村上春樹作品に影響を受けたカナダ産アドベンチャーゲーム『Memoranda』が開発中、“何かを失った者たちの町”を描く


発売前や発表されたばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆくIndie Pick。第192回目は『Memoranda』をピックアップする。本作はカナダに位置するコアメンバー4人の小さなインディーデベロッパーが開発するアドベンチャーゲームだ。日本の小説家である村上春樹氏に多大な影響を受けており、村上氏の20以上の物語からインスパイアされた物語が描かれる。

何かを失った者たちが集う町

2bab9cb3871d0667efde240ec605ec2e_original村上春樹作品のフィクション世界から生みだされる曖昧で不条理なリアリティ、それをビジュアル化したらどうなるか。チームの中心人物であるアーティストMaliheh Rahrovan氏は、3年前に1人の友人とそんなアイディアを思いついたという。友人は別の国へと行ってしまったが、Rahrovan氏はその後3人の仲間とともにアイディアを練り、それがアドベンチャーゲーム『Memoranda』となった。

『Memoranda』は、ポイント&クリックタイプのクラシックな2Dアドベンチャーゲームである。ゲームの舞台となるのは、ヨーロッパのどこかにある小さな町。ノートパソコンと“ししおどし”が混在する、よくわからない場所だ。この町には第二次世界大戦の帰還兵から、人間になりたいと願う象まで様々な者が住んでいる。彼らの共通点は、“何かを失っている”こと。妻を失った男、足を失ったマラソンランナー、野生本能を失った鳥男、戦争で心を失った兵士。そして作品の主人公となるのは、自身の名前を忘れてしまった1人の少女だ。

ゲーム中には40以上のシーンと30人以上のキャラクター、そして数々の謎解きが収録されている。謎解きは添え物程度というわけではなく、物語のなかでヒントを集めてゆく必要があるという。村上春樹作品からのインスパイアを抜きにしても、独自のビジュアルやヨーロッパ的な町並み、楽曲はいずれも見流億的だ。

『Memoranda』の対象プラットフォームはPC/Mac/Linux。現在はKickstarterにて開発資金1万8000カナダドルの獲得を目指しており、2万2000カナダドルが集まった場合にはiOS版も発売される。