『FarSky』一人称視点サバイバルゲーム、次の舞台は「海底」

さて第20回という節目を迎える今回は、ここ最近ベータ版がリリースされたタイトル。「海底が舞台」というその独自色に注目してしまう『FarSky』をピックアップ。サバイバルアクションゲームの名作となるかもしれない、そんな底知れぬ海の底のようなポテンシャルを感じさせる作品です。

毎週筆者が駆け出しや無名のインディーゲーム達に恋して好き勝手に紹介していく【Indie of the Week(IotW)】。さて第20回という節目を迎える今回は、ここ最近ベータ版がリリースされたタイトル。「海底が舞台」というその独自色に注目してしまう『FarSky』をピックアップ。サバイバルアクションゲームの名作となるかもしれない、そんな底知れぬ海の底のようなポテンシャルを感じさせる作品です。

近づくと姿を隠してしまうイソギンチャクから人間を襲うサメまで、様々な水性生物が生息する海底が舞台となる『FarSky』。プレイヤーが操作す るキャラクターは、女性オペレーター Madison のサポートのもとなんらかの探索を行っていたらしい男性潜水士 Nathan です。操作していた潜水艇が故障してしまい海底へと沈み落ちてしまった Nathan が、ひとまず Madison の指示で海底基地を探し、地上への脱出を目指すというプロローグから物語は始まります。

ゲー ムの目的は四散してしまった潜水艇のパーツを探しだし地上への生還を目指すこと。 通常の「Adventurer」、敵が強化されるほかパーツがマップ上に 表示されない「Survivor」、 そしてゴールを設定せず自由に探索が行える「Sandbox」と3種類のシングル専用ゲームモードが用意されている。
ゲー ムの目的は四散してしまった潜水艇のパーツを探しだし地上への生還を目指すこと。

通常の「Adventurer」、敵が強化されるほかパーツがマップ上に 表示されない「Survivor」、

そしてゴールを設定せず自由に探索が行える「Sandbox」と3種類のシングル専用ゲームモードが用意されている。

 

自動生成される深海で拠点となる基地を構築し、様々な道具でアイテムを採取。夜になり海底が暗闇に覆われる前に水中銃などの武器を作り敵から身を守 るという、サバイバルゲームに『Minecraft』にも似たデザインを加えた同作。一方でその海底という舞台を上手く用い、ゲームに様々な固有のメカ ニックやシステムを導入しています。例えば誰もが思いつくであろう「酸素」は『FarSky』ではもちろん有限のリソースの1つ。探索すると徐々に減って いきゼロになると Nathan は窒息死するため、ゲーム中は海底を探索しつつ残量にも気を使い、尽きそうになれば酸素供給が唯一可能な基地に戻らなければなりません。

またほかにも本作最大の特徴なるのが「海底断層」。『Minecraft』ではキノコやジャングルといった特定の地域である「バイオーム」が繋ぎ合 わさるようにして地形を生成しますが、『FarSky』ではかわりに自動生成される地形が一定区間ごとに激しい「高低差」を持っており、その境目に崖のよ うな「断層」が配置されています。この崖から滑り落ちてしまうと、Nathan は上層部へと辿り着けるルートを見つけない限り自力で脱出することがほぼ不可能になってしまいます。たとえばサメと戦っているあいだに足を踏み外し下層へ と落ちてしまうなどのアクシデントに遭遇してしまうと、運が良くない限り死を免れることはできず、回収していたアイテムは全てロストしてしまうこととなり ます。

他にも海中ということでジャンプの挙動はかなり緩やか。ジャンプキーを長押しすると、上方向へと最大5回ほど上昇することが出来ますが、非常に高い 崖を登り切るほどの上昇力はありません。また『FarSky』では海中で魚を殺したり、Nathan が傷つくと血が流れだす「流血システム」も存在。血の匂いに誘き寄せられた強敵のサメがプレイヤーに襲いかかります。

 

 

このゲーム何が最も面白いかと言えば、サバイバルゲームに必須である「生への恐怖感」を「海底」のものへと置き換えている点です。『FarSky』 はたたフィールドを水色に着色しただけの 3D アクションゲームではありません。酸素が尽きたら死んでしまう、足を滑らせたら深海に落ちて脱出できなくなってしまう、肉食魚の大軍やサメに襲われると為 す術もなく喰い殺されてしまうなど趣向を凝らした「恐怖感」を、「海底」という1種のテーマにて上手くまとめ上げています。この恐怖感と各種機器の表示 メーターのような UI などが渾然一体となって「海底世界感」を生み出しており、海の中の息苦しさや閉鎖感でプレイヤーを虜にしてしまうのです。

開発を担当しているのは Tim Spekler なる人物で、スタジオ名はシンプルにその名も Farsky Interactive。ゲームはすでに公式サイトにてベータ版が 10ドルにて発売されており、2014年春には正式リリースを迎える予定とのことです。先に『Minecraft』が示したように、今後はアップデートに て様々なフィーチャーが登場すると思われる『FarSky』。輝かしい過去が見当たらないデベロッパーから、こういった興味深い作品が出てくるからイン ディーは面白い。連載20回の節目に再び【Indie of the Week】のテーマを思い起こさせてくれた作品であると共に、上手くハマればヒットを予感させる未来の名作候補を今回はご紹介しました。

Shuji Ishimoto
Shuji Ishimoto

初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。

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