『Objects in Space』80年代SFの“モデムパンク”がむせる、潜水艦的な息の詰まる戦闘を描いた宇宙トレーディングゲーム


発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆくIndie Pick。第145回目は、『Objects in Space』を紹介する。本作は『Wing Commander: Privateer』や『Freelancer』などに代表される「スペーストレーディング・コンバットゲーム」だ。プレイヤーは宇宙取引船の船長となり、船をカスタマイズしたり積み荷を運んだりして、自分の思い通りに宇宙を探索してゆく。

宇宙が舞台なのに宇宙が見えない

ゲームの舞台となるのは、地球から何光年も離れた位置に存在する“アポロ星団”だ。この宙域は腐敗した政府と企業によって支配されており、治安は最悪の状況である。密輸業者や宇宙海賊が暗躍しており、貿易や資源採掘に従事する人々はなんとか生き延びようと日々の仕事をこなしている。プレイヤーはこのアポロ星団に訪れた新たなスペースシップの船長となり、オープンワールドの宇宙空間を探索して、自身の判断でさまざまな仕事をこなしてゆく。

『Objects in Space』にて最大の特徴となるのが、宇宙を舞台にしたゲームであるのに、“基本的には宇宙が見えない”という点だ。プレイ中の視点は一人称視点に固定されており、コクピットには外の宇宙の様子が見える窓やビジュアライザーなどは存在しない。プレイヤーは搭載された様々なセンサーやレーダー、コンソールを通じて、外に広がる宇宙の状況を確認しなければならないのだ。まるで海底を進み視認できない相手と戦う潜水艦ゲームのようなゲームデザインといえるだろう。

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ブリッジ画面。外の宇宙の様子は基本的に見えず、各種センサーやレーダーと睨めっこすることになる

開発スタジオのFlat Earth Gamesは、本作が「Star Wars」や第二次世界大戦のドッグファイト的な曲芸戦闘ではなく、前述の潜水艦や「スタートレックII: カーンの逆襲」のようなヒリヒリとした宇宙船同士の戦いを描く作品だと説明する。基本的に戦闘では“ステルス”が重要な要素となる模様で、プレイヤーはアステロイド宙域に自身の船を隠したり、ハイポーラーオービットで自身の船から発信されているシグナルを停止したり、膨大なエネルギーを消費してしまうジャンプドライブで敵から逃れたりしなければならない。

また本作の特徴となるのが、1970年代から1980年代の“レトロフューチャー”を徹底して貫いている点である。ゲーム全体を包み込む80年代を意識した“モデムパンク”デザインはなんとも渋く、思わずむせてしまいそうだ。ゲーム内では、プレイヤーはテキストのみ表示されるコンソールを使用し、速報掲示板で情報を集めたり、テキストチャットでコミュニケーションを取ることになる。Flat Earth Gamesによれば、膨大なストーリーを文章で執筆するために、9人のライターを雇用しているという。

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NPCが登場してシネマティックな会話シーンに突入することなどない。CMSを使用して掲示板やチャットで話す

徹底的に贅肉を切り落としたデザインだけに人を選びそうだが、特にSF好きのコアなファン層からは注目を浴びそうだ。『Objects in Space』は2016年にリリース予定である。