失われた時を巡る2DアクションRPG 『Hyper Light Drifter』

私、ishigenn が今週注目したインディータイトルをご紹介するのが「Indie of the Week (IotW)」です。第1回はロサンゼルスの新スタジオ Heart Machine が手がける2DアクションRPG『Hyper Light Drifter』。Kickstarter のクラウドファンディングでも大きな成功を収めています。

私、ishigenn が今週注目したインディータイトルをご紹介するのが「Indie of the Week (IotW)」です。第1回はロサンゼルスの新スタジオ Heart Machine が手がける2DアクションRPG『Hyper Light Drifter』。Kickstarter のクラウドファンディングでも大きな成功を収めています。

当初2万7千ドルを目標としていた同作ですが、残り10日間弱を残し現在すでに37万ドル(およそ3,700万円)を獲得。数々のストレッチゴールを突破し、PC/Mac/Linux に加え PS4/Vita 版のリリースも決定。開発は PS4/Vita 向 けタイトル『Samurai Gunn』を手がけている Beau Blyth 氏がフレームワークなどプログラム面で、またコンポーザーには『Fez』の音楽を担当したことで知られる Disasterpeace 氏と、海外インディーでは知名度のあるメンツが参加していますが、それを考慮した上でもたった5人のメンバーが所属するインディースタジオの第1弾タイトルとしては華々しい道程を進んでいます。

 

終焉を迎えた歴史から血塗られた黒い過去が残響している、Drifterが救いの手を差し伸べることは出来ないが聞こえてくる
終焉を迎えた歴史から血塗られた黒い過去が残響している、Drifterが救いの手を差し伸べることは出来ないが聞こえてくる

タイトルにもある「Drifter」とは、忘れ去られた知識、失われた技術、そして消え去った歴史を集めるコレクター達のこと。本作の主人公もこの Drifter の1人なのですが、彼は不治の病に冒されており、「忘れ去られた時の島」を探索して病気を治癒する方法を探しだすことになります。

Heart Machine 曰く、『Hyper Light Drifter』は8bitや16bitの名作の血脈を受け継ぎつつ、現代的なメカニックとデザインでよりスケールを大きくした 2DアクションRPG です。深き森を抜け、浮遊する巨大建造物を探索し、朽ちた遺跡で秘宝を探し、無数の敵を切り裂き、肉片と機械で出来たベヒモスを打ち倒す。開発者が脳内に長年溜め込んできたそんなダークファンタジーワールドが、暗く不気味なビジュアルと荘厳な風景により美麗に描かれます。

失われた歴史を集めるコレクター Drifter といった魅力的な設定や、愛嬌がありながらもどこかダークな雰囲気をまとうビジュアルは、『Hyper Light Drifter』が Kickstarter にて大きな成功を収めている要因の1つでしょうか。開発者は「宮崎駿監督の映画より美しいアニメーションとデザインが世界に命を吹き込むことを学んだ」と述べ、各キャラクターはその背景設定から全てを鼻歌でも歌いながら目を細め愛おしく作り上げたと語っています。脳内で妄想した世界を描き上げるのがそもそも好きな人物のようで、Kickstarter で展開する際にすでに確立した世界観とアートを提示できたのも頷けるところです。

 

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ゲームプレイは「『神々のトライフォース』と『Diablo』の良い部分に、電光石火の戦闘、より良い操作性、豊富な戦略オプション、数えきれないほどの知性的な敵たち、そして異様な過去を持つ巨大なワールドを全部付け加えたもの」であると記されており、また武器アップグレードや装備品の収集といった RPG 要素も存在します。メカニックは取っ付き易いものの習熟すること難しく、後半の難所を超えるにはプレイヤーにさらなる腕を要求するようなチャレンジ性を有しているようです。

アクション面ではエネルギーなどを消費することなく使用できる Hard Light (またゲーム内では Solid Light としても知られる)の剣がメインウェポン。Light Rail Pistols や Heavy Rifles といった銃火器に加え、強力な爆発物や敵を感知する Seeker Drones などのセカンダリ武器を駆使して敵と戦っていきます。また Drifter の背に着いて来る小さき相棒スプライト・コンパニオンも頼もしい存在で、インベントリ管理やシールドの維持、隠れた道の発見や暗いステージでのライト役など様々な役割を果たしてくれます。

そのほかアクション面で重要な鍵を握るフィーチャーは「ディフェンスシステム」と「ダッシュモジュール」でしょう。前者は数秒間のあいだ全ての攻撃を遮断するリチャージ式の Hard Light Diamond シールドで、正確なタイミングで発動すれば追加ダメージを乗せて攻撃を反射できるという代物。また後者はモジュールを搭載した装備品を身につけるとダッシュアクションが行えるというシステムで、隙間や割れ目を飛び越し特定のブロックや瓦礫を壊すほか、戦闘面では敵の攻撃を回避したり、あるいは突き抜けて敵をスタン状態にしたりすることができます。

多種多様な武器装備を駆使しシールド&ダッシュで敵の攻撃を避けていく高速戦闘は容易く脳内に描けるところ、そしてなによりも「敵の一撃を避けるか防いで攻撃する」という基本デザインが明確化されているアクションゲームは明快に楽しいものです。もちろんダッシュ操作のフィーリングなど各種調整は今後必要にはなりますが、すでにある程度の期待は持ってよいタイトルとなっているのではないでしょうか。


『Hyper Light Drifter』は2014年にまず PC 向けにリリース予定となっており、最低でも2ヶ月前からはベータテストが実施される予定とのこと。Kickstarter のクラウドファンディングキャンペーンは東部夏時間の10月12日午後3:38まで実施されているので、ゲーム映像に時を奪われてしまった人はぜひ pledge してみましょう。

Shuji Ishimoto
Shuji Ishimoto

初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。

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