リズムゲームとSFワールドが交錯する日

Gamers Geographicから読んでくださっている物好きな読者も、AUTOMATONにアクセスしてみたらふとこの記事が目に入ったというニューカマーもようこそ。発売前や流行前のインディータイトルを中心に、筆者が胸打たれた作品をピックアップしていくのが毎週月曜日[Indie of the Week]です。

Gamers Geographicから読んでくださっている物好きな読者も、AUTOMATONにアクセスしてみたらふとこの記事が目に入ったというニューカマーもようこそ。発売前や流行前のインディータイトルを中心に、筆者が胸打たれた作品をピックアップしていくのが毎週月曜日[Indie of the Week]です。

AUTOMATONでは同連載も装いあらたに再スタート。第32回からは毎週登場した複数のタイトルとインディー関連のニュースをコンパクトにとりあげてまいります。おそらくこれさえ読めば今週のインディー最前線がわかる……かもしれません。ただし AUTOMATONが意見の発信をテーマとしているように、筆者自身の嗜好フィルターがある点はGamers Geographicから依然変わりません。なお過去の[Indie of the Week]のように1本のタイトルを深く取り下げる連載は[Monthly Indie]へと移行します。インディゲーム好きの方はぜひそちらもチェックしてみてください。

 


ドキュメンタリーシリーズ「Super Game Jam」5月エピソードの主役2人 Richard Boeser (『Ibb and Obb』)とJan Willem Nijman (『Ridiculous Fishing』, 『LUFTRAUSERS』)
ドキュメンタリーシリーズ「Super Game Jam」5月エピソードの主役2人

Richard Boeser (『Ibb and Obb』)とJan Willem Nijman (『Ridiculous Fishing』, 『LUFTRAUSERS』)

さて AUTOMATONに生まれ変わり第1回目となる2014年5月第4週(5月19日から5月25日)の[Indie of the Week]。昨今のインディーゲームシーンでは開発者らが集まり限られた時間でゲームを開発する、いわゆるゲームジャムから良い作品が生まれることめずらしくありません。そんななか、『Shadow Warrior』や『Hotline Miami』など刺激的なタイトルをパブリッシングする Devolver Digitalがドキュメンタリー「Super Game Jam」をSteamにてリリースしました。

「Super Game Jam」は各国のインディーデベロッパーたちがコンビを組み48時間のゲームジャムに挑戦する様子を収録した月刊映像作品。他言語字幕追加が将来的な願いとしてのアップデートプランになっている点は英語が苦手なユーザーにとってつらい点ですが、来月以降は"帝王"『Hotline Miami』やバカ謎解きゲー『McPixel』、ノワールアクション『Gunpoint』の開発者らも登場する予定となっており、これらタイトルのファンは注目しておいても損はなさそうです。見知らぬ開発者らが出会い寝食をともにしつつゲームを開発していくゲームジャムの雰囲気を間接的に体験することができるでしょう。

なおビジネスサイドでは、インディーゲームとしては国内でもにぎわいをみせた『Dungeon Defenders』の開発Trendy Entertainmentにて20パーセントのスタッフレイオフがありました。同スタジオと繋がりがあり以前より最新ニュースを届けてきたgamesindustry.bizが報じています。昨年には契約外の残業や男女間の給料格差などブラック企業体制が嘘か真か内部告発されていた同スタジオですが 、今年4月に元LucasArtsの人材をCEOをむかえいれるなど改革が続いている模様です。続編となる『Dungeon Denfenders 2』は発表当初のMOBAジャンルから脱却し、2014年に発売される予定。

 


キュートな2Dドットビジュアルに隠された鬼畜リズム

 

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タイトル: 『Ripple Runner
ジャンル: リズムランナー
開発: DDRKirby
発売: 無料公開中

自動スクロールで移動しながらバックの BGM に合わせ障害物を避けて進むゲームといえば『Bit.Trip Runner』がもっとも有名といっても過言ではありません。そんな偉大な先人のグラフィックにさらに味付けをほどこしたような作品『Ripple Runner』が公開されました。Web ブラウザにて無料プレイが可能な同作は、オンライン上で定期的に実施されるゲームジャムイベント「Ludum Dare」の第29回目にて生み出されたタイトル。かわいらしい2Dドットビジュアルやキュートなビットサウンドとは裏腹に、水面に映った自キャラクターの影にワープする「Ripple」が脳を揺さぶるアクションは高難度に仕上げられています。さらにステージクリア表記となるトロフィーは、ノーミスでないと獲得できないという鬼畜っぷり。素晴らしいサウンドトラック をみずからの手で切りひらくか、ジュークボックスを試聴するか、メディアファイルをダウンロードするか、どれで満足するかはプレイヤー次第です。

 


テキストアドベンチャー&リズムアクション

 

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タイトル: 『Space to go
ジャンル: ミュージカルアドベンチャー
開発: geekdrums
発売: 無料公開中

『Ripple Runner』と同じくゲームジャム「Ludum Dare 29」に出品され、オーディオ部門において最優秀スコアを叩きだしたのが『Space to go』。むかってくる白線にあわせてスペースキーを押すと BGM ととにテキストが表示されていくというシンプルな内容で、リズムゲームとしてみた場合とくにめずらしいメカニックは搭載されていません。一方でわずか5分間のゲームプレイに「ミュージカル」の名に恥じない胸躍らせる体験が用意されていることもたしかです。星との対話を通しての急展開は、『スペースチャンネル5』が体現した心が高揚していくミュージカルゲームの楽しさに通じるものがあります。スペースキーやテキストだけのゲーム進行と質素なビジュアルも逆にミニマルな雰囲気でミュージカル調の体験に華をそえています。

 


鬼火をかざして沼地を進む光パズルアクション

 

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タイトル: 『Schein
ジャンル: パズルアクション
開発: Zeppelin Studio
発売: 未定

5月20日、Steam Greenlightに登場したのがZeppelin Studioのパズルアクション『Schein』です。元は2011年前半に学生作品として完成した同作は、その後Microsoftの学生テクノロジーコンペティション「ImaginCup 2013」などでのアワード受賞を経て、本格的に開発が進められました。オブジェクトを出現させたり消したりと、周囲の環境を様変わりさせる「鬼火」(little will-o'-the-wisp)を切り替えながら進んでいくメカニックが特徴です。プレイヤーは行方不明になった息子を探している父親を操作しIrrlichtとよばれる沼地の謎を解き明かしていくことになります。公式サイトにて現在配信されているプレイアブルデモは1ステージ分のみ。しかしながら鬼火を切り替えて進んでいく小気味よいジャンプアクションや、ランプを使って解いていくチャレンジングな光のパズルが十分にうかがえる内容です。

 


AIスーツ未来の旅、ダークSF世界光る探索アクション

 

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タイトル: 『The Fall
ジャンル: 2D探索アドベンチャー
開発: Over The Moon
発売: 5月30日(Episode 1)

昨年10月にKickstarterキャンペーンに成功し約3万8000ドルの獲得に成功したSF-2Dアクション『The Fall』。3部構成にて販売されるエピソード形式の作品で、第1弾が5月30日にSteamでリリースされることが発表されました。開発はカナダのOver the Moob Studioで、『Company of Heroes』や『Dawn of War 2』の開発に参加したJohn Warner 氏が製作を指揮しています。ゲームはノンリニアタイプの探索型アクションアドベンチャーでありとりたててオリジナリティあふれる部分はありませんが、注目すべきは昨年の名作パズルアクション『The Swapper』を思わせるようなダークSFワールドにあります。ゲームの主役は戦闘スーツに装着された女性AI「ARID」。スーツに入り込んだ人間を救うため治療の手段を探すなか自身がなぜ生まれたかを探る旅に向かうという物語が描かれます。SF好きの心をわしづかみにする書き出しです。

 


80年代SFアーケード色と『XCOM』風の征服ストラテジー

 

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タイトル: 『Deadrock Divide
ジャンル: ターンベースストラテジー
開発: Bootsnake Games
発売: 未定

5月21日から Kickstarter にて5万ドル獲得のクラウドファンディングキャンペーンを開始したのが『Deadrock Divide』。開発はシアトルのBootsnake Games。80年代SFユニバースにインスパイアされたサンドボックス型のターンベース戦略ゲームです。対宇宙人侵略ストラテジー『XCOM』の戦闘システムをベースに、スペースシップのアップグレードや探索、経済圏でのトレードなどが盛りこまれています。『XCOM』風戦闘シーンのビジュアルはやや貧弱ではあるものの、Atariのアーケード『アステロイド』を彷彿とさせるワイヤーフレームバリバリの探索シーンは魅力的です。

 

 


今週の注目タイトル: 『The Fall』

本作が昨年Kickstarterに登場した時は正直にいってそれほど注目していませんでした。しかしSteamでの発売が決まり最新のトレイラーを見た時は『The Swapper』デベロッパーの新作かと思ってしまいました。つまり筆者が今週ピックアップするタイトルはエピソード1が5月20日に発売をむかえる『The Fall』です。2D横スクロールタイプのサバイバルホラーは『Lone Surviovr』がリリースされ高い評価を獲得して以降、『Silence of the Sleep』や『Uncanny Valley』など新作が登場しにぎわいをみせているものの、ダークSFテーマは意外にふれられてこなかったジャンルではないでしょうか。価格は9.99ドル、エピソード1をお試しで買ってみるのもよさそうです。

 

Shuji Ishimoto
Shuji Ishimoto

初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。

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