「視聴者」が生み出す恐怖が「実況者」を襲う、『I.C.U.』はライブストリーミングを利用した新感覚ホラー

第294回目のIndie Pickで紹介する『I.C.U.』はマルチプレイヤー型ホラーゲームであり、Twitchなどライブストリーミングを利用したシステムとなっている。プレイヤーとなる「実況者側」と、ゲームに干渉していく「視聴者側」に分かれているのが特徴。

発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆく「Indie Pick」。第294回目は『I.C.U.』を紹介する。

『I.C.U』はマルチプレイヤー型ホラーゲームだ。本作はTwitchなどライブストリーミングを利用したシステムとなっており、プレイヤーとなる「実況者側」とゲームに干渉していく「視聴者側」に分けられる。実況者はエピソードで区切られたステージを探索していき、視聴者は周囲の環境やイベントをカスタマイズし、実況者を怖がらせていくという流れだ。

indie-pick-294-icu-00

例えば、エピソード1「Forest」では薄暗い夜のなか懐中電灯を片手に、森へ踏み入れることになる。実況者の目標は、不気味な木々が立ち並ぶ視界の悪い森で、三つの掘立小屋を見つけ出すことだ。そこに立ちはだかるのは敵、そして視聴者の用意するギミックだ。敵は神出鬼没にプレイヤーに襲いかかる動く石像。プレイヤーはライトを当てることで敵の動きを止めながら小屋を探す。ひとつめの小屋に入ると、視聴者は「酔っぱらう」か「縮む」かのどちらかに投票し、票が多かった方のステータスを実況者に負わせることができる。「酔っ払う」が選ばれれば、実況者は視界が揺らぐエフェクトに苛まれ、「縮む」が選ばれれば背丈の小さく視界の狭い子どもになってしまう。敵が迫った状態であれば、敵の生死を投票で決めてしまうことすらある。こうして一定地点に投票ポイントが設置されており、実況者と視聴者が力を合わせて(?)ゲームを進めていく。

視聴者は、ストリームを見ていれば「I.C.Uコイン」を入手できる。このI.C.Uコインを使えば、敵を遠くから偵察している実況者の背中を押したり、走っている実況者をつまずかせたり、特殊な敵を出現させたりなど、小さなイタズラをして実況者をさらなる危険へ招き入れることができる。もちろん、このコインを使って実況者を助けることも可能。ほかにも、少量のI.C.Uコインを使用することにより、Twitchで使用される絵文字をゲーム画面に出現させることなども可能だ。ユーザーが息を合わせれば暗闇の中に突如複数の絵文字が浮かびあがるなど、シュールな場面を生み出すこともできる。ちなみにI.C.Uコインは視聴時間が長ければ長いほど多く手に入る仕様となるようだ。

https://www.youtube.com/watch?v=Hq_bII6R16w

TwitchユーザーのStrippin氏によるゲームプレイ映像を見る限り本作は、純粋なホラー体験を楽しめつつ、どこかパーティーゲームのような笑みが溢れる不思議なゲームデザインに仕上げられている印象だ。先日スタートしたKickstarterもすでに目標金額を達成し、出足は好調といえるだろう。

開発の中心者であるKeenan “Criken” Mosimann氏はもともと熱狂的なTwitchユーザーで、Twitchで実況者と視聴者をつなぐゲームを生み出すのが夢だったと語っている。ほかにも相棒であるGarv Manocha氏、Harebrained SchemesやProletariatといった小さなスタジオの力を借りながら開発を進めているようだ。

Twitchは今年3月に視聴者参加型のゲーム開発を支援する「Developer Success」を発表しており、すでに視聴者の投票によってカードを選ぶ対戦ゲーム『Super Fight』などさまざまなタイトルが開発中である。ライブストリーミングとホラーゲームの相性は『Dead by Daylight』のヒットなどによって証明されており、今回の『I.C.U.』は満を持して登場したといっても過言ではないだろう。他者と怖い話を共有する『KAIDAN』も生まれたように、これからのホラーゲームはひとりで楽しめるだけでなく、他者と恐怖を共有できるマルチプレイ型が増えていくのかもしれない。

『I.C.U.』は2017年12月にリリース予定。

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

記事本文: 5199