懐かしくも新しい都市建設シミュ『New Cities』開発中。複雑化する交通網と国家・都市レベルの経済動向を注視し、高密度都市の構築を目指す
発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆく「Indie Pick」。第649回は『New Cities』を紹介する。
『New Cities』は、90年代後期の都市建設シミュレーションゲームを遊んでいるような感覚を呼び覚ましながらも、当時は活用できなかった技術を持ち込むことで高度化を目指したプロジェクト。90年代後期のクラシック作品に寄せたビジュアルスタイル、発達した経済システムや道路建設システムが特徴とされている。
開発者であるLone Pine氏が人生で初めて没頭したゲームは『SimCity 2000』。その後『SimCity 3000』『Pharaoh』といったクォータービューのシミュレーションゲームにのめり込んでいき、いつしか自分で交通シミュレーションを作り始めるようになった。そしてその基礎部分ができあがってからは、建造物、径路探索、地形生成、予算管理、公共サービスといった要素を付け足していき、高度なシティビルダーへと変化していった。特に「交通と経済」という2つのシステムに焦点を当てており、効率的な交通網の構築が、都市および経済発展のカギとなる。市長として高密度の巨大都市を構築するためにも、経済動向を追い、交通網を整理していかねばならない。
景気の波によって変容する、生き生きとした都市を生み出すことが目標とされており、経済システムとしては人口・収入・株価指数・失業率・高校卒業率など無数の指標が存在する。都市単位の指標はもちろんのこと、自らコントロールすることができない国家レベルの指標にも振り回されることになる。限られた予算を管理しつつ、不安定な経済動向や経済問題に応じた対処法が求められるわけだ。
『New Cities』では、都市の住民ひとりひとりの生活を追うことも可能。彼らの人生は自宅と勤務先の往復だけではない。買い物や友人との約束といった私生活も送っている。また企業や施設が利益を出す上で必要なものが揃っているのか、個別に確認しながら都市づくりを進めることができる。そうした住民・企業の動向をもとにした、教育・繁栄・価値・密度・公害・犯罪という6種類のヒートマップが存在する。ヒートマップを参考にしつつ、公園を設置して公害を緩和したり、警察署を設けて犯罪を減らしたりと、都市の安全と成長を維持するのだ。
教育は繁栄を生み、繁栄は価値を創造する。そして価値向上により都市の密度が濃くなっていく。住みやすい街になれば人口と税収が増えるが、犯罪や公害といった問題も増える。公共施設に高額投資して負の循環を止めるのか、問題を緩和しやすい郊外エリアを開拓してから中央に巨大都市を設けるのか。Lone Pine氏が「サンフランシスコ vs ロサンゼルス」と呼ぶ2つのアプローチから選択することになる。
90年代後期の都市建設シミュレーションゲームは、ひし形タイルを重ねることで、2Dスプライトで処理しながらも奥行きのある3次元空間であるかのように見せていたと、Lone Pine氏は説明。だが同ジャンルでは現在3Dが主流となり、当時のルックスは失われてしまった。『New Cities』は3Dゲームではあるが、カメラアングルや視点を工夫することで、90年代後期のクラシックなビジュアルに近づけているという。なおゲーム内のMod機能により、テクスチャーやシェーダー、建造物のデザインを変更することが可能。こうしたツールにより、自分だけの街を作れるようになる。
ゲームの中核部分は完成しており、現在は品質改善、不具合修正、バランス調整を施し、ユーザーテストを実施していく段階とのこと。そうした詰めの部分を成し遂げるため、11月22日よりIndiegogoにてクラウドファンディング・キャンペーンを実施中。目標金額は1万ドル(約110万円)。本稿執筆時点(12月2日)では、キャンペーン終了まで51日を残し、51人のバッカーから2136ドルを募っている。「Apartment Complex」(通常2738円。本稿執筆時には40%オフの1643円で提供中)以上のティアーを選択したバッカー先着250名には、2020年1月開始予定のクローズド・アルファテストへのアクセス権が付与される。
『New Cities』の対応プラットフォームはWindows/Linux。2020年春のSteam早期アクセス配信(ストアページ)、2021年の正式リリースが目標とされている。