わがまま女王が銀河の征服を目指すRPG『Virgo Vs The Zodiac』12月発売予定。『マリオ&ルイージRPG』などの影響を受ける

 

発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆく「Indie Pick」。第582回目は『Virgo Vs The Zodiac』を紹介する。

インディー開発スタジオMoonanaによる新作Sci-Fi/ファンタジーRPG『Virgo Vs The Zodiac』がPC(Steam)にて2018年12月4日に発売予定だ。12星座が支配する銀河系を舞台に、自分の正義を疑わないVirgoが、ほかのZodiacたちを征服するべく旅に出るというアンチ・ヒーロー冒険譚。JRPGから強い影響を受けたという開発スタジオの処女作は、可愛らしいピクセルアートで表現されたキャラクターと斬新なシステムが目を引く意欲作である。

12星座を司るZodiacたちが、互いに団結しあう黄金時代は終わりを告げた。今や宇宙は星座たちが自分の領地を好きなように支配する時代になってしまった。しかし、聖なる女王でありながら「異端たる恐怖の女王」としても名高いおとめ座のVirgoにとって、そんな宇宙は完全なるカオスと同然。まったくもって納得の行かないVirgoは、(彼女にとっての)平和で統率された黄金時代を復権させるために、宇宙のすべてを再統一する正義の十字軍を宣言する。(彼女にとっての)異端Zodiacたちを打ち滅ぼすべく、Virgoはへんてこで容赦のない冒険へと旅立っていく。『Virgo Vs The Zodiac』において、プレイヤーは主人公のVirgoとなって、個性的でユーモアにあふれたZodiacの領地を探検することになる。

ゲーム中のキャラクターやマップはすべてパステルカラーを基調としたピクセルアートで描かれており、『MOTHER』シリーズを彷彿とさせるようなグラフィックが印象的だ。12星座をモチーフにしたZodiacたちを始め、敵となるキャラクターもヤギやアルパカなどどこかユーモラス。キャラクターの立ち絵はピクセルアートではなく、日本人にも馴染みやすいキュートなタッチのハイレゾイラストとなっている。バトルシーンでは、可愛らしいビジュアルのキャラがぬるぬると、そしてダイナミックに躍動する様子が確認できる。

キュートなグラフィックと裏腹に、本作はクセのある設定、システムが多分に取り入れられた意欲作でもある。実質的な主人公のVirgoは見た目こそ儚げなお姫さまのようであるが、その正体は気に入らないZodiacたちの征服を目論む冷酷な女王様というアクの強いキャラクターだ。開発スタジオのMoonanaは彼女の役どころを一言で「妄信的な悪役」と表現しており、意識してアンチ・ヒーロー的な主人公像を作っていることが伺える。黄金時代を復権させるという彼女の野望を実現させるのか、それとも別の道を探すのかはプレイヤーの選択次第だ。

本作のシステムでもっとも特徴的なのが「ゾディアック特性」システム。これは性格、ステータス、戦闘属性、ルートなど、作中の銀河におけるさまざまな要素すべてが「FIXED」、「MUTABLE」、「CARDINAL」という名の3特性に関連してくるというものだ。特性はそれぞれ赤、緑、紫のカラーコードに対応しており、ゲーム内のあらゆるものがこの3つの色に分類されている。決意にあふれた選択肢は「FIXED」特性と紐付けられて赤く表示され、このような選択肢を選び続けるとVirgoのゾディアック特性が「FIXED」に変化する、という具合だ。敵、味方問わずキャラクターの外見はすべてゾディアック特性を反映させた色を持っており、また戦闘における属性もそれに準じている。緑色の敵はMUTABLE属性の攻撃を放ってくるし、紫色の盾はCARDINAL属性の攻撃を効率よく受け止めることが可能だ。主人公はそのゾディアック特性に応じて多彩な戦闘クラスを覚えることができ、またストーリーのルートやエンディングも異なったものになる。主人公の選択に応じて、ストーリーと戦闘スタイルのどちらも有機的に変化していく点が興味深い。

本作の戦闘は一般的なターン制コマンドバトルをベースに、攻撃、防御に高いアクション性を持たせた独特なシステムになっている。『マリオ&ルイージRPG』の戦闘システムを更に拡張したものをイメージしてほしい。敵の攻撃が常に熾烈な本作では、タイミングよく攻撃をガードしカウンター攻撃を活用していかなければ、生き残ることは難しいだろう。装備した盾に対応してさまざまなカウンター攻撃を使用することができ、また装備にはそれぞれ属性と固有のスキルが設定されているため、装備選択が非常に重要な要素となっている。主人公のゾディアック特性も戦闘スタイルに大きく影響するため、ビルドに合わせた特性になれるように会話の選択肢を選ぶという道も用意されている。ストーリーが進むに連れて仲間と共闘することができるようになるが、最前衛のキャラクターのみが敵にターゲットされるというパーティー戦闘システムになっており、独特の駆け引きを持つ戦略的なバトルが楽しめることだろう。

さらに、本作には多彩なカスタマイズ要素が用意されており、リプレイ性の高いゲームプレイが期待できそうだ。ゾディアック特性を始めとした幅広い育成パラメータが存在し、また装備のクラフトやアップグレードもあるため、自分の好きなようにキャラクターを育てることができる。会話にはいくつもの選択肢があり、戦闘においても敵を倒すか、見逃すか、仲間にするかはプレイヤーの自由だ。さらに、前述したとおり本作はマルチエンディング制を採用しており、仲間になるキャラクターやストーリー展開はルートによって大きく変化するとのこと。

『Virgo Vs The Zodiac』は『MOTHER2』、『マリオ&ルイージRPG』、『真・女神転生』などのJRPGからインスパイアを受けたことを公言するインディー開発スタジオMoonanaが初めて制作するゲームである。インディーゲームを支援するfigによるクラウドファンディングキャンペーンを目標額の約2倍である36,366ドルの支援を受けて通過した注目作であり、2017年から開発が続けられてきた。Steamにて2018年12月4日に配信される予定で、公開日は未定だがXbox One版の開発も進められているという。また、itch.ioでは無料のアルファデモ版が配布されている。日本語化の予定はまだないようだが、JPRGファンのスタジオによる注目の新作ということで日本語ローカライズにも期待したいところである。