ラブリーでグロテスクな精神世界を進む『Spinal Blast』英日バイリンガル対応のシミュレーションRPG

発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆくIndie Pick。第121回目は『Spinal Blast(スパイナル ブラースト)』を紹介する。

発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆくIndie Pick。第121回目は『Spinal Blast(スパイナル ブラースト)』を紹介する。本作は今年前半にKickstarterファンディングを実施していたものの失敗したタイトルだ。今回は多数のプレイ映像や情報と共に、ふたたび6万ドルの獲得を目指すKickstarterファンディングを開始している。

ラブリーでグロテスクな精神世界SRPG

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可愛いキャラクターとグロテスクな世界観

『Spinal Blast』は、キュートなアニメーション調のグラフィックスタイルと、精神世界におけるおどろおどろしい表現が特徴の、レトロなシミュレーションRPGだ。物語のメインキャラクターは宇宙を探索していた「Ulyss」と「Tay」の2人。この2人の乗る宇宙船が近道するためにワームホールへ飛び込んだところ、「Psychoreality(サイコリアリティ)」と呼ばれる異次元に迷い込んでしまった場面からストーリーは始まる。サイコリアリティは、感情が「現実」として具現化してしまうという恐ろしい世界である。

プレイヤーははぐれた船員たちを集めつつ、変異体に立ち向かうため現地住民「Psychocitizens(サイコシティズン)」と共に戦力を築き上げ、サイコリアリティから脱出する方法を探さなければならない。

『Spinal Blast』は、『魔界戦記ディスガイア』や『ファイナルファンタジータクティクス』のようなオーソドックスなシミュレーションRPGだ。一方でヘルマン・ロールシャッハやカール・グスタフ・ユング、シーグムント・フロイトなどさまざまな精神学者、心理学者に影響を受けており、ラブリーな外見ながらも強烈な表現やゲームプレイを盛り込んでいる。

感情を押し込んで化け物へ変身

最大の特徴であるのが、ゲーム中に登場する「Anger(怒)」と「Stress(苦)」、「Sorrow(悲)」の3種類のステータス値だ。「怒」は直接攻撃を受けると、「苦」は近くの味方がダメージを受けると、「悲」はダメージを受けたまま回復しないと上昇してゆく。宝箱を開けてクモのような形をしたヘルメットを入手するなど、物語中の各アクションによってもそれぞれの値は上昇する。

そしてそれぞれのステータスが一定値まで貯まれば、キャラクター達は「Paranoia(妄想狂)」や「Desperation(自暴自棄)」などの精神状態に沿って、モンスターのような外見に変身することができるようになるのだ。この形態ではキャラクターの能力がパワーアップし、スペシャルアビリティを使用できるようになるのだが、その姿はあまりにおどろおどろしく、Tayの頭部が膨れ上がって炸裂し化け物へと変身するシーンはあまりにも衝撃的だ。

一方でゲームプレイの方は前述したようにオーソドックスなシミュレーションRPGである。戦闘はターンベースにて進行し、キャラクター達はさまざまな射程や攻撃力を有しており、戦闘は「ヒット率/クリティカル率/カウンター率」の数値をもとに処理される。プレイヤーはサイコリアリティの世界をワールドマップで移動し、仲間を集めたり育てたりし、戦場でレアアイテム集めにいそしみつつ、ストーリーを進めてゆく。スペシャルアビリティを敵キャラクターや現地住民のサイコシティズン達から学ぶといったラーニング要素もある。

7パターンの日英表示に対応

また本作のもう1つの特徴が、7種類の日英表示に対応している点だろう。本作は日本語と英語の言語ローカライズに対応しているが、日本語と英語を並べて表記したり、キャラクター名やステータス値だけを英語で表記したりといった細かな調整ができる。公式ページの文言や、Kickstarterページにて公開されている「擁立する人にアイコンです。どうぞ(Complimentary backer stickers please use cutely.)」などのメッセージを見るとやや不安ではあるが、この手のタイプのゲームでは珍しい取り組みだといえるだろう。

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『Spinal Blast』はPC/Mac/Linux向けに2016年以降にもリリース予定。アニメーション調のグラフィックや日本語に対応している点から、国内でも今後注目を浴びそうだ。

Shuji Ishimoto
Shuji Ishimoto

初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。

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