『Samorost 3』チェコ産の不思議世界観が再び蘇る、“不思議な力を持ったフルート”を巡るポイント&クリックアドベンチャー

今週末の開催に合わせIndie Pickは「BitSummi 2015特集」とし、編集部がプレイした興味深いタイトルたちをピックアップしてゆこう。第5回目は『Samorost』を取りあげる。

発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆくIndie Pick。7月11日から7月12日にかけて、京都でインディーゲームの祭典「BitSummit 2015」が開催された。それに併せ当分のあいだIndie Pickは「BitSummi 2015特集」とし、編集部がプレイした興味深いタイトルたちをピックアップしてゆこう。第5回目は『Samorost 3』を取りあげる。

『Samorost』シリーズは、チェコの奇才デベロッパーAmanita Designが開発するポイント&クリックアドベンチャーゲームだ。白い小人と犬のコンビが、謎に満ちたさまざまな惑星を探索してゆくという内容で、奇妙な世界観や一度見れば忘れられない強烈なビジュアル、脳に深く打ちつけられるディープなサウンドが高い評価を浴びている。初代『Samorost』は2003年にブラウザゲームとして無料で公開され、『Samorost 2』は2005年にAmanita初となる商業ゲームとしてリリースされた。どちらかといえばコンソール向けにもリリースされている『Machinarium』の方が知名度は高いだろうが、この『Samorost』シリーズこそがAmanitaの礎を築いた作品だと言っても過言ではない。

『Samorost 3』は同シリーズの最新作であり、2011年に開発中であることが明らかにされたタイトルだ。それからはや4年、現在は2015年中のリリースが目指されている。今回はそんな完成間近の『Samorost 3』を実際に触れた。

“謎のフルート”を巡る旅

過去の2作品と同様に、『Samorost 3』のストーリーは宇宙からの飛来物と共に始まる。主人公である白い小人は、宇宙から降りてきた“フルート”を拾い、このフルートと共に冒険にでかけることになる。Amanita設立メンバーであるJakub Dvorsky氏によれば、このフルートには不思議な力が備わっており、主人公はその力を駆使しつつ物語を進めてゆくという。そうしてこのフルートに隠された重大な秘密を知り、大きな出来事に巻きこまれてゆくというのが、本作のあらすじとなるようだ。

このキーアイテムとなるフルートは、ゲームプレイ中にも各種パズルを解く際に必要になる。特定のポイントでフルートを吹くと、そこから精霊か幽霊のような存在が出現し、主人公を手助けしてくれるのだ。そのほか、フルートを使えばクリックした対象の音を聞いたり、単純にBGMとして盛り上げるために吹いたりすることもできる。

ゲームシステムは『Samorost 2』から進化しており、『Machinarium』意向のものとほぼ同等のものであると考えてもらえればよい。主人公は画面中を自由に歩き回ることが可能で、さまざまなオブジェクトに触れ、謎を解いてゆく。世界観をブチ壊すようなテキストは表示されず、すべてがグラフィックやアニメーション、サウンドだけで語られる。BitSummitで公開されたデモには存在しなかったが、絵で表示されるおなじみのヒント機能も存在するとのことだ。

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Dvorsky氏が見せてくれたヒントに使用予定のアートワーク

また本作においては、7つの惑星を舞台にストーリーが展開されることが明らかにされているが、基本的にこの星々のあいだをいつでも自由に移動できるデザインがゲーム中では採用されているようだ。デモ中には2つの惑星と1つの衛星が登場し、衛星に乗ることでいつでも惑星間を移動できることが確認できた。探索範囲が広大になったことで、ゲームの謎解きはより難しくなるのかもしれない。

Dvorsky氏によれば、っただけあると賞賛できるはずだ。『Samorost 3』のゲームメカニックに特に大きな変化はないものの、ゲーム全体のプレイアビリティを高めるため細かい点でさまざまな改善策が進められているという。シリーズ過去作との大きな違いは、HDビジュアルに対応していることだろう。従来の上下に黒帯が表示されるスタイルではなく、『Samorost 3』のビジュアルは画面一杯に描かれている。単純に解像度が上昇しただけでなく、グラフィックにも磨きがかかっており、アニメーションは躍動的で、きらびやかに光るエフェクトも素晴らしかった。過去作を何度もプレイしたプレイヤーならば、さすが5年以上もかかったと賞賛できるだろう。

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『Samorost 3』を紹介する上で、その体験を説明することは難しいし、どういったストーリーが展開されたかを語ればネタバレとなってしまう。1つだけ例を挙げるとする なら、筆者がもっとも気に入ったデモ中のパズルは“複数枚のカードを使ったもの”だ。カードにはマンモスや豚のような動物、槍や釣り竿などを持った狩人、 そしてたき火や湖といった絵柄が描かれている。これらのカードを横に並べたり戻したりしつつ、狩りを成功させて食料を作りだし、原住民の家族に与えてやるのがこのパズルの目的だ。カードとカードの壁を超えて動きまわるアニメーションは、見ているだけで楽しかった。

『Samorost 3』は相変わらずAmanita節とも呼べるような奇妙な世界観が展開されており、ヘッドホンから流れるサウンドにはうっとりした。シリーズ過去作やAmanitaの作品が好きなプレイヤーにとっては、間違いなくマストバイの作品となるだろう。『Samorost 3』は2015年にリリースが予定されている。

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Shuji Ishimoto
Shuji Ishimoto

初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。

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