H.R.ギーガー氏らに影響を受けた不気味な画風の『Scorn』、奇想の惑星を描いた一人称視点ホラーアドベンチャー

第228回Indie Pickで紹介する『Scorn』は、不気味な“生きた”惑星の探索を行う一人称視点のホラーアドベンチャーゲーム。惑星全域には生き物の体内のような光景が広がっている一方で、クレーンのような機械的な動きをするものも存在している。

発売前や発表されたばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆく「Indie Pick」。第228回目は『Scorn』をピックアップする。

Scorn』はEbb Software studioが手がける一人称視点のホラーアドベンチャーゲーム。2014年にKickstarterにてクラウドファンディングキャンペーンをおこなったが、思うように資金を集めることはできず最終的にキャンセルとなってしまった。のちに外部からの出資を受けプロジェクトの続行を発表するも、しばらく音沙汰がなかった。先日、約1年ぶりに情報が更新され、新たなアートワークとスクリーンショットが公開された。またレベルデザインとテストプレイもほぼ終了しているとのことで、沈黙がつづいた間も開発は進められていたようだ。

atmospheric-first-person-horror-adventure-scorn-002 本作『Scorn』は、不気味な“生きた”惑星の探索を行う一人称視点のホラーアドベンチャーゲーム。惑星全域には生き物の体内のような光景が広がっている一方で、クレーンのような機械的な動きをするものも存在している。この奇妙な惑星で主人公が何をするべきか、というのは明かされていない。武器や弾薬も登場するようなので、ゲームシステムは一般的なシングルプレイFPSに近そうだ。

『Scorn』の特徴のひとつは、主人公の詳細な設定がないことだ。これは、主人公になりきることで奇妙な世界に入り込んでプレイしてもらいたいということだろう。開発者によると、決まった主人公の物語は存在せず、惑星で起こる出来事を通してゲームの世界観を感じられるようになっており、『DARK SOULS』や『メトロイドプライム』のように“ひっそりとした設定”のみを決めてあり、物語そのものはプレイヤー自身に空想の余地を与えたものになっているという。ほかにも、HUDがない、下を見下ろすことで自分の体が見える、といった特徴はプレイヤーに世界観を楽しんでもらうための配慮と言える。

 

アートワークから垣間見える造形へのこだわり

公式サイトにていくつか公開されている本作のアートワークは、それだけで完成したイラストのように完成度が高い。その中でも、生き物が張り付いているような建造物は非常に印象的だ。生物と無生物が癒着しているような独特の画風は画家ズジスワフ・ベクシンスキー(Zdzisław Beksiński)氏やH・R・ギーガー(H. R. Giger)氏から強い影響を受けているようだ。両氏とも不気味な絵を描く画家で、H.R.ギーガー氏は映画『エイリアン』のデザイナーとしても有名だ。

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ホラーゲームということで、プレイヤーを恐怖に陥れる方法も繊細に作っているようだ。本作のディレクターLjubomir Peklar氏はIGN Italiaのインタビューの中で「予期しないような音量で人を驚かせることは簡単だ。けれどもそれは画面ではなく本能的に音で驚いているだけで、スーパーマリオをやっていたとしても驚くだろう」と語っている。それだけ作品の空気感を大切にしているということだろう。

トレイラーではクレーンやゆりかごのようなもの、謎の機械などが登場する不気味な映像となっており、約2分の間に本作の独特な世界観を垣間見ることができる。

当初『Scorn』はUnityで開発されていたが、数か月後にUnreal Engine 4へとゲームエンジンを変更したという。Kickstarterでの失敗や、情報の更新が途絶えたりと完成までの険しい道のりを感じさせるが、それは世界観への強いこだわりがあるためだろう。新たなアートワークとスクリーンショットが公開されたということは、ゲームが完成へ確実に近づいている証といえる。

本作は前後編に分けられ、全編は2017年の初めごろのリリース、後編は未定となっている。プラットフォームは今のところはPC版のみ計画されている。

Shun Kurosawa
Shun Kurosawa

得意なジャンルは黙々と練習するゲームですが、基本的になんでもやります。モバイルもアーケードもやりますが、協力プレイは役立たっているのか心配しつつプレイします。

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