発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆくIndie Pick。7月11日から7月12日にかけて、京都でインディーゲームの祭典「BitSummit 2015」が開催されている。それに併せIndie Pickは「BitSummi 2015特集」とし、編集部がプレイした興味深いタイトルたちをピックアップしてゆく。第2回目は『Downwell』を取りあげる。
『Downwell』は、2014年に彗星のごとく登場した日本人開発者もっぴん氏こと麓旺二郎(ふもと おうじろう)氏が開発を進めているタイトルだ。2014年に本作が登場するまで、麓氏はほぼ無名のデベロッパーだったと言っていいが、GDC 2015にて権威あるIGF 2015の学生部門に日本人初のノミネートを果たすやいなや、海外で良質なインディーゲームをパブリッシングし続けるDevolver Digitalのもと世界リリース展開が決定。一気に日本の若手インディーデベロッパーのスターダムを駆け上った。
AUTOMATONでは、かつて麓氏が国内のインディーデベロッパーnemk氏と共に開発した無料タイトル『Apocalypse Gardening』を紹介したことがあり、その際に『Downwell』にも軽く触れた。今回はBitSummitにて最新ビルドをプレイした上で、あらためて本作の魅力に迫っていこう。
参考記事: 水やりアクションシューティング 『Apocalypse Gardening』
落下系シューティングアクション
本作はシンプルなビジュアルの2Dシューティングアクションゲームだ。プレイヤーは人型のキャラクターを操作し、一直線に地底深くへと続いている「穴」を落下してゆく。穴のなかには危険なモンスターや悲惨なトラップが待ち受けており、うまく敵を倒したりトラップを避けたりしつつ、下へ下へと進んでいかなければならない。操作キャラクターは「ガンブーツ」と呼ばれる、弾丸を下方向に撃ちだすブーツをはいており、プレイヤーは基本的にここから放たれる弾で敵を攻撃することとなる。
またガンブーツには、弾を放つとその反動で操作キャラクターの落下スピードがやわらぐという仕様がある。『Downwell』は下へ下へと進んでゆくゲームであり、そのためゲーム中の移動は落下がほとんどを占める。しかし落下スピードは一気に加速するため、そのまま落ち続けるとプレイヤーは速度に対応ができなくなり、予想外の場所に出現した足場を踏み外してしまったり、画面下から突如現れた敵に当ってしまったりする。ガンブーツで弾を発射すれば、そういった不測の事態を把握する時間が追加されるというわけだ。
とはいえ、ガンブーツにはバッテリー(残弾数)があり、常に弾を打ち続けられるわけでもない。バッテリーは、操作キャラクターが一度着地すると補充(リロード)される仕組みである。バッテリーが切れたのなら、プレイヤーは操作キャラクターを足場に着地させるか、敵を踏みつけて倒すかしなければならない(ただしゲーム中では踏みつけても倒せずダメージを受ける赤色の敵が存在する)。
つまり『Downwell』は、ガンブーツの射撃によって敵を倒しつつ、その射撃の反動で得られる短い時間で状況を把握し、次の着地地点(あるいは行動)を決めるというアクションゲームである。「弾丸を撃つ」ことで「落下スピードをやわらげる」、「着地する」ことで「リロードする」。『Downwell』では一つ一つのメインアクションが複数の効果を持っており、さらにそれらのアクションが一連の動きとしてスムーズにまとめあげられている。まるでもともとあった一つの定番のシステムのように動作しており、プレイしていてとても巧妙で美しいと感じられた。
前述した『Apocalypse Gardening』でも見られたが、麓氏が制作に参加したゲームでは複数の効果が発生するゲームメカニックが登場し、それが一連の流れとして違和感なく組み込まれているように感じられる。単に複数の効果を重ねたり、いくつかのアクションを組み合わせたりすれば、ゴチャゴチャとするはずなのだが、シンプルに感じられるのは麓氏の根を詰めた調整とセンスのお陰というほかないだろう。
ローグライク要素、プレイヤーの腕
このほか特徴となるのが、『Downwell』には美しいゲームプレイメカニックだけでなく、ボリュームやリプレイ性も増すローグライク要素があるという点だ。ゲームマップは自動生成であり、区切られたステージをクリアするごとに永続性のアイテムを取得することができる。ここ最近のゲームで例えるなら、『The Binding of Isaac』がわかりやすいだろうか。ゲーム中にはショップも登場し、敵を倒したりして集めたジェムで、体力を回復するハートや、残弾数が増えるガンブーツ用バッテリーなどのアイテムを購入できる。ショップ店員に勝てる自信があるのなら、アイテムを盗もうと挑戦することも可能なようだ。
現時点での『Downwell』にてハイスコアを狙うなら、いいアイテムが登場するまで周回プレイするというよりは、プレイヤーの腕が要求されることになる。たとえば一度ジャンプしてから地面に着地するまでの間に複数の敵を倒すと、プレイヤーはアイテムを取得することができる。体力がフルの状況で体力回復アイテムを複数取得すれば、最大体力値が上昇する。深く下へ行くには、プレイヤーたちはこういったトリックをゲーム序盤で決めて、難易度が激化する前に操作キャラクターを強化していかなくてはならない。また、ジェムを一度に大量に取得するとブースト状態になるといった機能も存在する。
ただ誤解しないでほしいのは、そういったトリックがありながらも、先ほと述べたようにゲームメカニックやシステム自体は小難しくなく極力シンプルでスムーズだということだ。難しい操作が苦手で波動拳を出せないという方でも心配しなくていい。また麓氏に話をうかがったところ、難易度調整に関しては現在は検討段階とのことである。難しそうだからという理由で、本作のガンブーツの気持ちよさに触れないのは惜しい。
現在『Downwell』はPCおよびスマートフォン向けに開発が進められている。リリースは2015年中が予定されている。