発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆく「Indie Pick」。第322回目は2Dサイコロジカルホラー『DARQ』を紹介する。
ある日、本作の主人公であるLloyd少年は自分が夢を見ていることを自覚するようになる。夢の中の自分をある程度コントロールできる「明晰夢」というのは愉快な体験であるように思えるが、その夢が悪夢だとしたらどうだろうか。一部のホラー好きを除けば多くの人が目を覚まそうとあがくだろう。そう、Lloyd少年が訪れる夢の世界は抜け出したくても抜け出せないゴシック調のナイトメアだったのだ。
夢の中で襲ってくる敵はどれも少年には太刀打ちできない強者ばかり。彼らにみつからないよう慎重なステルス行動が基本となる。だが慎重な行動だけでは切り抜けられないピンチもある。そんなときには夢の世界の物理法則を屈折させ、また夢であるがゆえにもろい世界の構造を組み替えながら潜在意識の中をさまよっていく。
物語については詳細がほとんど明らかになっていないが、これはデベロッパーのUnfold Gamesが意図的に情報を絞っているからだ。Unfold GamesはSteamのコミュニティページで「物語については何を語ってもネタバレになってしまうし、みんなにはできるだけ事前に情報を目にしない状態でゲームを体験してもらうことが理想的なんだ。唯一言えるのは、物語こそが本作の強みのひとつになっているということ」とコメントしている。
本作のビジュアル面では、手書きの2Dキャラクターと3Dの背景、光と闇、美と恐怖といった対極にある要素を組み合わせたアートスタイルをつくりあげており、プレイヤーに芸術的な体験を届けることを目指している。陰影については特にこだわっており、ビジュアル面での効果はもちろんのこと、ゲームプレイの面でも中心的な役割を担っている。わかりやすい例が懐中電灯のライトであり、オン/オフを切り替える瞬間に何が待ち構えているのかわからないという不確実性がプレイヤーの緊張を積み上げていく。遭遇する敵には視覚の優れたものが多く、懐中電灯をつけっぱなしにはできない。真っ暗闇の中に放り込まれるLloyd少年は音だけを頼りにして危機的状況から抜け出すことになる。
このように本作では陰影と音を使うことで、ゴアや暴力ではなく、不気味な雰囲気と徐々に高まっていく緊張から生まれるホラーを目指している。また敵の位置や一部のエリアはランダム生成されるとのことで、不確実性から生まれる緊張を保つ効果をもたらすだろう。ゲームの一部ながらランダム生成を利用するというのは、夢という不安定な舞台にもマッチするゲーム設計といえる。
本作のデベロッパーであるUnfold Gamesを設立したのは、数々の映画作品でコンポーザーを務めてきたWlad Marhulets氏。名門Julliard Schoolで学び、「Hitman: Agent 47」「ギヴァー 記憶を注ぐ者」、そしてアーノルド・シュワルツェネッガー氏主演の「サボタージュ」などに携わってきた。こうした背景を踏まえると、Unfold Gamesがサウンドデザインを大切にするのも納得できる。
2015年に実施した『DARQ』のIndiegogoキャンペーンでは目標資金額に達しなかったが、その後Indiegogoのキャンペーンページに掲載されたアップデートによると、キャンペーン中に複数のパブリッシャーや投資家からオファーがあり、無事開発資金を集められたようだ。リリース時期については当初の予定であった2016年から延期となり、2017年後半での公開を予定している。対象プラットフォームはPC/Mac。コンソール向けのリリースは未定となっている。