り具合が変化する。これは空腹のようなもので、食糧で腹を満たすことで回復し、ゼロになれば死に至る。また、仲間の忠誠心にも影響し、「Sanity」が低くなるほど離脱する確率が高くなる。メンバーが減ればバッグの容量も小さくなり、死まっしぐらとなる。集落を発見すればメンバーの雇用や物品のトレードができる。だが、すべての原住民が友好的だとは限らない。これはプレイヤーの「Standing」が影響する。
公式サイトにも記述してあるとおり、非常に難度の高い作品であり、何かを発見するたびに何かを失わなければならないことが多い。運に左右されるゲームではあるが、最悪の事態を避けるための頭脳プレイが重要であり、この部分は『FTL: Faster Than Light』に似ている。
現在はアルファの段階なので、まだまだ物足りないと感じる部分は多い。リリースまで残り6か月、どのように変化していくのか楽しみである。
『TEMPO』
『TEMPO』は、イギリスを舞台に繰り広げられる善と悪の戦いを描いたアクションゲーム。モバイルデバイスでの操作を考慮してか、タッチ操作でプレイしやすい"クイックタイムイベント"が中心の作品である。デベロッパーはSplash Damage。同スタジオは、2011年にBethesda Softworksから発売されたスピード感あふれるFPS『BRINK』、ブルース・ウェインがバットマンとして活動を始めたばかりのころを描いた『Batman: Arkham Origins』などを手がけている。
ほかのプラットフォームで名の知れたデベロッパーだからといって、面白いモバイルゲームを生み出すとは限らない。休養のつもりがとんでもない悪夢に引きずり込まれてしまう作家を描いた『ALAN WAKE』を手がけたRemedy Entertainmentは、昨年アジア以外の地域で『Agents of Storm』をリリースした。VGX 2013で発表されたときは「逆タワーディフェンス」と銘打たれていたのだが、ふたを開けてみれば『Clash of Clans』系の箱庭シミュレーションだった。
価格については明らかになっていないが、開発者はあえて"秘密"だとコメントしており、おそらく基本プレイ無料だと思われる。モバイルのFree-to-Play作品に過剰な期待はできないのだが、賛否両論ではあったもののスピーディでアクロバティックなアクションを楽しめた『BRINK』のように、多少なりともプレイヤーをあっと驚かせるようなタイトルになるだろう。
『The Enchanted Cave 2』
2010年にフラッシュゲームとして公開され、2014年にはiOS/Android向けにも発売されたダンジョン探索型RPG『The Enchanted Cave』の続編である。昨年4月にはKickstarterで約1万ドルの資金調達に成功している。Steam Greenlightも通過しており、ファンの多さがうかがえる。開発を手がけるのはDustin Auxier氏。
『The Enchanted Cave 2』は前作と同様に、ランダムに生成されるマップ、恒久的な死といったローグライクとされる要素を持っている。ゲームの進行はターン制ではなく、モンスターはその場から微動だにしない。よって、こちらから攻撃を仕掛けなければ、戦闘は発生しない。だからといって、逃げ続けて最下層にたどりつけるわけではない。モンスターは道をふさぐように配置されていることが多く、無傷で生き延びることはできないのだ。
ツルハシを使ってダンジョン内の壁を破壊したり、離れた場所にあるアイテムをテレキネシスで手に入れたりと、前作よりもさらに戦術の幅が広くなっている。また、アイテムの生産が可能になり、拠点となる町も登場する。モンスターの種類は増え、マップも広くなり、育成面ではスキルツリーが追加されるなど、1作目で感じた「これができればいいのに」が叶うだろう。
タッチデバイスとの相性も良いと思われるので、iPhoneやスマートフォンでも快適にプレイできるはずだ。2015年1月にはPC向けのブラウザ版が公開予定とのことで、興味のある方は公式サイトの更新情報を確認するといいだろう。
『The Walking Dead: No Man's Land』
ゾンビによる世界の終末後を描いたコミック&ドラマ『The Walking Dead』を題材にした基本プレイ無料のモバイルゲーム。開発を手がけるのは、元RovioやDisneyなどのスタッフで構成されるフィンランドのデベロッパーNext Games。公式サイトやトレイラーを見ていただくとわかるように、「Mobile Game」であること以外はベールに包まれたままである。
まったく内容がわからないのに期待する理由は、『The Walking Dead: No Man's Land』がどのようなFree-to-Play作品なのか気になるからだ。2013年から『Clash of Clans』タイプのPay-to-Winが主流になり、Activisionや2K Games、Ubisoftなど大手パブリッシャーまでもがクローンをリリースしている。2015年もその流れが続くのか、それとも新しいスタイルの課金の仕組みが登場するのか興味深い。
モバイルで遊べる『The Walking Dead』作品といえば、Telltaleのアドベンチャーゲームが最初にあがるかもしれない。じつは2012年にコミック版を題材にしたストラテジーゲーム『The Walking Dead: Assault』が発売されている。RTSではあるもののiPhoneやiPadでも遊びやすく、個人的にはとてもお気に入りだったのだが、残念なことに1年以上アップデートがおこなわれていない。『The Walking Dead: No Man's Land』がどのようなゲームであれ、原作およびドラマのファンが興奮するタイトルであってほしい。
『Ember』
『Ember』は見下ろし視点のRPGである。戦闘はリアルタイムで進行するが、戦術変更のための一時停止が可能であり、『Baldur's Gate』などに近いゲームプレイになるようだ。デベロッパーのN-Fusionは、賛否両論となったサイバーパンクアクションRPG『Deus Ex: The Fall』などを手がけている。
ドルイドやエルフなどが登場するファンタジーものであり、70以上のクエストがプレイヤーを飽きさせないという。しかし『Ember』もまた謎が多い作品である。当初は2014年の秋に発売される予定だったが、その後音沙汰がない。10年以上アイデアを練り続けてきた作品であるにもかかわらず、公式サイトやSNSからは熱意を感じることができない。プロジェクトは頓挫してしまったのか、それともよりいっそう磨きをかけるために象牙の塔にこもっているからなのか。
『XCOM: Enemy Unknow』や『FTL: Faster Than Light』など、コアゲーマー向けの作品はモバイルでも増えつつある。しかし、それら移植を除けば、あとはカジュアルなゲームばかりが目立つ。スマートフォンやタブレットで遊ぶことを考慮すれば、そのような流れになるのは当然かもしれないが、物足りなさを感じる人も多いのではないだろうか。『Ember』は、そういった人たちに受け入れられるはずだ。
今年もたくさんのモバイルゲームが発売される。2014年は濃い作品が少なかったように感じたのだが、面白いかどうかは別として、今年は満足できそうである。普段PCや家庭用ゲーム機で遊んでいる人たちをも惹きつける作品が、このなかから生まれるかもしれない。