龍の背の上を走って、頭に剣を突き刺せ『EarthNight』ファジーな世界観とチップチューンが脳に響く2Dアクション

発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆくIndie Pick。第140回目は、『EarthNight』を紹介する。『EarthNight』は、『Canabalt』などに代表される「ランニング系ゲーム」ジャンルのタイトルだ。モバイルでは有象無象に存在するランニング系ゲームだが、ハンドペイントの美麗なビジュアルや、脳みそを揺さぶるチップチューンが、『EarthNight』を“ただのランニングゲーム”に留めないでいる。

破滅の世界でドラゴンの背に乗って

ある日『EarthNight』の世界は、突如現れた何匹もの“ドラゴン”によって大災害に見舞われた。人類は地球から離れ、約3000機の避難船で宇宙へと退避した。プレイヤーは14歳の学生「Sydney(シドニー)」と、フリーランスのカメラマン「Stanley(スタンリー)」を操作して、ドラゴンたちが巣食う大気圏へとスカイダイビングする。災厄の原因となったドラゴンを倒し、最終的には故郷である地球へと帰らなければならない。

『EarthNight』のゲームメカニック自体はとても単純で、よくある「ランニング系ゲーム」とほほ同じだ。ゲームにて登場するアクションは2種類だけであり、上方向へ飛ぶ「ジャンプ」と、素早く落下する「アンカー」が存在する。この2種類のアクションを使って、障害物を避けつつ竜の背中を走り回り、最終的にはドラゴンの頭部へと到達して剣を突き刺すことが目的である。背中のコースは自動生成にて設計される。

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スタンリーは初心者向けのキャラクター、シドニーは二段ジャンプが可能だがよりテクニカルだ

『EarthNight』の魅力はなんといってもそのファジーなミュージックで、楽曲は海外のチップチューンミュージシャン「chipocrite」が提供している。背中の大量のオブジェクトが跳ね回る豊かなビジュアルも特徴だろう。ステージ中の雄大な背景や、レベル選択にあたるスカイダイビング中のアニメーションも素晴らしく、思わず見ている者をうっとりとさせる。

ゲーム中には約350種類の“ガラクタ”が存在しており、ステージ上では敵や障害物と共に大量に登場する。結局のところガラクタは、どれだけ集めても人類が通貨としてやり取りしている「水」に変換されるのだが、どれもこれも非常に凝って描かれており、それが波のように押し寄せる様は見ているだけで楽しい。なお獲得した水は、永続的なアップグレードに使用することができるという。

PC Gamerのインタビューに応えた開発者Rich Siegel氏は、「大多数のランナーゲームはスロットマシーンであるように感じる」と答えており、本作をただのランナー系ゲームに終わらせない信念を掲げている。『EarthNight』はPS4向けにリリースされ、その後PS VitaやPC/Mac、iOS/Androidでも配信される予定だ。

Shuji Ishimoto
Shuji Ishimoto

初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。

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