家庭用コンソールにも「早期アクセス」の時代くるか

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過去1週間のインディゲームニュースをピックアップするのが週刊連載Indie of the Weekです。第39回目は、完成前のゲームを有料で販売する開発モデル「早期アクセス」をとりあげます。先日、PCゲームのみで現在展開されているこの早期アクセスが家庭用コンソールにも導入される可能性が報じられ、国内外で注目を集めました。

早期アクセスとは開発途中のタイトルを一般ユーザーにむけて販売し、フィードバックを獲得しつつゲームの完成を目指していく開発モデルです。ベータテストなどと大きくことなる点は、テスト段階でプレイヤーから対価をもらうこと。アルファ版やベータ版のゲームをおカネを払って購入してもらうことで開発資金を補填し、さらにユーザーの意見を取りいれて開発の舵取りに役立てます。「コミュニティと共にゲームを創り上げる」が早期アクセスモデルの目指す本来の姿です。

いまもっとも早期アクセスが流行しているのはValveのゲーム配信プラットフォームSteamです。2013年3月からスタートしたSteam早期アクセス(Steam Early Access)はとくに開発リソースの小さなインディーデベロッパーたちから好まれました。現在Steamにて配信中の早期アクセスタイトルは約1年と4か月間で200本を突破しています。およそ2日から3日に1本の早期アクセスゲームが販売されている計算です。

またこのSteam早期アクセス以前にも、同様のモデルを採用してゲームを開発販売してきたスタジオはすでにいくつか存在しました。最も有名なのはスウェーデンのMojangスタジオが開発している『Minecraft』でしょう。同作は自前の公式サイトにてアルファ版とベータ版を販売しており、完成版がリリースされるまえにおよそ300万本ほどを売りあげました。現在『Minecraft』の全機種板を合計したシリーズ総売りあげは5400万本強までのびており、早期アクセスを採用したタイトルのなかでは群を抜いて大きな成功をみせています。

 

minecraft

 

PC上で生まれ発展してきたこの早期アクセスが、さらにコンソール上でも展開される可能性はあるのか?業界メディアGamasutraが、PlayStationと開発者の関係にフォーカスしたインタビュー記事を掲載し、そのなかで「早期アクセスをソニーが検討している」ことが明らかとなりました。インタビューに対応したのはデベロッパーとパブリッシャー関係の調整を担当しているSCEA幹部Adam Boyes氏です。

Boyes氏はデベロッパーと関係を築くためのさまざまな手段を説明するなかで、「SCEのチームが早期アルファアクセスにて起きていることをどう検討すべきか考えている」と発言しています。記者がこのコメントについて切り込んだところ、Boyes氏は「社内でなんども議論が交わされている」と答えたほか、「率直に言って、現在取り組んでいる際中だ」とも言及し、早期アクセスがSCE内で現実味をもって検討されている案件であることをうかがわせました。

地元の連敗スポーツチームを応援するように、デベロッパーの独立を手助けしたいとAdama Boyes氏は伝えています。ただしBoyes氏は早期アクセスの問題は認識しているようです。早期アクセスを実際にやるのならば、未完成のゲームと知らずにストアでユーザーが購入してしまう可能性をふせぎ、また最低限の技術要件も必要となる。「どの時点がゲームを発売することができる基準なのか?」。その詳細を現在詰めている段階であるとしています。

ソニーと同様に[email protected]でインディーデベロッパーの囲い込みを進めているMicrosoftは、実際に[email protected]参加のデベロッパーから同モデルをやりたいとの声を聞いているとしたものの、社内で検討が進んでいるかどうかに関しては言及しませんでした。Microsoftの[email protected]担当者Chris Charla氏は業界メディアDevelopの取材にたいし、クリエイターたちと綿密に意見交換をしていると答えるにとどまり、現時点でなにも発表できることはないとしています。

現在PCプラットフォーム上の早期アクセスは、未完成のゲームを発売し最終的に完成するのかどうか見通しが立たないといった事例が多発しつつあります。コンソール上で早期アクセスを展開するならば、「発売OKの基準」をさらに詰めていくことは今後必須となるでしょう。はたして「早期アクセス」が今後も未完成ゲームを売るためのたんなる"免罪符"となるのか、あるいはインディーデベロッパーたちを手助けする画期的なモデルとなるのか、筆者は今後の動向に注目しています。

 


漆黒アクションRPGついに発売

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タイトル名: 『Darkwood
ジャンル: 見下ろし視点アクションRPG
開発: Acid Wizard Studio
発売: 7月25日(Steam早期アクセス

2013年に初のプレイ映像が公開され、Indiegogoで5万ドル以上の獲得に成功した『Darkwood』の発売が7月25日に決定しました。ポーランドの3人組デベロッパーAcid Wizard Studioが手がける同作は、見下ろし視点型のアクションRPGです。自動生成されるオープンワールド内で食料や武器をあつめつつ生存を目指す。昼間はよくあるサバイバルアクションにみえますが、夜になればなにも確認できなくなるほどの「暗闇」がプレイヤーを包み込みます。『Darkwood』は謎の化け物たちにより崩壊しつつある人類文明を背景としており、ゲームの舞台となる東欧の森では街灯や家屋の明かりにはなかなか出会えません。プレイヤーはモンスターたちの動きが活発になる夜までに、燃料をあつめ火を灯すか家の発電機などを起動させ、敵を撃退する準備を済まさなければならないのです。暗闇のゲームメカニックに馴染むダークで陰鬱とした世界観も魅力となっており、今夏プレイするホラーゲームを探しているユーザーにとっては候補の1つとなりえるでしょう。

 


女子学生チームが送り出す穴掘りRPG

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タイトル名: 『The Hole Story!
ジャンル: ファンタジーRPG
開発: LearnDistrict Inc.
発売: 未定

2013年のCNNの報告では、ゲーム業界で働いている男女比は男性88パーセントに対して女性が12パーセントです。海外では女性のゲーム開発参画にかんするニュースが定期的に報じられています。カリフォルニア州サン・ジョセフに位置するインディーデベロッパーLearnDistrict Inc.は女性開発者がさらにゲーム業界へ参入するべきだとの考えのもと、「Girls Make Games」と呼ばれる女子学生参加のゲームサマーキャンプを毎年実施してきました。第16回目となる今年は『The Hole Story!』が最優秀賞に選ばれ、同作のKickstarterキャンペーンが同スタジオ支援のもとスタートしています。若き考古学者Wendyが主役となる同作では「穴掘り」のメカニックが特徴とされており、穴を掘ることで様々なヒントやアイテムを得ることができるようです。ここ最近ではUbisoftの『Child of Light』が女性開発者が多くふくまれた開発チーム(3人に1人)で製作され、やわらかで幻想的なJRPGインスパイアのタイトルをリリースしていました。彼女たちがどのようなゲームを生みだすのか興味深いところです。

 


学習用オープンワールドMMO

タイトル名: 『Tyto Online
ジャンル: 学習型オープンワールドMMO
開発: Immersed Games
発売: 未定

シミュレーションゲーム『SimCity』には、都市がどのように機能しているかを学ぶことができる学習版『SimCityEDU』が存在します。またスウェーデンのとある学校では2011年に『Minecraft』が環境問題を学ぶ教材として使用されました。近年海外では学習用ゲームの開発やビデオゲームを教材とすること珍しくありませんが、MMOのオープンワールド作品を学習用に作ろうという試みはすくなくとも筆者にとっては初耳です。米国フロリダ州ゲーンズビルのImmersed Gamesスタジオが開発中の『Tyto Online』は、ヴァーチャルワールドで生徒たちがさまざまな問題を学ぶオープンワールドMMOです。ゲームの舞台は科学技術が進歩し、数十億人の人類がべつの惑星へと脱出したはるか未来の宇宙となります。プレイヤーは新人類Tytonianとしてサイロスリープから目覚め、いつの日か地球を取り戻す日がくるまで新惑星でさまざまな問題に取り組んでゆくのです。ゲームは教科ごとにモジュール販売される予定となっており、第1弾にはミドルハイスクール向けの理科教材が収録されるとのこと。熱帯雨林の葉が枯れた理由をみなで調べるクエストや、生態系の動植物をしらべてタグ付けするチャレンジが用意されており、最終的には生徒自身が1つの生物環境を作り上げることになります。現在Kickstarterを実施中です。

 


今週のピックアップは『Darkwood』

 

2013年から漆黒のプレイ映像でひそかに注目をあつめ、予告されていたSteam早期アクセスがなかなかアナウンスされなかった『Darkwood』、ついに今週リリースとなりました。サバイバルホラーとオープンワールドゲームの融合といえば、同じくSteam早期アクセスにて先日リリースされた『The Forest』を思い浮かべるところ。ただこちらは光と闇のメカニックや、セーブやチェックポイントが存在せず死んで周回プレイしていくハードコアなシステムなどがアピールされており、ゲームの根幹部分に関してはかなり完成している予感をさせてくれます。現時点で価格は発表されていませんが、夏にプレイしたいホラーゲームを探しているユーザーはぜひチェックしてみてほしいところです。

 

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初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。