元『Devil May Cry』開発スタッフが手がけるインディー発3Dアクション『Assault Spy』、“スタイリッシュさ”へのこだわり込める

第251回目のIndie Pickで紹介するのは、サラリーマン風のキャラがスタイリッシュに戦うアクションゲーム『Assault Spy』。開発にはUnreal Engine 4を使用しているという。地味なサラリーマンと派手なアクションのギャップによるコミカルさも魅力だ。

発売前や発表されたばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆく「Indie Pick」。第251回目は『Assault Spy』をピックアップする。

インディーゲームのシーンは時代とともに移り変わりつつある。インディーゲームでは、人材が限られた環境という点もあり、ピクセルアートを用いた2Dゲームが根強い人気を誇り続けていた。勿論現在でもそういったタイトルがインディーの中心にいることは間違いないが、その傾向はゲームエンジンの進化や無料化にともない少しずつ変化してきている。高性能なエンジンの導入によって、個人制作でも3Dによる美麗なグラフィックのインディーゲームが生まれつつある。その例のひとつが、Twitterで3Dのアクションゲームの開発報告をしているKatutoji氏だ。氏が投稿するサラリーマン風のキャラクターが派手なエフェクトを散らしながらコンボを決めていく映像は迫力があり、どのようなクリエイターが何を目指して開発しているのかなど興味は尽きない。そこでAUTOMATON編集部はKatutoji氏にコンタクトをとり、お話をうかがった。

Katutoji氏がUnreal Engine 4を用いて開発しているアクションゲームの名は『Assault Spy』。サラリーマン風のキャラがスタイリッシュに戦うという設定は、TVCMなどで超人的な動きをする企業戦士にヒントを得て生まれた。この設定は少年漫画のような格好よさというよりは、地味なサラリーマンと派手なアクションのギャップによるコミカルさを狙っているのだという。そういったコミカルさによってスタイリッシュさをより際立たせる狙いだ。ちなみに操作できるキャラクターは、男性のみならず女性キャラも用意される予定。ゲームはひとつの大きな会社の中で展開され、エントランスや屋上、オフィスや中庭、駐車場というありとあらゆる施設で戦いが繰り広げられる。システムはロックマンのような順不同のステージ形式が採用されており、どのステージを攻略していくかはユーザー次第とのこと。敵は家電をモチーフとしたセキュリティロボットやエリートビジネスマンが想定されている。

Katutoji氏がゲーム開発を始めたのは2015年末からで、その時期から時間的余裕が増えたことがきっかけだったのだという。自らの職業を「スパイ」と言う氏にとってゲーム制作は完全に副業であり、友人によるチェックなどは定期的にあるが、基本的にはひとりで開発をおこなっている。

『Assault Spy』は個人でリッチなゲームを開発できるようなサポートが整っているUnreal Engine 4が使われているタイトルだということを考慮しても、いち会社員が副業で制作しているゲームとは思えないだろう。その秘密は、Katutoji氏のキャリアにありそうだ。

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アマチュアとプロ、両方のキャリア

学生によって制作されたフリーゲームとは思えないほどのクオリティを誇る『アサルとスパイ』 はPCとAndroidでプレイできる。アドベンチャーゲームが好きなユーザーはぜひ触ってみてほしい。
学生によって制作されたフリーゲームとは思えないほどのクオリティを誇る『アサルとスパイ』 はPCとAndroidでプレイできる。アドベンチャーゲームが好きなユーザーはぜひ触ってみてほしい。

実はKatutoji氏は、フリーゲーム界隈ではちょっとした有名人である。氏が2012年にリリースした『アサルとスパイ』は、『逆転裁判』ライクなアドベンチャーゲーム。軽妙なテキスト、感情をハッキングするというユニークな設定、先の読めない展開などが今でも高い評価を呼んでいる。ちなみに『Assault Spy』にも部分的に前作のキャラクターや設定が継承されているが、前作をプレイしなくても全く問題ないと氏は語っている。『アサルとスパイ』を作っていたのは学生時代だそうで、氏は早い時期からすでにクリエイターとして非凡な才能を見せ始めていたということがうかがえる。

そして数年後、Katutoji氏は“プロフェッショナル”なゲーム業界へと足を踏み入れることとなった。氏は複数のアクションゲームにプランナーとしてかかわったが、特に大きな影響を受けたのは『Devil May Cry』シリーズだという。スタイリッシュ3Dアクションゲームの本家とも言えるタイトルの開発に携わりながらとにかくさまざまなことを学んだと語っている。なお現在は業界から離れ、空き時間にゲームを開発する日々を送っている。

アマチュアとプロの両方でキャリアを積んだ氏は、今回の開発において今までに培った経験を生かしつつも、自分の哲学を反映させたゲーム作りを目指しているのだという。特に意識しているのが「スタイリッシュさ」だ。『Assault Spy』のスタイリッシュさへのこだわりは映像からも見て取れる。システムとしてはスタイリッシュゲージのようなゲージが導入される予定で、プレイヤーは自ずとカッコいいプレイを意識するようになるという。そのほかにもゲージを消費する“奥の手”も用意されている。まず自分以外の時間の流れを遅くし、一方的に攻撃が可能になる。そして効果を解除すると、与えた衝撃がまとめて敵に発生し爆散させるというものだ。成長要素として、エネミーを倒したときに得られるポイントと引き換えに技を習得してく。プレイヤーが段階的に複雑な操作に慣れていくための仕組みだ。

また、『Assault Spy』は操作のうまい人のみが楽しめるゲームではなく、あまりアクションゲームが得意でない人でも気持ちよくプレイできるように開発されている。ユーザビリティについてもかなり意識しているようで、ロード時間や高フレームレート、ユーザーインターフェースやわかりやすさ等、さまざまな点について気をつかっているという。スタイリッシュであるためには、ゲームのテンポや爽快感を損なう要素は徹底的に整理する、というのが本作におけるKatutoji氏の哲学だ。

ちなみに映像ではヒットストップなどを用いた派手な演出が印象的だが、あくまでこれはユーザーにアピールするために派手に見せているもので、実際のゲーム内ではこれらの演出は敵の数や武器にあわせてゲームテンポを損なわないように調整されていく予定だ。ステージには机や椅子・ガラス扉等たくさんのオブジェクトが配置されており、破壊の爽快感も味わえるものとなるようだ。

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個人制作という体制では、できることも多く、さまざまな仕様を導入しては削除するといった試行錯誤が可能だと語っている。色々なことを試すうちに「ほかのタイトルでこのシステムが導入されないのはこういう理由だったのか」といったこともわかり勉強になるのだという。そしてなによりKatutoji氏の開発を支えているのがUnreal Engine 4のブループリントだと話している。ブループリントとは絵でプログラミングをするようなシステムのことで、その恩恵については弊誌のインタビューでヒストリアの我妻徹矢氏も言及している。Katutoji氏にとってはこれがなければゲーム開発が成り立たないというほど重要な存在であったようだ。Unreal Engine 4でゲーム開発をおこなっていると、絵がうまい人もプログラマーなしで個人制作ができる時代がきているように感じると氏は語っている。ちなみにUnreal Engine 4を使ったゲーム開発は、ガイドブックに沿って基礎的な処理をいちからやるよりも、いきなり作りたいゲームを作り始め、必要な処理から学ぶのがオススメなのだとか。

将来的に Steam Greenlightへの進出を予定しており、『巫剣神威控』や『クロワルール・シグマ』のような展開を目指している。リリース時期は2017年を目処にしているとのこと。

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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