発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆく「Indie Pick」。第443回目は『Distrust』を紹介する。
本作の主人公は、ヘリコプターの墜落事故により北極の観測基地に取り残されたレスキュー部隊。寒さから逃れるため基地内に避難するが人影は見当たらない。ふと窓の外に目を向けると、球状の物体が不気味な光を放ちながら、あたりを浮遊している。その輝きは、ヘリの墜落を招いた謎の発光体と同じ。やつらにとって人間は格好の獲物。レスキュー隊の命を吸い取る機会を虎視眈々と狙っているわけだ。やられないためにも、眠るわけにはいかない。早くここから脱出しなくては。
プレイヤーは2人または3人チームのレスキュー隊員を、操作対象を切り替えながら導いていく。カメラは斜め見下ろし視点。ポイント&クリックで移動と探索を進め、食料・ツール・武器を集めながら北極基地からの脱出を試みる。各キャラクターには体温、空腹度、スタミナのステータスがあり、いずれかのメーターがゼロになると体力が減り始める。氷点下の世界で体温をキープするには、基地内のボイラーに燃料を投下し、暖を取る必要がある。スタミナは何かしらの行動を取ることで減っていき、睡眠を取ることで回復する。
本作の味噌は、睡眠を取れば取るほど、敵対生命体がマップ上に湧き始めるという点にある。彼らに接近すると体温を奪われたり、傷を負ったりとタダでは済まない。かといって疲労と睡魔に耐えながら活動し続けると、徐々に正気を失っていき、いずれ現実と幻覚との区別がつかなくなる。軽いめまいから始まり、奇妙な歌声や笑い声に悩まされるようになる。自分自身の知覚を信じられなくなるのだ。
舞台となる北極基地は自動生成マップ。食堂、武器庫、研究施設といった用途別に建物が分かれており、その内部構造、アイテムの配置、建物の位置関係はランダムである。マップは複数の建物から成り立つエリアに分割されており、次のエリアへと続く扉は封鎖されている。サバイバル生活を送りながらも、扉を開くために必要な情報・材料を集めていくことが目的となる。
食料やツールが希少であるのは勿論のこと、ロッカーやデスクの中身を漁るだけでも怪我を負う危険性があったり、ステータスに目を配っていないと施設の扉をロックピックで開けているうちに凍えてしまったりと、サバイバルゲームとしては容赦のない難易度となっている。ステータスをきちんと管理し、探索手順を考えながら進めないと手詰まりになる。電力も食料もろくにない過酷な環境と、人間の理解を超えた存在との戦い。サバイバルとホラーという2つの要素がしっかりと絡み合っており、緊張感を持ってプレイできる作品なのだ。
プレイアブル・キャラクターは15種類。ツールの使用に長けていたり、調理がうまかったりと、それぞれ固有のスキルが備わっている。低温への耐性、歩行速度、ダッシュ速度もキャラクターによって異なる。チーム構成を変えて挑むことでリプレイ性が生まれそうだ。なおゲームはチームメンバーが全滅した時点でゲームオーバーとなる。
本作はジョン・カーペンター監督の映画「遊星からの物体X」から影響を受けていることを前面に出しており、Steamストアページの商品説明文でも真っ先に「遊星からの物体X」の名を出している。南極と北極という違いはあるが、文明から遠く離れた地で未知の生命体と遭遇するという大まかな設定と、静かで冷たい空気感という点では確かに影響を受けているように感じる。映画で見られた「隣の仲間がエイリアンかもしれない」と疑心暗鬼になっていく人間同士のサスペンスは、本作においては疲労により正気が奪われていく様子や、間接的なダメージにより生存者を追い詰めてくるエイリアンとの攻防といった、ゲームプレイからにじみ出る緊張感に置き換わっている。映画名作の名を出さずとも、サバイバルホラーとして十分に興味を惹くコンセプトだろう。
自分自身を信用できなくなる極寒地サバイバルホラー『Distrust』。対象プラットフォームはPC(Windows/Mac)で、リリースは2017年8月23日を予定している。なおSteamストアページでは無料デモ版が配信中だ。