Global Game Jam 2014 作品ピックアップ

毎週筆者の脳みそに突き刺さった未発売やヒット前のインディーゲームを紹介していく【Indie of the Week(IotW)】。今回は1月24日から26日まで開催された Global Game Jam 2014のタイトルをほんの少しだけ遊んでみたので、そのなかから思わず身震いしたものをピックアップしていきます。

[2014/02/03 19:00 追記]
GGJ2014のテーマの主を「アナスイ・ニン」としていましたが「アナイス・ニン」の誤りでした。
大変失礼いたしました。

毎週筆者の脳みそに突き刺さった未発売やヒット前のインディーゲームを紹介していく【Indie of the Week(IotW)】。今回は1月24日から26日まで開催された Global Game Jam 2014のタイトルをほんの少しだけ遊んでみたので、そのなかから思わず身震いしたものをピックアップしていきます。

2009年から開催されている Global Gaming Jam は、開発者がチームを組み数日の限られた時間内で1つのゲームを完成させるというゲームジャムイベントの1つ。GGJ はゲームジャムの中でも最大規模を誇り、今年は70以上の国におよぶ480箇所以上の地域で催され、国内でも大阪や京都や東京などの会場にデベロッパーた ちが集いました。

2014年の GGJ で作り上げられたゲーム総数は公式サイト上にて確認するだけで4292作品。全てを遊ぶと来年の GGJ がやってきてしまいそうなので、今回は全体の1パーセントにも満たない20数本のプレイ済みタイトルを取り上げ、その中でも気に入った5本を詳しく紹介し ていきます。どれも直感気味に選んだタイトルばかりなので、良作に出会えていなかった場合は筆者の運が無いということでご容赦を。なお2014年のテーマ はフランスの小説家アナイス・ニンの “We don’t see things as they are, we see things as we are.” という一節となっています。

 


■動的影絵パズル『Projective』

 

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パズルのピースを組み換え物体や文字の輪郭を作り出す「シルエットパズル」は温泉宿の一室にもよくある遊びですが、『Projective』 はパズルのピースではなく、遊び手であるプレイヤー側が移動して正解のシルエットを見つけ出すという逆転の発想を用いました。ゲームは多数のオブジェクト が配置された部屋の中から開始し、プレイヤーは部屋を移動してあっちを見たりこっちを見たりしつつオブジェクトを重ねあわせ、左側に表示される写真どおり に見えるシルエットを探し出します。新鮮なパズルメカニックと無駄のないストイックなグラフィックが心地よいタイトルです。

ゲームを開発したのは韓国のゲームデザイナー Jay Jaewoo Jeon 氏と Jake Jonghwa Kim 氏。前者の Jeon 氏は過去に時を巻き戻したり巻き戻すことが出来る『VCR』というユニークな一人称視点パズルアクションがメディアに取り上げられたこともあり、今後注目すべき開発者の一人となるかもしれません。


■本心を覗くタイピングゲーム『I am a brave knight』

 

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コスタリカの3人組チームが創りあげた『I am a brave knight』 は、心の声を対象ワードにしたユニークなタイピングゲームで、プレイヤーは1人の男性の一生をタイピングを成功させつつ追うこととなります。ゲーム中は入 力するワード(心の中に浮かんだ言葉)と実際の文章(表面上の会話)が別々に表示され、例えばある騎士が “I am a barave kanight.(私は勇敢な騎士だ)” と喋る文字列に対し、プレイヤーが入力するワードは “DEATH(死)” で、この表現によって勇敢な振りをしている騎士が実は死を恐れている人物であることが理解できるというわけです。もちろん表面上の言葉が本心の時もあり、 プレイヤーが入力したワードとセンテンスの対比が非常に面白いアーティスティックな心くすぐる作品といえるでしょう。

 


■周波数チューニングアクション『Resonance』

 

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サイケデリックなアートワークを用いたタイトルも多数登場した Global Gaming Jam 2014 において、カナダ・モントリオール会場の開発チームはそのグラフィック表現をゲームのメカニックに上手く沿わせた2Dアクションゲーム『Resonance』を48時間で作り上げました。『Resonance』はジャンプ2Dアクションでありながらスクロール権はプレイヤー側にあり、Q / E キーでステージの表示領域を移動させていきます。

特徴的なのはスクロールした度合いによりステージ上の足場が現れたり消えたりする点で、プレイヤーはまるでラジオでお目当ての局の周波数を探ってつ まみを回転させるようなプレイフィールを得ることになります。ノイジーなサウンドと音波の世界を表現した極彩色のグラフィック、そしてゲームのメカニック が上手く融合していると言えるでしょう。

 


■子供の頃を覗き見る2Dアクション『Iris』

 

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なにもかもが可能性に見えた子供の頃の精神も成長するにつれ様々な重圧がのしかかり、現実世界は実際のそれ以上に悪く見え、未来などもう無いかと思えてしまうことがしばしばあります。そんな憂鬱な大人の世界から1つの目を介して子供時代を覗きこむ『Iris』は、エモーショナルなメッセージ性を混ぜ込みつつもユニークなゲームメカニックを搭載しました。

プレイヤーはマウスにて操作する「目」を通してステージ上を覗き見ることで、絶望的な大人の世界を描いたステージを、可能性で溢れていた子供の頃の 世界へと戻すことが出来ます。大人が作りがちな「壁」はまだ何も出来上がっていない「骨組み」へ、空を飛び全てを襲う「地獄の火の鳥」は可愛らしくさえず る「小鳥」へ。テーマとゲームプレイが高い位置で完成している『Iris』は、テキサス州オースティンの2人組チームが開発を担当しています。

 


■性に興味津々な女の子の人形遊び『how do you Do It』

 

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河川敷に捨てられたエロ本を拾ったり、友人間でAVを貸しあったり、学生になって勇気を出して風俗サービス店へ行ったり、小学生1年生の頃に駐車場 の奥底に山ほど捨てられていた人妻SMテーマの成年向け雑誌で性癖を歪めたり。青い性というのは本人がいたって真面目ゆえかどこか間抜けな雰囲気が漂うも のですが、ニューヨーク会場のチームが作った『how do you Do It(それってどうやるの)』はそんな空気感をよく捉えています。ゲームは大人の恋愛に興味津々な女の子が友達から聞いたハグやキスなどをの行為を2つの人形で再現するというもので、にじみ出る青臭さが滑稽かつ微笑ましくもあります。

 


■ほか遊んだゲームたち

 

 

Guess The Art』: ハンガリー・ブタペストのゲーム。絵を見て多くの人が予想するであろうタイトル名を当てる
Mushroom』: マッシュルームな幻覚3D空間探索ゲーム。Oculus Riftに対応
Spiral』: 螺旋の中をとにかく突き進むゲーム。光の玉に触れると加速する
Ant Simulator』: 蟻のシミュレーターと銘打たれているものの、作者いわく完全に未完成とのこと
PerspectiveThisWayDown』: 重力の方向を変えることが出来る3Dジャンプアクション
Apartment 213』: クリック移動式のアドベンチャーゲーム。目標を達成するとキャラクターが入れ替わっていく
Atari Hacker』: その名の通りアタリハードをハックしていくコマンド入力ゲーム
胡蝶夢』: テキサス州チームのゲーム。蝶に変身できる2Dシューティングアクション
The Package』: 小包を届ける素性不明の少年が道中にてナイフを拾うアドベンチャーゲーム
Patches and Fudge』: 同じ世界を異なる視点で見る2人のキャラクターを入れ替えつつ進む2Dアドベンチャー
Perception』: 同じ世界を異なる視点で見る3人のキャラクターを入れ替えつつ進む3Dアドベンチャー
cmyk』: 3体の銅像を操作して進む2Dアクション。それぞれの銅像が見ているオブジェクトが実体化する
BigLady..Bug』: 太った女の子と虫が行く2Dアドベンチャー
I Wish I Could Fly』: ブランコに乗る女の子と移りゆく季節を眺める作品。季節の中に隠れたオブジェクトを探していく
The Emotional Core of Elephantopus』: 深海に住む「エレファントプス」が友人を探しに行く2Dアクション
Sister’s Journey』: 洞窟の中で目覚めた姉妹が出口を探す2Dアドベンチャー。SAN値のようなシステムが導入されており、姉と妹で恐怖する対象が違う
Our Way』: 車に乗る2人の男女の会話を上手く組み合わせていくアドベンチャーゲーム
Senseless Runner』: 視覚や聴覚、触覚などを失うとゲームプレイがどのように変化するのかにスポットしたアーケードランナーゲーム
Boris Moskvitch Psychonaut』: フザけた世界観が心地いいかもしれないアーケードカーアクション。ゲーム的な意味でクラッシュが多発する
MoonLife』: クラッシュしてほぼ遊べなかったゲーム。アートワークはかなり良い雰囲気を持っているだけに残念
Penis Candy Crush』: フニャチン。キャンディ。ナチス

Shuji Ishimoto
Shuji Ishimoto

初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。

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