終末世界で正気度を失っていく、狂気の手描きアクションRPG『Almost Alive』。『Fallout』を愛する芸術家が8年がかりで開発中

ポストアポカリプス世界が舞台の手描きアクションRPG『Almost Alive』が7月18日よりSteam早期アクセスタイトルとして配信される。個人開発者Emir Cerimovic氏が8年がかりで制作中のゲームで、初期『Fallout』や『Jagged Alliance 2』から影響を受けているという。

発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆく「Indie Pick」。第559回目は『Almost Alive』を紹介する。

Almost Alive』は2.5D手描きアニメーションで描かれた、斜め見下ろし視点のポストアポカリプス・アクションRPG。本作の世界では、独裁政権による抑圧に耐えかねた各国の民衆が反乱を起こしたことから、破滅へのカウントダウンが始まる。影の権力者たちは反乱を鎮圧すべく生物兵器としてウィルスをばらまくが、あろうことか病原体が突然変異。人々はみるみるうちに怪物へと姿を変えていった。政府は被害の拡大を食い止めるべく、核爆弾による浄化作戦を決行。核投下の影響により文明は荒廃し、残された人々はサバイバル生活を余儀なくされる。

プレイヤーが操作するのは、文明が滅び困窮した乱世を生き抜く生存者のひとり。ミュータントだらけの世紀末な廃墟や荒野を旅し、対立組織の紛争に巻き込まれながら己の身体と精神を鍛え上げるのだ。そして寄生虫に乗っ取られ凶暴化した人間や、脳や肉体が異常発達した動物との戦闘に没頭するうちに、主人公は少しずつ正気を失っていく。そう、本作には正気度の概念があり、終末世界の狂気に飲み込まれると自身の行動を制御できなくなる。勝手に味方を狙撃したり、喧嘩を始めたり、場合によってはプレイヤーの意思とは関係なく自害することすらあるという。

Almost Alive』はEmir Games名義で活動するフランスの個人開発者Emir Cerimovic氏の作品である。芸術家としても活動しているクリエイターだ。『Almost Alive公式サイトの自己紹介文に記載されている「私はアーティストであり、狂人である」という言葉どおり、戦争や社会の闇を題材にしたダークな作風が特徴である。戦争を一般市民の目線で描くサバイバルゲーム『This War of Mine』のコンサルタントを務めていた時期もあり、紛争が人間の精神に及ぼす影響というのは、Cerimovic氏が一貫して捉えようとしてきたテーマなのかもしれない。『Almost Alive』に正気度の概念が持ち込まれているのも納得の経歴である。

影響を受けた作品としては『Fallout』『Fallout 2』『Jagged Alliance 2』が挙げられている。Cerimovic氏の長年の夢は、『Jagged Alliance 2』の戦略性と『Fallout』シリーズのポストアポカリプス世界を組み合わせ、さらにそこにリアルタイムバトルと、キャラクターの精神状態を中核要素として取り入れたゲームをプレイすることであったという。そうしたゲームが無いのであれば自分でつくってしまえということで、Unityエンジンの使い方やコーディングの仕方を学び、『Almost Alive』の開発をスタート。既に制作期間は8年に及んでいるという。

独特のアニメーションはすべて手描きで紙に描いたものをPCに取り込んで制作しているという

ゲームプレイとしては、荒々しくもタクティカルな戦闘が見どころとなっている。銃撃、投擲武器、トラップ、ときには遮蔽物を使ったカバーやステルスをうまく使い、敵対グループやミュータントたちを血祭りにあげる。スキルツリーは6つの分類に分かれており、機動力の高いCommando、銃器の扱いに長けたSoldier、近接格闘派のFighterなど、どれかひとつに特化する必要はなく、合計115種類のスキルの中から自由に組み合わせることができる。192種の武器、106種の防具、18種の投擲アイテム、18種の薬物からプレイスタイルにあった装備品を見つけ出し、ロールプレイを楽しもう。

主人公の射撃精度・エイム速度・リコイルなどは装備品の性能だけでなく、主人公のモラルや正気度にも左右される

戦闘では正面突破で視界に入る生物すべてを駆逐するのか、隠密行動で前線をすり抜けていくのか。NPCとの交流では、複数ある派閥・組織のどれかに肩入れするのか、孤高のサイコパスとして一人旅を続けるのか。また困った人々を救うのか、裏切るのか、身ぐるみはがしてとんずらするのか。アプローチの手段は無数にあり、高いリプレイ性を誇っていることが窺える。先述したようにプレイヤーの選択は物語だけでなく主人公の精神状態にも影響を及ぼすとのことだ。

野蛮な発言が多い

Almost Alive』の対応プラットフォームはPC(Steamで、販売価格は11.99ドル。718日にSteamでの早期アクセス販売が開始される予定である。早期アクセス期間は1年半から2年半の間を想定しており、基本的なゲームメカニック、会話システム、スキルツリー、環境破壊要素、複数のルート分岐などが実装された状態で発売される。配信時にプレイできるレベルは3つで、5時間~10時間相当のボリュームになるという。その後どこまでコンテンツが追加されるかは売上次第。うまく資金が貯まれば、女性キャラクター、スーパーアーマー、世紀末なバギーカー、AI操作の仲間に命令を出すリアルタイム・ストラテジー要素、マルチプレイ、コンソール移植などが検討されるとのことだ。

Ryuki Ishii
Ryuki Ishii

元・日本版AUTOMATON編集者、英語版AUTOMATON(AUTOMATON WEST)責任者(~2023年5月まで)

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