『The Flock』プレイヤーが死亡し続けると“販売が停止されゲームも遊べなくなる”、異色の非対称マルチプレイヤー対戦ゲーム


発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆくIndie Pick。第160回目は、『The Flock』をピックアップする。本作は『Evolve』の登場以降、一気に増加した感のある「非対称マルチプレイヤー対戦」を盛り込んだホラーテイストのアクションタイトルだ。

人類滅亡後に宝を奪い合う「フロック」たちの戦い

『The Flock』の舞台となる地球では、人類が住めなくなってから長い時が過ぎており、すでに西暦3000年を迎えている。地球上には「フロック(Flock)」と呼ばれている不気味な生物が生息しており、彼らは「ライトアーティファクト(Light Artifact)」を使用してお互いを殺しあっている。

『The Flock』では、最大5人のプレイヤーがマップ上で1つの「光るアーティファクト」を奪い合う戦いが描かれる。各プレイヤーは「フロック(Flock)」と呼ばれる機敏なハンターとしてゲームをスタートするが、アーティファクトを入手した1匹のフロックは「キャリアー」と呼ばれる人型のモンスターへと変身する。ここからアーティファクトの奪還を狙う4匹のフロックと、それから逃げる1匹のキャリアーの追走劇が始まるわけだ。

フロックはさまざまな地形を移動することが可能であり、移動速度も素早い。一方でキャリアーは移動速度が遅いが、手に持つアーティファクトから放たれる強力な光を照射し、フロックを倒すことができる。フロックはいかにキャリアーに奇襲するか、キャリアーはいかに周囲の気配を察知するか、緊張感のある戦いが楽しめるようだ。キャリアーの状態ではポイントを獲得することができ、最終的に規定のポイントを入手したプレイヤーが勝利となる。

フロック人口がゼロに到達すると「終焉」へ

また、つい先日発表された『The Flock』の非常にユニークな点が、プレイヤーが死亡し続けると「販売が停止される」という点だ。開発元のVogelsapによれば、『The Flock』は2015会計年度Q3にリリースされるが、プレイヤーが死亡するたびにフロックの人口は減少してゆき、最終的にゼロに到達すると二度とゲームが購入できなくなるのだという。さらにゲームは「劇的な最後」を迎え、サーバーは最終的にオフラインになり、誰も『The Flock』をプレイすることができなくなる。プレイヤーたちは人類が滅亡した地球上で、アーティファクトを巡り醜く戦い合うフロックたちの生存競争に実際に参加するわけだ。

VogelsapのJeroen Van Hasselt氏は発表のなかで、「マルチプレイヤーゲームはプレイヤー数を驚異的に高めることができるが、ある時点でゲーマーたちはプレイしないようになり、興味を失って遊ぶことをやめてしまう」と伝えている。「ほかのマルチプレイヤーゲームとは対照的に、我々は『The Flock』の体験を畏怖を感じるものにしたい。プレイヤーは熱心に次になにが起こるのかを期待するようになるし、忘れがたいクライマックスと共に終焉がやってくる」。

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確かにマルチプレイヤー要素を盛り込んだインディーゲームは、大手のタイトルなどと比較すればプレイヤー数を拡大することは難しく、早期に縮小してゆくことが多い。発売してからプレイヤー数が減少してゆくのをただ観察するぐらいならば、プレイできる期間を定めてゲームプレイ体験をダイナミックなものにしようという考えは、うなずけるところもある

『The Flock』は2015会計年度Q3にもSteamにて配信予定だ。「あとでセールで買っておこう」は今回は通じないだろう。気になったプレイヤーは早めに購入しておこう。


初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。