スクエニ、海外インディーゲームへ参入

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北米や欧州のゲームをプレイする者にとって、スクウェア・エニックスは『ファイナルファンタジー』や『ドラゴンクエスト』の開発会社というよりも、海外のゲームを国内で販売するパブリッシャーとしての側面が強い。『Call of Duty』シリーズや『Tomb Raider』に『Deus Ex: Human Revolution』、近年だと『Thief』や『Diablo III』は、同社の「エクストリームエッジ」レーベルから国内でローカライズ販売されている。そしてこれら大型タイトルにつづき、昨年からスクエニが力をいれているのが海外製のインディーゲームだ。

スクウェア・エニックスのエクストリームエッジは先週、『Stelth Inc: A Clone in the Dark』と『DiveKick』のPlayStation向け発売を発表した。『Stelth Inc』は今年3月発売されたステルス2Dアクションで、『DiveKick』は滑空蹴りのみに焦点をあてた格闘ゲームとして話題になった作品だ。どちらもインディーゲームであり、いままで同レベールで発売されてきた大型タイトルとはまったく毛色が違う。公式サイトでは「海外独立系デベロッパーの作品を日本国内へお届けします」の宣言とともに、従来の赤色のものとは区別された緑色のレーベルロゴが公開されている。今後は本腰をいれて海外製インディーゲームの国内販売をすすめていくようだ。

ソニーやMicrosoft以外のサードパブリッシャーが海外インディーゲームを国内へ輸入している例は以前からある。スパイクは『ブラザーズ 2人の息子の物語』や『How to Survive』などの作品をローカライズ販売している。『Papers, Please』はPlayismにより日本語ローカライズ・リリースされた。最近は何気なしに買ったインディーゲームが日本語化されていて、調べると国内でパブリッシングやローカライズ契約を結んでいたということも多い。だから国内パブリッシャーが海外のインディーゲームを販売するのはめずらしいことではないのだが、それでも巨人スクエニが独立系ゲームに参入する意味は大きいだろう。海外製インディーゲームの国内への流入とローカライズが今後増えることは間違いない。価格の大幅変更や販売規制などの問題がないならば、遊び手たちにとっては朗報だ。

 

海外でPC配信ゲームのみ対象に始まった「Square Enix Collective」
海外でPC配信ゲームのみ対象に始まった「Square Enix Collective」

 

スクエニは昨年10月から「Square Enix Collective」にも取りくんでいる。これはValveのSteam Greenlightに似たプラットフォームで、開発者のアイディアを叩き台としてゲーマーたちに公開する場だ。開発者はゲーム企画をCollective上にて公開し、ユーザーたちがその企画が面白いかどうかを判断し意見する。さらに30日以内にユーザー投票によって一定の割り合いをこえた場合はGOサインが出され、提携している他企業のクラウドファンディングサイトへ移行することができる。実際にプロジェクトがスタートした際には、ゲームの開発や発売に関してもスクエニからサポートされるようだ。また『Gex』や『Anachronox』といったEidosスタジオの古いIPを使用したプロジェクトを申請できる特徴もある。

厳密にいうとCollectiveは小規模なインディーゲーム限定のプラットフォームではない。今年1月、パイロット版サイトで初の企画作品として掲載された『World War Machine』、『Moon Hunters』、『Game of Glens』の3作品をみてみよう。『Game of Glens』の開発は『ライオットアクト 2』のRuffian Gamesだが、同作をふくむいずれもがインディーゲーム然としている。また開発者とファンが繋がりをもちつつゲームの完成を目指す仕組みも、昨今のインディーゲームコミュニティにみられるスタイルとまったく同じだ。

もちろんスクエニも慈善事業でインディーゲームを推進しているわけではない。今年1月にはビジネス系のゲームメディアgameindustry.bizによるCollectiveのプロジェクトリーダーPhil Elliott氏へのインタビューが公開された。そのなかでElliott氏は、スクエニがクラウドファンディングの収益から5パーセント、またスクエニがゲームの配信を担当する場合は10パーセントのマージンを受けとることを明らかにしている。EidosのIPを使用する場合はさらに10パーセント上乗せだ。大手企業がインディーゲームを青田買いする構図にもみえる。ただスクエニがどの程度インディーデベロッパーに干渉するのかはまだ未知数で、Collectiveがインディーゲーム発足のひとつの場として成長する可能性も十分あるだろう。レーベル「エクストリームエッジ」の動きもふくめ、スクエニが活気にみちたインディーゲームの畑に土足で入りこんできたのか、それともインディーゲームとともに歩みにきたのか。今後の動向を見守りたい。

 


プレイヤー同士が物語に相互干渉するADV

 

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タイトル名: 『The Sun Also Rises
ジャンル: マルチプレイヤーアドベンチャー
開発: Horse Volume
発売日: 2015年

 

アフリカにあるガボン共和国の国名に聞きなれない方も多いのではないだろうか。そんな同国にあるスタジオHorse Volumeが興味深いタイトルを開発中だ。『The Sun Alson Rises』はアフガニスタン戦争を題材にしたアドベンチャーゲームである。プレイヤーは医療兵、現地の少年、CIAの女性諜報員などになり、PTSDや現地住民と軍隊の軋轢、時には性暴力やタリバンなど狂信者による子供たちの洗脳など現代戦争の諸問題を経験していく。題材だけでも面白いのだが、興味深いのがアドベンチャーゲームでありながら「マルチプレイヤー」を導入している点だ。前述した3人の主人公の行動がクラウドデータとして保存され、つぎのプレイヤーが遊ぶストーリーに影響をあたえるというシステムである。現時点では詳細は明らかにされていないが、筆者はひとりのプレイヤーが独善的な選択肢をとるとほかのプレイヤーに悪影響をあたえるような、あたらしいアドベンチャーゲームの形に仕上がるのでは? と期待している。発売は2015年予定だ。

 


雪山サスペンス・サバイバルゲーム

 

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タイトル名: 『Kona
ジャンル: サバイバルアドベンチャー
開発: Parabole
発売日: 未定

 

『Kona』は一見『DayZ』や『Rust』など昨今流行のサバイバルゲームのひな形をつかった作品かと思いきや、サスペンス色の強い物語でプレイヤーを引きこむアドベンチャーゲームだ。作品の舞台となるのは1970年の雪が降りそそぐケベック北部。銅鉱石の採掘で富をきずいている実業家W. Hamiltonと地元のクリー族とのあいだでいざこざがおこっている。この地域はクリー族にとって神聖な土地であり、かれらは採掘作業によってこの場所が破壊されることを恐れているのだ。そんなとき、Hamiltonの避暑地や狩猟小屋にて盗難と破壊行為が発生する。プレイヤーはHamiltonに呼びだされた私立探偵となりこの事件の調査にむかうのだが、ケベック北部の神聖な地からはクライアントであるHamiltonどころか、すべての人々がこつ然と姿を消していた。この謎にせまるのが『Kona』の根幹部分だ。ゲームプレイ面ではケベック北部の広大なオープン環境が用意されている。プレイヤーは手がかりを見つけ出して調査し、そしてときには自然の脅威と戦って生きのびなければならない。ゲーム進行がつねに第三者のナレーションによって進むという点も筆者の好みの手法だ。現在はKickstarterにて4万ドルの獲得をめざしている。

 


トラディショナル全方位アクションシューティング、Co-opあり

 

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タイトル名: 『Monsters & Monocles
ジャンル: シューティングアクション
開発: Retro Dreamer, Inc.
発売日: 2014年末

 

『Monsters & Monocles』は説明するよりも動画を見てもらったほうが早い。同作は『Smash TV』や『ガントレット』によく似たトップダウン式のシューティングアクションゲームだ。リッチなドットビジュアルで最大4人のCo-opアクションを描く。自動生成レベルにModのサポートなどがあるものの、とりたてて特別な点はない。が、画面上にひろがる大量の武器とコイン、そしてハデなシューティングパートをみていると、さわってみたいと思わせるようなシンプルな魅力のある作品である。現在はSteam Greenlightに登録されている。

 


モチーフは「赤ずきんちゃん」、童話2.5Dアクション

 

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タイトル名: 『Woolfe – The Red Hood
ジャンル: 童話2.5Dアクション
開発: GRIN Gamestudio
発売日: 2015年

 

「不思議の国のアリス」の『American McGee's Alice』が好きなら本作も気にいるかもしれない。『Woolfe – The Red Hood』は「赤ずきんちゃん」をモチーフにしつつも、殺された父の復讐をとげるため少女が斧を振りまわし戦うという、エキセントリックな設定を取りいれている。開発陣はAntonio Collodi版のピノキオがディズニー版とは異なり父親と母親を殺そうとする悪童だったことを例にあげており、この作品でも童話の中で反社会的かつ現実的なテーマをあつかうつもりらしい。ゲーム自体は「シネマティック2.5Dアクション」と銘打たれており、悪くいえば雰囲気と演出重視のアクションゲームということになる。先に名前を挙げたアリスゲームの続編『Alice: Madness Returns』は、世界観は魅力的なもののアクション部分が単調で冗長な作品だった。本作は同じミスを犯さないような作品となることを願いたい。

 


今週の注目作は『The Sun Also Rises』

グラフィックが安っぽい3Dポリゴンであるにも関わらず、トレイラーやスクリーンショットから確認できる情景は、まるで1枚の戦場写真を切りだしかのような臨場感がある。アフガニスタンの戦争テーマもいい。先日リリースされた第一次世界大戦がテーマの『Valiant Hearts』や、革命を遠くから見る家政婦を描くTale of Talesの『Sunset』など、意外にも現実世界の戦争をテーマにしたアドベンチャーゲームはいま注目を集めつつある。惜しむらくは見た目のパンチが弱いことと、コアとなるゲーム体験がどのようなものとなるのかほとんど語られていないことだ。記事執筆時点でのKickstarterでの伸び率は悪いが、どうか筆者が初めてプレイするガボン共和国産ゲームになってほしいと思う。

 

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初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。