アドベンチャーゲーム『東京ダーク』、都市に眠る“東京の闇”は外国人チームの日本への想いから生まれた


発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆくIndie Pick。BitSummit 4thが閉幕してから3週間経過したのだが、会場で発見した魅力的な作品を紹介する。第268回目は『東京ダーク』をピックアップ。

『東京ダーク』は東京を舞台とするアドベンチャーゲーム。主人公である刑事の伊藤アヤミは、突然姿を消してしまった相棒を探すうちに自身の過去や“東京の闇”と直面することになる。ゲームシステムは、横スクロール型のポイント&クリックアドベンチャーだ。プレイヤーはアヤミとなって、さまざまなオブジェクトに干渉していくオーソドックスなもの。しかし、要所に工夫がなされており、緊張感のあるアドベンチャーゲームになっている印象だ。開発者のMaho Williams氏にうかがった話を交えながら、ゲームのより詳しい部分まで掘り下げてお伝えしたい。

ゲームの肝となるのが、「SPINシステム」だ。SPINシステムとは、Sanity(正気値)Professionalism(職業値)Investigation(探索値)Neurosis(ノイローゼ値)のよっつで構成されたパラメータであり、主人公のアヤミの行動により常に変化し続ける。会話で選んだ内容によって値が上下するのはもちろんのこと、職務中にお酒を勧められそのまま飲んでしまうと職業値が低下する、同じ人物にしつこく同じ質問を繰り返すことでノイローゼ値が上がるなど、SPINシステムによって些細な行動にも意味がもたらされるようになる。

このSPINシステムを代表するように、ゲーム内のプレイヤーの行動がシナリオ展開に影響を及ぼすインタラクティブな部分が本作の魅力であると言える。例えばマップ内のオブジェクトであるゴミ箱には「さわる」や「みる」といったインタラクトのみでなく、手持ちの銃で銃弾を打ち込むことも可能だ。そうすると、街中で発砲したということで、SPIN値に変化が生まれるというわけだ。ひとつの問題が発生したとしても複数の解が用意されており、プレイヤーそれぞれのやり方で解決できる。物語はこうした行動により多岐に分岐していくことになるが、進行不可になるといった事態には陥らないようだ。こういったシステムは、常にプレイヤーが自分の選択に責任を問うようなデザインを目指して生まれたのだという。その証拠として、1周目はオートセーブで、プレイヤーは行動を重ねて辿り着いた結末を受け入れなければならない。チャプターのやり直しなども不可能であり、2周目のNew Game Plusでのみすべて可能になるとのこと。選択の誤りによる後戻りを許さない、かなりストイックなデザインとなっている。ちなみにゲームのエンディングは11種類用意されているようで、リプレイ性の強いゲームとなりそうだ。

ちなみに、『東京ダーク』は闇をテーマとした作品なだけあって、暴力や性といった問題を扱うディープな内容になるようだが、あくまで直接的なグロテスクな描写などは控えられており、耐性のないプレイヤーも楽しめるものとのこと。

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一方で、『東京ダーク』にはどこか日本っぽさがありながら、日本っぽくない部分もある。それはおそらく開発スタッフがほぼ外国人で編成されているということが影響しているのかもしれない。鎌倉にあるスタジオCherrymochiは、ディレクターのJon Williams氏と広報兼通訳であるMaho Williams氏のふたりを筆頭に、少人数で運営されている。Jon氏はもともとイギリスにてGPSを用いたゲーム開発をおこなっていた経歴の持ち主。キャラクターデザインを担当するMoochirinはイタリア人アーティストであり、音楽を担当するMatthew Steed氏はイギリスのメタルバンドReign of Furyのフロントマンをこなす実力派だ。スクリプトライターのChris Krubeck氏はアメリカ出身ということで、Cherrymochiは多国籍チームとなっている。彼らに共通しているのが、クリエイター全員が日本に滞在した経験があり、日本に対して熱い想いを抱いているというところだろう。徹底したロケーションハンティングなどがおこなわれ、それぞれの「日本観」が反映された作品となっているようだ。また本作は『コープスパーティー』や『ひぐらしのなく頃に』といった国産アドベンチャーゲームの影響も受けて作られているのだという。外国人から見た日本文化と、日本で生まれた日本文化が融合しているという点でも興味深い作品となりそうだ。

本作はすでにKickstarterを成功させており、Square Enix Collectiveのサポートを受け着々とリリースに近付いている。現在PCとMacでの販売を予定しており、年末の発売を目指して鋭意開発中だ。販売価格は「2000円以上にはならない」とのこと。