人身売買と戦う少女のオープンワールドRPG『Missing – The Complete Saga』開発中。インドにはびこる売春被害の闇を真っ向から描く
発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たこと無いような最前線の作品を紹介してゆく「Indie Pick」。第675回は『Missing – The Complete Saga』を紹介しよう。
『Missing – The Complete Saga』はインドを舞台としたオープンワールドRPG。プレイヤーは貧しいながらも勇敢な村娘となり、彼女を取り巻く過酷な環境との戦いに身を投じる。インドの穏やかな田舎風景を再現した世界は風光明美で、一見少女を襲う困難とは無縁なようにも見える。しかしその裏には深い社会の闇が潜んでいるという。少女をターゲットとした、売春目的の人身売買の存在だ。貧しい少女をターゲットとした人身売買業者を相手に、主人公は過酷な戦いに直面することとなる。
プレイヤーは少女としてさまざまな選択を下す場面が存在。本作における分岐はいずれも、人身売買被害者の現実を反映した厳しい分岐になっている。性的搾取から生き延びるための難しい決断を迫られることになり、立場の弱い少女として生きる苦悩を追体験することになりそうだ。またプレイヤーの選択により、少女の学ぶスキルやキャリアパス、恋に落ちる相手などが変化する。
主人公の少女は勇敢ながら、敵は組織的に村を襲撃する業者たちだ。少女が魔の手から逃れるか、大都市の風俗街へ連れ去られるかはプレイヤーの手にかかっている。もし売春宿送りとなってもゲームはそこで終わらない。少女が獲得したスキルを駆使することで売春宿を脱出し、村で待つ家族のもとへ帰る希望が残されているという。海外メディアPolygonによれば、売春被害のその後についても描かれるとのこと。被害者がトラウマからいかに立ち直るかを体験することにもなりそうだ。
ゲームは日々追加されるタスクをこなすことで進行し、イベントや事件が発生する。戦闘やパズルは存在せず、探索や選択肢による分岐で物語が進むようだ。タスクをこなすことで少女は成長を遂げ、スキルツリーを育てることでさまざまな能力を獲得できる。またエネルギー・食料・気分といったパラメーターがタスク進行に影響を及ぼす模様。
さらにゲームシステムは、少女が年齢を重ねることでも変化していくという。子ども時代はシンプルで簡素なつくりのインターフェースだが、成長することでUIも進化。スキルや時間・資源をより管理しやすい、詳細なシステムになるようだ。人身売買業者に捕まった際は、ステルスや戦闘スキルも開放される。これらはスキルツリーから独立して習得可能になるという。
本作のパブリッシングを手がけるMissing Link Projectsは、売春目的の人身売買の撲滅を目的とした社会団体Missing Link Trustのプロジェクトの一環だ。同団体は、社会的認知の向上が人身売買の防止につながるとの理念にもとづき、2016年からデベロッパーFlying Robot Studiosと組んでゲームを制作。2016年に配信された『Missing: Game for a Cause』はポイント&クリック形式のアドベンチャーで、同じく少女と人身売買業者の戦いを描いている。その年のNASSCOM Indie gameにてアワードを獲得し、70か国で50万件以上のオーガニックダウンロード(広告によらないダウンロード)数を誇るという。『Missing: Game for a Cause』の拡張版として、『Missing – The Complete Saga』はより詳細に少女の人生を掘り下げる作品となりそうだ。
『Missing – The Complete Saga』はPC(Steam)向けに配信予定だ。