発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆくIndie Pick。第158回目は、『Pixel Ripped』シリーズをピックアップする。本作は「ゲームボーイ」や「スーパーファミコン」などが登場した1970年代から1990年代を舞台に、“子どものころのゲーム体験”にトリップすることをテーマとしたVRヘッドセット対応ゲームだ。昨年9月ごろから国内外では『Pixel Rift!』として取り上げられており、こちらの名前で聞いたことがある人もいるのではないだろうか。
先生に隠れながら遊ぶ『Pixel Ripped 1989』
『Pixel Ripped』はシリーズもののタイトルとなっている。プレイヤーはシリーズの主人公である少女「ニコラ」を通じて、どこかで見たようなレトロゲーム機を操作する。さまざまな3Dバーチャル空間のなかで、あえて平面の画面上で表示される「ファミコン」や「ゲームボーイ」のようなタイトルをプレイするというわけだ。『Pixel Ripped 1989』はシリーズの第1弾タイトルであり、ニコラが授業中に携帯ゲーム機「ギアガール」で2Dアクションゲームをプレイするという内容が描かれている。
この手の”3D空間のなかで2D作品をプレイするVRゲーム”は、Kickstarterなどで時々登場しては消えてゆくことがあり、さほど珍しいコンセプトではない。一方で『Pixel Ripped』は、単に3D空間内で2Dゲームをプレイするだけでなく、インタラクティブでエンターテイメントな要素をふんだんに盛り込んでいる点が特徴だ。
プレイヤーは授業中に「ギアガール」の2Dアクションゲームをプレイするわけだが、先生がこちらを向いているあいだにプレイしてはならず、見つかればその場でゲームオーバーとなってしまう。もちろんゲーム内で操作キャラクターが死亡してもゲームオーバーになるため、プレイヤーは頭を上げたり下げたりしたりしながら、ゲームをせわしなくプレイしなければならない。また授業中はゲームをプレイするだけでなく、消しゴムを教室にいるほかの生徒やゴミ箱のなかに飛ばしたりといったいたずらも仕掛けることができる。単に3D空間のなかで2Dゲームをプレイするのではなく、”授業中に隠れてゲームを遊んだりイタズラしたりする”という子どものころの体験を追従できる。
ゲーム最大の見せ場となるのが、ボスステージに到達するとニコラの机の上にボスと操作キャラクターが登場するシーンだ。2Dゲームの世界と3Dのバーチャル空間が融合し、プレイヤーが消しゴムで敵ボスを撃ち落とすといったアクションが追加されるようになる。子どものころ、机の上で消しゴムや鉛筆を使って遊んでいた人がいるなら、その感覚を見事に再現したシーンと言えるだろう。
母親や猫に邪魔されながら遊ぶ『Pixel Ripped 1979』
前述したように『Pixel Ripped』はシリーズ作品として展開される予定である。授業中に携帯ゲーム機で遊ぶ『Pixel Ripped 1989』の次には、近所の子どもと共にアタリ2600風のゲーム機「Fauxtari 2600」をプレイするという『Pixel Ripped 1979』が製作される予定。こちらでは、口うるさい母親や巨大な赤毛のオス猫があなたのゲームプレイを邪魔してくる。また続く『Pixel Ripped 1984』では、レジャー施設にあるゲームセンターで1セントのアーケードゲームをプレイすることができるという。ゲームをプレイするためにアイスクリームの販売員や運営者と争わなければならないようだ。
『Pixel Ripped 1989』はKickstarterにて4万ポンドの獲得を目指すクラウドファンディングを実施中だ。十分な金額が集まれば、次回作となる『Pixel Ripped 1978』の開発も迅速に進められる予定だという。本作のリリース時期は2016年を予定している。