夏の田舎道をただ走る、事故を起こせば死ぬ。 カーシミュレーションゲーム『My Summer Car』

本作は車の整備・改造や運転にフォーカスした一人称視点のリアルカーシミュレーションゲームだ。

発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆくIndie of the Week。第92回目は、『My Summer Car』を紹介する。本作は車の整備・改造や運転にフォーカスした一人称視点のリアルカーシミュレーションゲームだ。舞台は90年代、夏のフィンランドのとある田舎町。特に目的は課せられず、プレイヤーは自由に車を乗り回し、気だるげな夏の田舎を散策することができる。

一定のワールドの中を車で走り回る作品といえば、2006年に発売された『Test Drive Unlimted』などを思い起こすところだ。ただし、本作はよりリアリズムが強調された作品であり、車を運転する際の良い点だけでなく、悪い点も含まれている。「ローグライク」や『ウィザードリィ』などに存在する”permadeath(永久死)”が搭載されており、うっかり事故を起こして死んでしまうと、そこで終わってしまうのだ。好きなBGMをかけて運転する楽しさと、気を抜いたら事故を起こし最悪死んでしまう危険さが、『My Summer Car』には混在している。

開発陣いわく、通常時の車の最高スピードは下り坂で165km/hだが、80km/hでも”ホラー”だという。エンジンをチューンアップすれば200km/hまで出すことも可能だが、もちろん事故を起こせばプレイヤーは死亡し、改造車も消滅してしまう。

 

 

飲酒運転もできる
飲酒運転もできる

ゲームプレイ映像を見るとグラフィックはそこまでリッチではないが、ドライブシミュレーターを名乗るだけあって、車のディテールはかなり作りこまれている。ボンネットを開くとエンジンが積まれており、このエンジンはダメージを受けることでパフォーマンスが変化する。パーツや工具を使用して、車体をかなり細かな部分までチューンアップすることが可能で、カーステレオ用のサブウーファーを積むこともできる。車内の各計器も実際に動作する。このほか、燃料だけでなくブレーキオイルや冷却液、またキャブレターの管理なども必要になる。実施に車を所有すると面倒に感じる部分も再現することを目指しているようだ。

一見すると牧歌的なゲームに見えるかもしれないが、あくまで『My Summer Car』はリアリティ、ありのままの車の運転にこだわった作品である。もし乾いた喉を潤したいのなら、たとえ車の運転中でもビールを飲むことだってできる。もちろん酔って事故を起こせば、それは死という形でプレイヤーの責任になる。善悪すべての概念が詰まったカーシミュレーションゲーム、それが『My Summer Car』だ。

 

エンジン内部。工具で改造や修理が出来る。開発者いわく「かなり難しいハードコアな車パズル」
エンジン内部。工具で改造や修理が出来る。開発者いわく「かなり難しいハードコアな車パズル」

『My Summer Car』は現在、内部テスター向けに公開されており、ダウンロードはできない。今後プレイアブルデモや早期アクセス版がリリースされる予定だ。アイディア段階ではあるが、ラジオチャンネルや、車の窓に貼るステッカー、損傷システムの拡張や、ドラッグレースイベントの搭載、さらにはサウナや野生動物の登場などが、公式サイトでは披露されている。

 

Shuji Ishimoto
Shuji Ishimoto

初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。

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