BitSummit 2014の国産インディーゲーム3選 『野犬のロデム』と『Fallendom』と TPM.CO と

今週は3月7日から3日間、京都のみやこメッセにて開催されたインディーゲームセッション BitSummit 2014 で多くの魅力的なゲームに触れることができたので、その中からいくつかのタイトルをピックアップ。筆者は現在インディーについては海外作品をメインに追っておりますが、今回は未知のゾーンであった国産タイトルにあえて絞って3本を取り上げます。

毎週筆者 ishigenn が気に入ったインディーゲームをピックアップしていく【Indie of the Week(IotW)】。今週は3月7日から3日間、京都のみやこメッセにて開催されたインディーゲームセッション BitSummit 2014 で多くの魅力的なゲームに触れることができたので、その中からいくつかのタイトルをピックアップ。筆者は現在インディーについては海外作品をメインに追っておりますが、今回は未知のゾーンであった国産タイトルにあえて絞って3本を取り上げます。

 


やけんシミュレーション『野犬のロデム』

 

 

『ボコスカウォーズ』の製作者でありイタチョコシステムの運営者、そしてなぜか当日はブースで一切言葉を発さず犬の格好で踊っていたラショウ氏と、『僕は森世界の神になる』のピグミースタジオが手がけるのが、PlayStation Mobile 向け新作『野犬のロデム』です。

同作はイタチョコが Macintosh を対象に発売した「やけんシミュレーション」こと『野犬ロデム』という1990年代の作品のリメイク。プレイヤーは小さな自然世界に打ち捨てられた野犬ロ デムを操作し、餓死せず外敵に倒されずで最長生存日数に挑戦したり、どう見ても何かのクリーチャーにしか見えない太陽が落とす原素を食べ、頭から生えてく る植物を開花させ収集アイテムを集めていったりといった目標をクリアしていきます。

ただ遊び方は基本的に自由となっており、あえて言うならば極上の奇想天外な「ラショウワールド」とやけんシミュレーションをベースに楽しむのが、本作をプレイする正しいスタンスの1つです。

PlayStation Mobile 版ということでタッチ操作となる同作ですが、実際に触ってみるとタッチ&ポイント系のアドベンチャーゲームとしてかなり面白い部類です。ロデムは顔を触れ ると5種類の表情に変化して「食べる」や「攻撃する」といったアクションが可能で、またお座りさせてからトイレの世話をしたり、伏せをさせて休憩させたり といった各種行動もフリック操作で行えます。その強烈な世界観に依存しているだけでなく、食事や排泄や時には戦闘を行うためロデムをテンポ良くタッチ操作 で生き延びさせていく、ロデムの多彩なアクションを指で次々と描いていくのがハマるリズム感を生み出しているのです。

なお製品版では野犬を引き連れて強敵に向かったりと「やけんシミュレーション」的な要素も本格的に導入され、ラショウ氏の作品である『ボコスカウォーズ』の、移動時に引っかかるような「半オート」的なもどかしい要素も導入されるとのこと。同作は今年春にリリース予定。

 


ずっとプレイできるゼルダ『Fallendom』

 

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国内のサークル PlatineDispositif が昨年末コミックマーケット85にて頒布したのがダイズロールアクションゲームと銘打たれた『Fallendom』。PlantieDispositif は2004年にワンダースワン向けに完全受注生産で発売された『DicingKngiht』のスタジオで、開発ブログの話を 見る限りでは同作のシステムを使ったゲームを Windows で出すため生まれたのがこの『Fallendom』の模様です。BitSummit でプレイした限りではダンジョン探索やローグライクと 2D アクション RPG を組み合わせた内容で、開発者から聞くことができた「ずっとプレイできるゼルダ」とのフレーズはまさに的を射ています。

『Fallendom』の舞台は惑星リーフにあるオーラム大陸北部の地カシオペア。ここ数年ほどこの地域は太陽の神殿の加護が弱まり気温が下がり始 めており、その原因をマレビトの戦士カカが調査することになるというのが物語の始まりです。プレイヤーはカカを操作して様々なダンジョンやロケーションに 潜り、加護の力の源である「陽光の指輪」を新たにを探し出すことが目的となります。

ゲームは剣と盾と最大4つまで持てるアイテムを使用した2Dアクションと、体力や満腹値の上限値が上昇するレベリングおよび武器のステータスを上昇 させる宝珠の獲得といったRPG的な要素。さらにアイテム収集やマップ自動生成と、死亡したらダンジョン外に戻されるというダンジョンローグライクを組み 合わせた内容。『DickingKnight』から続き、ダメージや回復量などの乱数をサイコロで表現する独自のシステムも採用しており、例えばアイテム 「スペースサイコロ」を使用すればその後のサイコロの目を予知することが可能で、それに合わせてアイテムを使用したりアクションを起こすという戦略性がユ ニークです。

海外で言えば最近では『Dungeon of the Endless』や『Legend of Dungeon』 など多数のジャンル作が出ていますが、国内でもこんなローグライクな作品があるんだなと驚かせてくれた『Fallendom』は、開発者の話によれば今後 は新規エリアなどを含む拡張やアップデートも行っていく模様。個人的にはより独特なサイコロのシステムを全面に押し出して、いわゆる運ゲーム寄りの 『FTL』のような高難易度化した『Fallendom』も見たいと切望しており、今後も続報を追いたいところ。『Fallendom』は国内では各委託 書店にて発売中で、筆者は今はじめてメロンブックスの会員登録をしています。

 


初代 MSX 実機で動かす「TPM.CO SOFT」のミニマルゲーム

 

 

TPM.CO SOFT」は1980年代に登場したパソコン共通規格 MSX1 を今もなお使い続けゲームをリリースしている国内スタジオ。今回はすでにリリースされている3つのゲームがプレイアブル展示されており、その中でも1998年にリリースされた『タロティカ・ブードゥ』 を見た時はそのユニークなビジュアルに魂を吸い込まれ、ブースへと足が勝手に動いてしまいました。海外でも2Dドットビジュアルのゲームはいまだ主流です が、レトロと一言で言い表せない今まで自身が経験したことのないエネルギーを感じるアニメーションは、開発者曰く「MSX1 のスクリーン2に描いた絵はヘロヘロでしょぼいものだが 動かすと とたんに生命が宿る」。

ゲーム内容は戦闘と謎解きを組み合わせたトップビューのアドベンチャーRPGで、内容自体はシンプルなもののそこかしこに面白いアイディアが詰まっ ているという印象。例えば謎を解いて扉を開いていくごとにマップが広がっていく様子は「新しいロケーションを解放した手応え」を如実に感じられるし、攻撃 と防御を上下ボタンのみで操作する戦闘シーンでは「敵のパターンを読み攻撃を避けて当てる」というアクション系ゲームの基本エレメントのみが抽出され極上 のリズム感で調整されており、まるで良い酒をストレートで飲み干したような満足感が得られます。面白いと唸るアイディアが詰まっているし、それでいてシン プルなゲームであるから、余計なものが積み込まれたような漠然とした印象は受けません。

ほかにも一定方向に突き進むプレスマシンを順番に動作させていくアクションパズル『GUIE INDUST』や、敵パイロットを戦闘機に乗せて道を切り開いてくユニークなパズルシューティング『GRAY GROFA』などがブースには展示。どれも面白かったですが、やはり『タロティカ・ブードゥー』の素敵なビジュアルと実際にプレイした面白さは魅力的で、売っていた技術書付きフロッピーディスクソフトをその場で購入してしまいました。

MSX1 で動作する言わばレトロジャンル志向のゲームではあるものの、これは海外で意外に受けるんじゃないだろうか? とリリースの予定があるか開発者の方に話を聞いてみましたが、実際 BitSummit 会場でも意外に海外から来たユーザーにも受けが良かった模様。面白さの原石が詰まった袋のような「TPM.CO SOFT」の作品は、海外でもレトロゲームファンだけじゃなく、自分のような新しい世代のインディーゲーム好きからも新鮮に見え逆に支持されるかもしれません。

 


 

海外のインディーゲームファンとしては、ティーザーサイトが登場していた謎のアドベンチャーゲーム『desolate』や、トレイラーが公開済みだったメタリックリズムレーシング『Thumper』などをお目当てにしていた。 先日にも正式アナウンスされていた『Nova-111』はターンベースとリアルタイムを融合させた新しいメカニックが独特で、見る前と触った後とでは印象がガラリと変わる。
海外のインディーゲームファンとしては、ティーザーサイトが登場していた謎のアドベンチャーゲーム『desolate』や、トレイラーが公開済みだったメタリックリズムレーシング『Thumper』などをお目当てにしていた。

先日にも正式アナウンスされていた『Nova-111』はターンベースとリアルタイムを融合させた新しいメカニックが独特で、見る前と触った後とでは印象がガラリと変わる。

 

さて海外のインディー開発者や、やや大手かメジャーのスタジオが出すインディー的立ち位置の作品などお目当てにも出会えた BitSummit 2014ですが、日本のインディーゲームにおけるポータル的な記事を発信できないかと考えていた中で、こういった国内で根付く開発者たちの作品に出会えた のは大きな収穫でした。筆者の中におけるインディーゲームの総体的な面白さとは、玉石混じった中から素晴らしいタイトルに出会えた時の喜びが占める割合が 大きく、今後国内のインディーおよび同人ゲームの情報もどんどん集めていきたいと思っているところであります。

Shuji Ishimoto
Shuji Ishimoto

初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。

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