「ゆめにっきスタイル」の2Dアドベンチャー『Ili』開発中、孤独な少女は「あなた」に語りかける

『Ili』は画面越しのあなたに語りかけてくるIliと対話していく2Dアドベンチャーゲームだ。開発者は本作を「ゆめにっきスタイル(Yume Nkki style game)」 と表現しており、ストーリーテリングの手法は個性的かつ実験的な作品になるという。

発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆく「Indie Pick」。第459回目は『Ili』を紹介する。

ゲームをプレイする時、プレイヤーは主人公になりきることが多いだろう。主人公に感情移入し、ロールプレイングしながら物語を進めていく。しかし本作では、パソコンの前でプレイする「あなた」は、メインキャラクターの少女Iliと共に物語に影響を与える登場人物の一人となる。『Ili』は画面越しのあなたに語りかけてくるIliと対話していく2Dアドベンチャーゲームだ。開発者は本作を「ゆめにっきスタイル(Yume Nkki style game)」 と表現しており、ストーリーテリングの手法は個性的かつ実験的な作品になるという。

物語は不死身の少女Iliが造り上げた街から始まる。かつて人々で賑わっていた街であったが、謎の失踪事件により、住民全員が消えてしまった。Iliは住民を守れなかったことに後悔し、過去にとらわれてしまっている。後悔を続けるIliの記憶を通して、過去を改変することがプレイヤーの目的となる。Iliの悩みを解決し、時にはIliが恐れていることを実行しなくてはならない。本作にはマルチエンディングが採用されており、プレイヤーの選択が物語に影響していくので、その時々の決断も慎重にならざるを得ないのではないだろうか。

本作の何よりの特徴は、人々が消えてしまったという退廃的な世界観 とマッチしたビジュアルだ。水彩絵の具と鉛筆で描かれたキャラクターや背景はそれだけでも一つの作品として完成しているほか、アナログ的な手法で『Ili』の奇妙な世界を描写することで、不安になりがちな物語に温かみを与えることに成功している。主人公Iliのビジュアルもどこか日本アニメの影響を感じさせ、親しみ抱く人もいるだろう。本作のアーティストSeoroh氏のコラージュや鉛筆画などの手法を凝らした前衛的な作品は、氏のTumblrで見ることできる。

 

本作の開発者Misha C氏は建築学の修士号を修了し、インディーズゲームの開発者になることを目指して、現在フルタイムで開発にあたっているようだ。一方で家庭の財政状況が困窮しており、Kickstarterを通じて6000ドルを目標に資金を集めている。Kickstarterで資金が十分に集まらなかった場合には一度開発を中断して建築関係の仕事を探すようだ。しかし、ゲームの開発を完全に中止することはなく、たとえ遅くなったとしてもリリースはされる予定とのこと。

リリース時期は未定だが、本作のデモはitch.ioで遊ぶことができる。体験できるのはゲームの導入部分のみであるが、不思議な『Ili』の世界を少しのぞいてみてはいかがだろうか。

Shun Kurosawa
Shun Kurosawa

得意なジャンルは黙々と練習するゲームですが、基本的になんでもやります。モバイルもアーケードもやりますが、協力プレイは役立たっているのか心配しつつプレイします。

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