コンソールで加速する『Minecraft』、『大鷲のトリコ』元スタッフらが作る新スタジオ

先週1週間のインディーゲーム関連ニュースと最前線で奮闘するインディータイトルたちを月曜日に振り返る週間連載、Indie of the Week。梅雨入りを果たすも6月は終わろうとしている第36回目は2014年6月第4週(6月23日から6月29日)。今週は相変わらず快進撃を続ける『Minecraft』のセールスデータと、『大鷲のトリコ』などの元スタッフが設立した新規スタジオFriend & Foeが注目を集めました。

先週1週間のインディーゲーム関連ニュースと最前線で奮闘するインディータイトルたちを月曜日に振り返る週間連載、Indie of the Week。梅雨入りを果たすも6月は終わろうとしている第36回目は2014年6月第4週(6月23日から6月29日)。今週は相変わらず快進撃を続ける『Minecraft』のセールスデータと、『大鷲のトリコ』などの元スタッフが設立した新規スタジオFriend & Foeが注目を集めました。

 

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スウェーデンの開発者Markus"Notch"Presson氏が開発し、後に立ち上げられたスタジオMojang下で現在も精力的なアップデートが続けられているサンドボックスゲーム『Minecraft』。Mojangは(売り上げが常に好調なことを考えればそもそも問題はないのですが)『Minecraft』の売り上げのデータに関してオープンなスタンスを取っており、PCとMac版の売り上げは公式サイトでつねにリアルタイム表示されています。記事執筆時点で確認した両機種版の売り上げは1585万7229本。

2010年に登場したアルファ版から約4年間で1500万本以上の売り上げを打ち立てた本作。この売り上げを2012年9月と2013年12月にそれぞれ発売されたXbox 360版およびPS3版の合計がぬりかえました。Mojangのデータ調査および開発ビジネス担当Patrick Geuder Saga氏は、先週水曜日にもTwitter上にて「コンソール版の合計がちょうどPCとMac版を超えた」と報告しました。シリーズ累計では5400万本に到達しつつあるとも伝えています。

iOS/Android向けに配信されているスマートフォン版『Minecraft: Pocket Edition』は今年4月の時点ですでに2100万本の売り上げを突破。各プラットフォームで販売されたバージョンが、2年から3年のスタート差がありながらも、それぞれ1500万本から2000万本と同等の売り上げを記録しているのは興味深いところです。YouTubeなど動画共有サイトで単なるプレイ映像だけでなくCPUの建築ランダマイズ音楽演奏といった様々な動画がアップロードされコミュニティ間でにぎわうムーブメントをみると、もはや『Minecraft』にとってゲーム機はプラットフォームではなく、同作自体が共同体を創造し維持している1つのプラットフォームのようにすら思えてきます。今年後半にはPS4とPS Vita、またXbox One向けにもリリースされる予定となっており、また来年にも『Minecraft』のセールス快進撃のニュースをふたたび聞くことになりそうです。

 

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国内のインディーシーンでは、新規インディースタジオFriend & Foeが立ち上げられ、普段は素通りされがちなインディースタジオ誕生のトピックスにおいて大きなニュースとなりました。キーワードは『大鷲のトリコ』。わずか5名が在籍するスタジオながらも、同スタジオに参加している開発者らが過去に参加してきたプロジェクトは、『大鷲のトリコ』(ただし未発売)にはじまり『Battlefield』や『バイオニックコマンドー』および『Killzone』と、注目をあびるにあたいするビッグタイトルがならんでいます。ただしこれが『大鷲のトリコ』の続報がないこととは無関係であるともしています。ゲーム開発者の人材的流動性については、いまさら語るまでもないでしょう。

それらをふまえ、『大鷲のトリコ』や海外のトリプルA級FPSタイトルの開発に参加していたという彼らが一体どのようなインディーゲームを作るのか、非常に興味深いところです。Friend & Foeでは目下2つのタイトルが開発中で、その1つのiOS『Dangerous Men』は80年代の警官コンビ映画をテーマにしたアクションシューター。もう1つの『Vane』はPC向けのタイトルで、少年が主役の探索型オープンワールドアドベンチャーゲーム。公式サイトでは少年が雷鳴轟く砂漠を走りまわり、巨大な雲が迫りくる大迫力のシーンを収録したgifイメージが公開されています。いかにも『ICO』や『ワンダと巨像』的な童話チックでありながら写実的な世界を描いているようにみえる同作は、ながらく続報のない『大鷲のトリコ』以上にICO Teamファンの注目をあつめる作品となるでしょう。

6月第4週目のニュースはここまで、今週も筆者の個人フィルタを通した最前線のインディーゲームたちを紹介してゆきます。

 

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キモかわウジ虫アドベンチャー

 

タイトル: 『Karma. Incarnation 1
ジャンル: アドベンチャーゲーム
開発: Auralab.ltd
発売: 2014年後半から2015年初頭

海外ゲームと一括りにしても、とくに東欧のゲームは一癖も二癖もテイストが違うものです。ロシア産の『Karma. Incarnation 1』はクラシックなポイント&クリック形式のアドベンチャーゲーム。Pipと呼ばれるキモかわいいウジ虫(Cute-yet-brutal worm)によって形成されるバケモノが、不思議なワールドを旅していくという内容。石や花と会話し、あまつさえ彼らを丸呑みしてしまうような、奇異なPipを主役とする同作は、考え方によっては「魅力的なキャラクターでプレイヤーを引っ張る」日本のキャラクター主体ゲームと同じです。ただオールドクラシックなアドベンチャーゲームをうたいながらも、少しのあいだだけ精神の世界をのぞきみる"Astral Vision"という多少ユニークなシステムが搭載されており、モノクロ感の強い同作に極彩色の風景がつけくわえられています。現在Indiegogoにてクラウドファンディング実施中。

 


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19世紀2人っきりの火星への旅

 

タイトル: 『39 Days to Mars
ジャンル: サバイバルCo-op型ADV
開発: Philip Buchanan
発売: 2015年

一見したところでは上記で取り上げた『Karma. Incarnation 1』のような古典的アドベンチャーゲームです。質素ながらも味のあるグラフィックを特徴としてるようにみえますが、『39 Days to Mars』はここ最近流行のCo-op型サバイバル要素をふくむという斬新なアドベンチャーゲーム。パズルアドベンチャーにサバイバルゲームの資源管理要素をからませています。プレイヤーは19世紀に飛びたつ宇宙船"HMS Fearful"のパイロットである"Slbert Wickes"と"Clarence Baxter"を操作します。石炭パワーで動く不安定な宇宙船と、キャラクターたちの睡眠や食事、および退屈しすぎて死なないようにするための娯楽を管理し、火星への困難な39日間の旅を成功させなければなりません。ユニークなのはアドベンチャーゲームでありながらもゲームプレイは短いセッションで終了する、「コーヒーブレイクタイムの作品」であると銘打たれている点。『Portal 2』でも見られたようにパズルゲームのCo-opには一度プレイしてしまうと解法がわかってしまうという問題がつきまといますが、「見知らぬユーザーと協力するスチームパンクな宇宙旅行がどのような物語を描くのか?」というウリ文句は魅力的です。

 


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ディストピアSFで描く王道系RPG

 

タイトル: 『InSomnia
ジャンル: ディストピアSF-RPG
開発: Studio MONO
発売: 2015年Q4

米国のスタジオMONOが開発を進めている『InSomnia』は、スチームパンクならぬディーゼルパンクをテーマにした濃厚な世界描写を持ち味とする、見下ろし視点型RPG。ゲームの舞台は"箱舟"として知られる巨大宇宙ステーション。人類の子孫である"Noman"の1人としてコールドスリープから蘇ったプレイヤーは、20年前に謎の移住民によって箱舟になんらかの変異が起きたことを知り、その謎と400年前より語られてきた箱舟が目指す"脱出地点"の真相を解き明かしていくことになります。性別から能力およびプレイスタイルまでキャラクターを自由にカスタマイズできること、冒険を通じてスキルやアビリティをチョイスすること、自動生成されるイベントやミッションがあること。そんなよくあるアクションRPGを魅力的に見せているのは、根底にあるポストアポカリプス色濃いアートワークやダークでアンビエントなサウンドトラック、そしてハイクオリティで灰色の3Dグラフィックです。現在はKickstarterにて開発資金7万ドルの獲得を目指すクラウドファンディングを実施中。

 


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復讐の時間停止2Dアクション

 

タイトル: 『Timespinner
ジャンル: 時間停止2Dアクション
開発: Lunar Ray Games
発売: 2015年Q4

『Timespinner』は『InSomnia』と同様に、クラシックなタイトルにインスパイアされた作品ながらも、過去の名作たちに見あうドットグラフィックやアニメーション、ビットサウンド、そして小気味のいいジャンプアクションと操作感で存在意義を示しているタイプの2Dアクションゲームです。プレイヤーは惑星"Winderia"にて生まれた主人公"Lunais"を操作し、故郷を破壊した機械帝国への復讐を目的とします。ゲーム全体を通して「時」がテーマとなっているのが特徴。Lunaisは時空ポータルを通じて機械帝国の歴史をさかのぼることで勢力の弱体化を目指します。また、時間を止めるギミックもあります。画面左上にある砂時計のゲージ分だけ時間を止められるというシステムで、時を止めて敵の攻撃を避けることから、止めた敵を踏み台にするようなパズルにまで使えるものです。現在はKickstarterにて5万ドルの資金獲得を目指すキャンペーンを実施中。Steam Greenlightにも登録されています。

 


今週のピックアップは『39 Days to Mars』

バンドZmeiradugaによるアンビエントなトラックを有する『Karma』や、筆者が大好きなディストピアワールドが展開される『InSomnia』など、個人的に惹かれるタイトルが多かった今週。しかしあえて1本をあげるとするならば『39 Days to Mars』です。公開された1分間にも満たないトレイラーでは、どうやっても現実だと動きそうにないチープなSFマシンがズラリとならび、他方、かわいらしいキャラクターたちがチョコマカと動き回ります。ようするに「キュート」。サバイバルといえば猫も杓子もゾンビかモンスターが登場するオープンワールドMMOという中、こうしたかわいげのある協力型のサバイバルゲームは斬新ではないでしょうか。

 

Shuji Ishimoto
Shuji Ishimoto

初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。

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