ラヴクラフトの長編「狂気の山脈にて」後の南極を舞台とするコズミックホラー『Conarium』6月6日リリースへ

『Conarium』は1人称視点のホラーアドベンチャーゲームである。『Conarium』の開発を担当しているのは、過去作『Darkness Within』シリーズにて小規模ながら「ラヴクラフティアン・ホラー」としてのストーリーテリングが評価されたZoetrope Interactive。

発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆく「Indie Pick」。第436回目は『Conarium』を紹介する。

本作は2016年10月にゲームパブリッシャーIceberg Interactiveより発表された、1人称視点のホラーアドベンチャーゲームである。開発を担当しているのは、過去作『Darkness Within』シリーズにて小規模ながら「ラヴクラフティアン・ホラー」としてのストーリーテリングが評価されたZoetrope Interactive。PC(Steam)向けのリリースは2017年6月6日(日本語非対応)。その後コンソール向けのリリースも予定している。

H・P・ラヴクラフト、もしくは後続作家たちにより体系化された「クトゥルフ神話」から影響を受けたタイトルというと、いまやゲームに限らずエンターテインメント作品においては溢れかえっており、例示を出すとなると枚挙にいとまがない。それだけラヴクラフト風のコズミック・ホラーや、「クトゥルフ神話」の応用というのは愛されてきた分野であり、もはや「ラヴクラフト・インスパイアド」というだけではアピールポイントになりづらい。そうした中で本作『Conarium』は、単にラブクラフトからインスパイアされただけでなく、ラヴクラフトの代表的な長編小説「狂気の山脈にて(At the Mountains of Madness)」後の物語を描くという、ラヴクラフト・ファンの目が厳しくなることは間違いない、果敢な挑戦に出た。

物語の主人公は南極探検隊の一員である「Frank Gilman」。探検隊のリーダーである人類学者「Faust」博士は、小説で登場した南極探検隊と同じミスカトニック大学出身である。一同は南極に向かい、「Conarium」と呼ばれるデバイスを使うことで、人間が持つ知覚の限界を超越すべく実験を試みていた。ちなみにConariumは直訳すると松果体を指す。かつてはデカルトが「Principle seat of the soul(魂のありか)」と呼んだように、現代科学が発展するまでは神秘的な扱いをされることの多かった脳内器官である。

南極探検中に「Conarium」を使用したFrankは絶命するが、どういうわけか息を吹き返し、南極点近くに位置する探検基地「Upuaut」にて目覚める。Frankは記憶を失っており、彼の身に何が起きたのかはわからない。変わったところといえば、幻覚のような奇妙なビジョンに悩まされるようになったくらいか。「Upuaut」内部には人気がなく、何かしらの惨事が起きたことを匂わせている。基地は地下に広がる古代遺跡とつながっており、Frankは他メンバーの行方を追うべく遺跡内部へと進み、ときには不思議な夢や幻覚の世界を歩みながら、遺跡に潜む謎を紐解いていく。

プレイヤーはUnreal Engine 4を用いて構築された、不吉ながらも美しい遺跡内部を探索しつつ、数々のパズルを解いていく。未知の生命体との接触もあるが、戦闘やステルス行動を頻繁に求めるアクション重視の作品ではなく、たとえば操作キャラクターの正気度の変化というのも、あくまでナラティブの一環として描かれる。日本語非対応ということで、ドキュメントの読解や主人公によるモノローグの理解など、英語力が問われることが予測されるが、ラヴクラウト好きなゲーマーにとっては注目しておきたい作品となるだろう。作中には「多数のイースターエッグ」を用意しているということで、ラヴクラフト作品へのレファレンスにも期待できそうだ。

Ryuki Ishii
Ryuki Ishii

元・日本版AUTOMATON編集者、英語版AUTOMATON(AUTOMATON WEST)責任者(~2023年5月まで)

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