かつて電話を繋ぐのは”人の手”だった…電話交換手シミュレーター『Hello, Operator!』は、当時の手動電話交換機を使用して遊ぶ

発売前や発表されたばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆく「Indie Pick」。第240回目は『Hello, Operator!』をピックアップする。

発売前や発表されたばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆく「Indie Pick」。第240回目は『Hello, Operator!』をピックアップする。

番号を入力するだけで簡単に遠くにいる相手と会話ができてしまう「電話」。いまやSkypeやLINEを通じて無料でビデオ通話までできてしまう時代だが、1920年代は「電話交換手」と呼ばれる人たちが存在し、彼らが電話回線を”人の手”でつないでいたのをご存知だろうか。本作『Hello, Operator!』は、実物の手動電話交換機を通じてそんな当時の仕事を体験できるシミュレーターゲームだ。

「イライジャ・グレイ」「トーマス・エジソン」「グラハム・ベル」3人による特許・開発戦争を経て、電話は1870年代ごろから急速に普及。当時は各企業が手動の電話交換機を所有しており、電話をかけた利用者の指示に従い回線を手で繋いでいた。この仕事を担当していたのが「手動電話交換士」たちだ。通話量が増えたことにより自動ダイアルアップ方式が採用され、手動電話交換士の仕事は1982年を最後に消滅しているが、本作『Hello, Operator』では実機を使用して当時の仕事を体験することができる。

vintage
「Western Electric 551-A」

『Hello, Operator!』で手動電話交換士となったプレイヤーは、受話器から流れてくる登場人物たちの指示を聞き、電話回線をつなぎ合わせなければならない。1927年に製造された「Western Electric 551-A」が筐体となっており、接続ケーブルをポートに正しく接続してゆく。1つの通話なら回線をつなぐのは簡単だが、通話がいくつも同時に重なると一気に難易度はアップするという。開発者のMike Lazer-Walker氏は『Tapper』や『Diner Dash』といったお客が次々とやってくるタイムマネージメントシムを本作の例に挙げている。

Lazer-Walker氏はマサチューセッツ工科大学の研究グループ「Playful Systems」に所属している人物であり、具現化されたナラティブやストーリーテリングを追求し続けている。本作『Hello, Operator!』においてもその理念は実現されており、プレイヤーはいくつかの方法で物語を読み取ることができるという。たとえば通話中の会話を盗み聞きしたりできるそうだ。

『Hello, Operator!』は先週開催されたGDC 2016にて展示されていた作品で、海外メディアKotakuの記事では実際のプレイ映像を見ることもできる。海外のイベントに参加しない限り遊ぶ機会はやって来なさそうだが、いつかは触れてみたい作品だ。

Shuji Ishimoto
Shuji Ishimoto

初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。

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