『Quake』『Doom』など90年代FPSへのオマージュ作品『Dusk』が開発中。狂うカルト教徒を葬れ

発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆく「Indie Pick」。第314回目は『Dusk』を紹介する。

発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆく「Indie Pick」。第314回目は『Dusk』を紹介する。

舞台を地球から宇宙へと移した『Call of Duty』シリーズや、時代設定を第一次世界大戦時まで巻き戻した『Battlefield 1』など、新世代のFPSタイトルはマンネリ化を防ぐため、さまざまな手立てを講じている。そんな中、「古き良きFPS」のゲームプレイを貫いた『DOOM』最新作や『Wolfenstein: The New Order』といったリバイバル作品が力強いヒットを続けている。今年6月には『Quake』シリーズの最新作『Quake Champions』がアナウンスされたのも記憶に新しい。オールドスクールなタイトルには根強いファンが多く、この90年代FPS復興の波に乗って現れたのが『Dusk』だ。本作ではゲームプレイのみならずグラフィックまで90年代当時の雰囲気を再現している。

『Dusk』は『Quake』『Doom』『Blood: One Unit Whole Blood』『HeXen: Beyond Heretic』といった90年代FPS特有のオーバーなゴア表現をふんだんに取り入れた作品であり、スプラッター好きなFPSベテラン達の心をくすぐってくれる。舞台となるのは米国北東部の奥地にある不気味なカルト村。主人公が目を覚ますと、屠殺場のような地下室でチェーンソーを抱えた大男に囲まれている。某カルト教団を思わせる三角頭巾を被った狂人たちだ。冗長なカットシーンはなく、冒頭からいきなり戦闘が始まる。相手を鎌で切り刻み、2丁ショットガンをぶっ放し、終始ハイスピードな展開で目に入るものすべてを屠っていく。プレイヤー自身は手を下さず、『Doom』のように敵同士を争わせることも可能だ。

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銃と近接武器によるシンプルな殺戮劇でありながら、スライディング、ロケットジャンプ、ストレイフジャンプ、バニーホップなどFPSの基本的な移動テクニックは網羅されている。スピード感を重要視しており、武器をリロードする必要はない。代わりといっていいかはわからないが、手に持った銃を上下左右に回転させることができる。この機能は、映画「ターミネーター2」でアーノルド・シュワルツェネッガー氏が演じた「T-800」のように、レバーアクション式のショットガンをスピンコック(銃を一回転させながらリロードする演出)したい、という単純な遊び心から生まれている。

本作に含まれるのは、30ステージほどの「シングルプレイキャンペーン」、プレイヤーが倒れるまで敵が押し寄せる「エンドレス・サバイバルモード」、そして『Quake』のようなアリーナ型対戦が楽しめる1vs1の「マルチプレイ」。「シングルプレイキャンペーン」には90年代FPSらしい演出として隠し部屋が用意されている。開発にはUnityエンジンを利用しており、90年代の荒いグラフィックを再現するのに苦労したという。また、設定オプションの低解像度モードをオンにすることで、さらなるノスタルジアに浸ることができる。

無駄に卑猥なクロスボウ
無駄に卑猥なクロスボウ

世界観のインスピレーションとしては、90年代FPSのほか、開発を担当したDavid Szymanski氏お気に入りの『S.T.A.L.K.E.R: Shadow of Chernobyl』も参考になっている。腐敗した沼地、廃工場、地下墓地という鬱屈としたステージがプレイヤーを待ち受ける。Szymanski氏はこれまでに『The Music Machine』『The Moon Sliver』など寂しげな雰囲気のミステリーアドベンチャーを製作してきた。人間の内面に切り込んだ物語性の強い作品を得意としてきただけに、過去作での経験がどう生かされるのか気になるところ。なお、Szymanski氏は本格的なFPSタイトルを開発するのは初めてだが、『Dusk』の開発前に『Down We Go!』『Pit: The Bite-Sized Shooter』という90年代FPS風のミニゲームを出しており、段階を踏んでFPS開発を学んでいることが伺える。

これまでセルフパブリッシングを続けてきたSzymanski氏だが、本作ではNew Blood Interactiveがパブリッシャーについている。同社が担当するタイトルとしては、横スクロール形式のステージで市民の暴動を広げていく『Tonight We Riot』があり、過激なインディータイトルを束ねる新進気鋭のゲームパブリッシャーとして期待されている。また、音楽面ではサウンドトラックのコンポーザーとしてAndrew Hulshult氏を迎え入れている。Hulshult氏は『Rise of the Triad』のサウンドトラックや『Doom』オリジナルサウンドトラックのリマスター版に携わってきたFPS音楽のエキスパートだ。

海外ゲームメディアのPC GamerRock, Paper, ShotgunからPAX WestやTwitchConといったゲームイベントまで、Szymanski氏の過去作では見られなかったほど、『Dusk』は積極的なメディア露出を実現している。『Dusk』の対象プラットフォームはPC。発売時期は2017年を予定している。本稿執筆時点ではSteamのコミュニティページにてQAテスターを募集しているため、本作に貢献したい方は応募してみるのも手だろう。

Ryuki Ishii
Ryuki Ishii

元・日本版AUTOMATON編集者、英語版AUTOMATON(AUTOMATON WEST)責任者(~2023年5月まで)

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