発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆくIndie Pick。BitSummitが閉幕してから1週間経過したのだが、会場で発見した魅力的な作品を紹介する。 BitSummit 2015 Pickの第7回目は、レトロスタイルのアクションRPG『Pixel Pirate in Bits of Eight』をピックアップ。
Pixel Pirate in Bits of Eight
『Pixel Pirate in Bits of Eight』(以下、Pixel Pirate)は、海賊のPeteが主人公のアクションRPG。日本向けのタイトルは『ドット海賊 8ビット宝の伝説』。ビジュアルだけを見れば、ファミコンやスーパーファミコン時代を意識した作品である。開発を手がけるのは、東京に拠点を置く独立系スタジオDadako。Dadakoとは日本語の駄々っ子である。ブースでお会いできたクリエイティブディレクターHawken King氏と、リードプログラマーのCarles Vallve氏に本作を作ろうと思ったきっかけをたずねると、口をあわせて「ドット絵が好きだから!」という答えが返ってきた。
ビジュアルからレトロなゲームだということは伝わるだろう。実際に遊んでみると、操作感もレトロだった。たとえば左右への移動や攻撃などの行動から、ファミコン時代特有の反応の鈍さが感じられた。もちろんこれは悪いことではなく、忠実に再現されているのだ。ブースではファミコン風のコントローラーが用意されていたので、まるで子供のころに戻った気分でプレイできた。
『Pixel Pirate』は確かにレトロではあるのだが、こだわりを持って開発しているという。たとえば、押入れからファミコンを引っ張り出しカセットに息を吹きかけ、数回のリトライを経てゲームを遊ぶとする。最初の数分はそのレトロさになつかしい気持ちになるだろう。しかし一定の時間が過ぎると、遊びにくく感じたり何かが足りないと不満を抱くことがある。レトロを売り物にした近年のゲームでも、同じような気持ちになることはないだろうか。Dadakoが目指すのは、「レトロ」の一言で終わらないゲームである。プレイヤーができることを増やし、もっと奥が深いものを作り上げようとしているのだ。
影響を受けた作品は『スーパーマリオブラザーズ』と『Monkey Island』だという。ゲーム内には海中を泳ぐシーンがいくつかあり、まるでゲッソーが登場しそうな雰囲気があった。複数のエリアとステージを移動するためのマップは『スーパーマリオブラザーズ 3』を思い出させてくれた。また本作はアクションパートだけでなくストーリーも重視されており、さまざまなNPCとの会話や出会いが物語に花を添える。酒場で飲んだくれる男、ショップのお客、ゲームの進行に直接関係がなくとも彼らとのコミュニケーションは没入感を生み出す。それはまるでアドベンチャーゲームのようでもあり、Dadakoが目指す「レトロでありながら奥深いゲーム」というものを垣間見ることができたように思う。
BitSummitで出展されていたデモは、巨大なタコのモンスターとの戦いまでという短いものだった。わずか数分で終わってしまったためDadakoが目指すものすべてを見れたというわけではないのだが、「今後は船のカスタマイズや管理もできようにしたいと思っている」というコメントを聞いたとき、それが実現すれば面白いことになりそうだと強く感じた。レトロな2Dアクション、キャラクターとの会話や物語を重視するアドベンチャー、そして船を管理するシミュレーション、それらすべてがうまく混ざり合えば、あれもやりたいこれもやりたいとわがままを言う“駄々っ子”を黙らせることができるだろう。「子供が笑顔で遊べて、そして大人も遊べる奥深いゲームにしたいね」と語った二人の目は少年の目だった。
『Pixel Pirate in Bits of Eight』は2016年のリリースに向けて開発が進められており、対応プラットフォームはPC/Mac/Android(Fire TVなど)、価格は15ドルが予定されている。