発売前や発表されたばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆく「Indie Pick」。第249回目は『Overland』をピックアップする。
『Overland』は3Dサバイバルシミュレーションだ。見た目こそミニチュアのようで可愛らしいものとなっているが、その美しいグラフィックとは裏腹にかなりハードなローグライクゲームとなっている。プレイヤーは崩壊した北アメリカ大陸を車で横断しながら、過酷な土地で生存者たちが生き残れるように導いていかなければならない。生き残るために最も重要となるのは、移動に必要な車のガソリンだ。そのほかにも人間に襲いかかる虫のような謎の生物から身を守るための武器・防具になりそうなものを探っていく。マップはプレイするたびに自動生成され、イベントはランダムに発生し、同じ旅路が繰り返されることはない。
本作の興味深い点は、ターンベースシステムを採用しているところだ。ターンごとにキャラクターに2ポイント与えられて行動する『XCOM』シリーズに近い形式となっており、もちろん、こちらが何かするたびに敵も行動するというシステムだ。次のターンに起こり得るあらゆる可能性を考慮しながら、敵の行動を予測しつつ次の行動を選択する必要がある。プレイ中は敵のいない時間なども多く、その際は自由に動くことができるが、一定の行動を起こすと突如として敵が出現するシミュレーションゲームの“お決まり”も用意されているようで、一瞬たりとも油断は許されない。
戦う手段は銃で撃つのみならず、そばにある焚き火を用いて物に引火させるなど“今あるもの”を最大限利用し活路を見出さなければならない。主人公が連れ添う犬と連携するのも有効な選択肢のひとつだろう。気を付けなければならないのは必ずしも敵を倒すことが良いとは限らないということだ。難敵を倒しても、物音でより多くの敵を呼び寄せてしまうこともある。サバイバルゲームということで、失ったユニットは当然戻ってくることはない。そればかりか、乗車の定員の関係で仲間を荒廃した地に捨て置く決断を強いられることもある。的確な指示を出しリーダーとして仲間を守るのみならず、助ける命を厳選するという過酷な判断をも求められるのだ。
マップはいくつものエリアに分割されており、エリア移動の合間にあるキャンプファイヤーなど、休息ポイントをうまく活用していくことが重要になるだろう。ひとつのエリアに長く留まることもでき、どのくらい資源を集めどれくらい消費するのかという判断は、その先を生き残ることができるかに強く影響する。有益なアイテムが存在するエリアには危険も潜んでおり、撤退のタイミングを判断するのもプレイヤー次第。ただし、車のガソリンがなくなれば待ち受けるのは絶望のみとなっているので、注意が必要だ。
これまでのシステム紹介からもわかるとおり、本作はまさに“手強いシミュレーション”となっている。常に死と隣り合わせとなっており、あらゆる可能性を模索しながら行動しなければならない。新しく侵入するエリアはどれも絶望的な状況にあるという状況も頻繁にあるのだという。しかし頭脳をフルに働かせれば必ず打開できるようなバランスで作られており、まさにシミュレーションゲームの醍醐味を味わえるタイトルとなりそうだ。
開発元のFinjiは2006年にAdam Saltsman氏とRebekah Saltsman氏夫妻によって設立されたゲームスタジオだ。同社は『Canabalt』を開発したのち、2014年には他のゲーム開発会社と合併し、新たにスタートを切った。アメリカのテキサス州を拠点としながらも、世界各地のさまざまなデベロッパーのヘルプやパブリッシングをおこなっている。『Overland』は2013年からはじまっていたプロジェクトで、当初は少人数であったが2015年からは開発の佳境に入りスタッフを増員して完成を目指して取り組み続けられている。
本作は4月20日からファーストアクセスのラウンド1としてitch.ioにて20ドルで配信中。